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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2025年08月05日

小さな命をあきらめない

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「あっ、知らない人が来た!」
遊ぶ手を止めて、幼い目がこっちを見つめます。

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でもすぐに、みんな遊びに夢中。だって、遊び盛りだもん。
ここは、預かりボランティアの玲子さんちの2階にある明るい子猫部屋。とあるニュータウンの公園に段ボールで捨てられていた子猫10匹組のうちの2匹もいます。

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まだ目も開いていない子たち(おそらく母猫は2匹)を、ごっそりと棄てた人がいるのです! ボランティアさんは、どこもいっぱいいっぱいで、いったん玲子さんの家にやってきましたが、乳飲み子が10匹となると、玲子さんは一晩でくたくた。見かねて、保護団体や友人や獣医さんが手を差し伸べてくれて、玲子さんのところに2匹が残ったというわけです。
2匹が元気に育っても、玲子さんは、連日てんやわんや。
なぜって、他にもまだまだ授乳中の預かりっ子がいるから。玲子さんのもとには、ひっきりなしに、見放したら死しか待っていない仔猫たちがやってくるのです。

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遊びに興じる子猫たち。おや、向こうに子猫ではない黒猫さんも。
5月13日の当ブログ「虐待から生還したいっちゃん」でご紹介した、いっちゃんこと一実ちゃんではないですか。
いっちゃんは、面倒を見ていた仲良しのミアちゃんが譲渡された後、すっかり元気をなくしていましたが、こうしてまた新入り子猫たちの遊び相手を務めるようになり、元気を取り戻しました。一斉にワーッと寄ってこられるとタジタジしながらも、うれしそう。

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子猫たちに人気のこのおもちゃが、いっちゃんもお気に入り。夢中で動き回るので、とてもいいリハビリになっているそうです。

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茶白の希くんも、いっちゃんといっしょにおもちゃに夢中です。
いっちゃんと遊んでもらうことで、子猫たちは先住猫さんのいるおうちにもらわれていっても、なじみやすくなるというわけです。いっちゃん、いい仕事してますね!
2階のもう1つの子猫部屋にも、いっちゃんは出張します。

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ここも、木漏れ日が穏やかに差し込む明るい部屋。

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このキジトラ3きょうだいは、保健所に持ち込まれた子たちで、主に埼玉県の収容猫の引き取りを続けている一般社団法人「彩の猫(さいのねこ)」によって引き出され、譲渡会に出るまでの預かりを玲子さんが引き受けました。

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3きょうだいと同室で、仲よく育っているキジ白の子は、産まれてすぐに畑で鳴いているところを保護された子です。よくぞここまで育ってくれました。
さて、最初のお部屋に戻りましょう。2枚目と6枚目の写真に登場した茶白の希くんのお話を。
希くんのお母さんは、交通事故で瀕死の状態を保健所に収容されたノラでした。鼻もあごも骨折してまったく動けない母猫は、身重でした。殺処分の前日に彩の猫が引き出し、玲子さん預かりに。あごの骨折手術を無事済ませ、自力で食べられるようになった母猫。「無事出産したら、ゆっくりと子育てさせてやりたい」と玲子さんは願いました。
でも、お腹の中では2匹がもう亡くなっていて、母さんは命がけで1匹を産み落とします。それが、希くん。
母体のために、緊急の開腹手術をしなければならなかったので、希くんはたった一日しか母乳を飲んでいません。手術後の容体は悪く、母さん猫は力つきて天国へ。
玲子さんは固く固く誓います。「絶対にこの子は、幸せにしなければ」
お母さんや兄弟の分も生きて幸せに。その切なる願いが、「希」の名に込められているのです。

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希くんは、ちょっとだけ人見知りですが、すくすく育って、いっちゃんおばちゃんも大好き! そして、玲子さんちの1階には、もっと手がかかる乳飲み子たちが。

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この子は、6月15日生まれのべべちゃん。生まれてすぐ母猫に育児放棄されて、お兄ちゃんと共に彩の猫からここにやってきました。
お兄ちゃんは順調に大きくなったのですが、100グラムという極小のべべちゃんは、なんと17日間100グラムのままでした。玲子さんは寝る間もなかったことでしょう。心労はいかばかりだったでしょう。
今は、ようやく哺乳瓶から飲めるようになり、体重も少しずつ増えてきました。
「この子が生きてくれたのは、ほんとうに奇跡としか思えません。あきらめなくてよかった」と、玲子さんは言います。
この取材の後にも、生まれてすぐにビニール袋に入れられて遺棄されていた2匹をボランティア仲間が見つけ、ここに運びました。生後2週間を過ぎた今、この子たちも元気に育っています。

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子猫たちの「生きたい」という力と、救う人たちの「どんな小さな命も消えそうな命も、あきらめない」という決意が、猫たちの奇跡を生むのだと、あらためて思います。子猫の遺棄が犯罪だということや、不妊去勢手術が大切ということは言うまでもありません。
希ちゃんたち玲子さん預かりの子猫たち6匹が、今度の土曜日9日の譲渡会に参加します。

場所は、4月29日の当ブログ「青い瞳のリリア」でご紹介した、松戸市五香にある生活介護事業所「ありすの家」です。みんな、いいおうちが見つかりますように!!

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「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

おかかちゃん、つなちゃんだけかと思って見ていたら、出てくるは出てくるは乳飲み子まで・・・。いっちゃんの元気になった姿を見るとホッとするが、玲子さんはそれこそ猫の手も借りたいほど日々いそがしいことだろう。小さな命を救い守っている保護団体の関係者や、預かりボランティアの方々の献身的なご努力には本当に頭が下がる。

by Y,M 2025-08-05 15:51

子猫は可愛い!とばかり言っていられない現実ですね。
先日、うちの仔が亡くなりました。他にまだ5匹いるので、泣いてばかりいられないのですが、何かにつけ、その仔の名前を呼んでしまいます。大事な命は、人も、動物も同じ。
沢山の子猫のお世話に、その身体と心を砕いておられ、頭が下がります。
優しいご家族とご縁を結び、一匹でも多くの子猫達が幸せになる事をお祈りしています。

by ちぃ 2025-08-05 16:52

乳飲み子10匹遺棄... 許せない! でもこれが現実なんでしょうね。
優しいいっちゃんが見守る仔猫たち、幸せな光景にしか見えませんもの。
優しい里親さんに出会えて、ずっとのおうちが見つかることを期待しています。

by ヤンヤン 2025-08-06 06:59

>Y・Mさん

来る日も来る日もですから、よほどの覚悟と、広い深い愛情がないとできないことと思います。心から感謝。

by 道ばた猫 2025-08-13 10:10

>ちぃさん
どの命も、ひとつだけ。愛しくかけがえのない子。冥福をお祈りいたします。ちぃさんちの子になって幸せだったね。

by 道ばた猫 2025-08-13 10:13

>ヤンヤンさん

今年は夏も子猫ラッシュで、どこの保護グループも大変。なにより手術の普及が急務ですね。そして生まれたからにはしあわせにならなくては!

by 道ばた猫 2025-08-13 10:16