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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2022年11月22日

たっくんの一大事

お久しぶり。ボク、たっくん。

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ねえ、聞いて聞いて。
あ、ボクのこと初めての人は、この記事読んでね。
ぶりっこして、首をかしげてるんじゃないことがわかるから。
左目が見えなくて、右目の視力も他の猫ほどないから、物をよく見ようとすると首をかしげるくせがあるんだ。(2022年6月28日「たっくんは天使」

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お母さんとボクは、その後、仲良く元気に暮らしてたんだ。
6月の記事の時よりも、右目はきれいになって、よく見えるようになったんだよ!
小さなボールを追いかけるのがマイブームで、行方不明のボールがいくつかあるの。そのうち、ベッドの下とかから出てくると思うけど。

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でね、同じマンションのお母さんの友だちとか、外出は車いすを使うお母さんのために通ってきてくれる先生や介護士さんやホームヘルパーの人たちに、ボク、大人気で暮らしてるの。たっくんは可愛い、可愛い、って。天使みたいだって。

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そんな平和なボクの毎日に、大事件が起こったのは、3週間前の10月30日の日曜日のこと。
ボクんちに、知らない猫がいきなりやってきたの。

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綺麗な緑の目をして、丸々・堂々とした三毛のおばさん。
お母さんは「さくらちゃん」って親しそうに呼んでた。
キャリーバッグから出てきたさくらさんはボクと鼻を突き合わせた。ボクは、びっくりして、思わず「シャ~~」って叫んじゃったけど、さくらさんはまったく気にしてなかった。
ボクは、寝室に一目散に逃げて、お母さんの毛布に潜り込んで、丸一日そこから出ていけなかった。
困ったお母さんが、ご飯皿とお水とトイレを近くにおいてくれたから、やっと食べたりトイレに行けたりできたんだ。

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さくらさんは、初めてのおうちなのに、最初っからよく食べ、トイレも3つあるうちのボクのを使い、リビングを探検し、まるでずっと前からこのうちにいるみたいにくつろいだんだ。

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それから、ボクのお気に入りの、日の当たる場所の籠ベッドをすっかり気に入って横取りしちゃったの。

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あの、それ、ボクのお昼寝ベッドなんだけど......と言おうとしたけど、じろっとにらまれちゃったから、やめたんだ。

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お母さんが話してくれたよ。
ボクの知らないさくらさんとのこれまでを。
さくらさんは、10年前、お母さんが友だちと二人でご飯運びや避妊去勢手術をしていた工場の敷地内のコンクリート柱に、もう一匹の三毛と2匹、赤いひもでつながれて捨てられてたんだって。
どれほど怖くてもがいたんだろう。発見されたときは、2匹共ひもに首を絞められて、1匹はもう冷たくなっていたって......。
さくらさんはぐったりしていたけどまだ息があったから、すぐに動物病院に運ばれ、そのまま入院。次の日、病院に行ったお母さんはびっくり。さくらさんが、夜のうちに病院のケージの中で子猫を3匹生んで、お乳を飲ませていたんだ。
お母さんは、友達と二人で、虐待が続いた公園の猫たちを一気に引き取り、友達のうちの別棟客間をシェルターにして、たくさんの猫たちの面倒を見てきた。そのシェルターに、さくらさんと子どもたちも迎えたんだって。

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さくらさんって、そんなたいへんな体験をしてきたんだ......。
さくらさんの子猫たちが無事育ってみな譲渡されていったころ、お母さんはこんな話を耳にした。
ネズミ捕りのために農家の納屋で飼われていた母猫が交通事故で死んでしまって、残された目も開いていない子猫たちは保健所行きになる、と。それでシェルターに引き取られた子猫4匹は、さくらさんがおっぱいをあげて育て上げたんだ。わが子のように慈しんで。
その子たちが、皆いいおうちにもらわれていった後、またまた拾われた子猫たちが4匹やってきた。少し子育てを休ませたいとお母さんは思ったんだけど、さくらさんは引き受けた。まだ出ていたおっぱいを4匹に与え、一生懸命育てたんだ。
すごい! さくらさんは11匹もの子どもを続けて立派に育て上げたんだ。

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「だからね、お母さんは、さくらにずっと恩返しがしたいと思っていたの。いつかうちの子にしようと決めてたの」って、お母さんは言った。
残る猫が5匹だけになってシェルターは壊されることになり、それぞれ引き取られていったんだって。
そうだったんだ。ボクを先に保護してくれたから、さくらさんは後回しになっちゃったんだね。

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さくらさんって、そんなやさしい猫だったんだね。ときどき怖い顔になるのも、この前お客さんが来たときヤカンの向こうに隠れちゃったのも、シェルター以外の世界や人を知らないからなんだね。
ボクは、さくらさんが怖くなくなった。
さくらさんは、お母さんが「さくら~」って呼ぶと、すぐに走って甘えに行くよ。甘えん坊なのは、ボクとどっこいどっこいかも。でも、お母さんの愛情は、半分こしても、全然平気なくらい広くて深いから大丈夫!
チョイチョイしてみたら、さくらさんもチョイチョイしてきた。追いかけっこしたくて追っかけてみたら、ちょっとめんどくさそうだったけど、全然怒らない。さくらさんは、もう13歳から16歳くらいのお年なんだそうだ。
お母さんは、ボクとさくらさんの猫団子を夢見てるよ。僕もさくらさんとお団子になって一緒に寝てみたいなあ。
そうそう、お母さんは、絵が好きなんだけど、「たっくんにそっくりだったから」って、この前、フンパツして一枚の絵を買ったんだ。

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原っぱで眠っている、ちょっと薄汚れたボクと同じ模様の猫の絵。
お母さんは、いつも願ってるんだ。
「ひもじい猫がいなくなりますように。ねぐらのない猫がいなくなりますように。どの猫もあたたかな人のそばで愛されますように」って。

ボクとさくらさんがもっともっと仲良くなったら、またこの道ばた猫日記で発表するからね。楽しみにしててね。



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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

よかった♥さくらちゃん♡

最後は愛情たっぷりのおうちで最後の猫生を送れるようになって( т т )

たっくんは
お利口さんだから
すぐに
お母さんの事を理解して
偉いなぁー(*´∀`*)

茉莉子さんかたっくんの表現を素敵な言葉であらわしてくれて
胸がグッと
熱くなりました!

お母さんの愛情は、半分こしても、全然平気なくらい広くて深いから大丈夫!

うん
大丈夫✿.•¨•.¸¸.•¨•.¸¸❀✿❀.•¨•.¸¸.•¨•.✿

本当に猫も人間も他の動物たちも
虐待なんて無くなればいい

心から思うし願います❁⃘*.゚

by 銀次 2022-11-22 13:05

たっくん、びっくりしただろうな。と思う反面、るいさんの長く気になっていたさくらさんをお迎えできて、るいさんのさらなる穏やかな気持ちにたっくんも安心したのかなぁと勝手想像しました。さくらさんの貫禄は、きっとたっくんのドキドキも鎮めるんでしょうね。さくらさんにお初にお目にかかれる時を楽しみにし、たっくんの成長も楽しみにしてます😊

by ほごにゃん姉妹 2022-11-22 14:24

さくらちゃん、ようやく終の棲家にやって来られたね!
時々あそびに行くので仲良くしてね!

さくらちゃんがセルターにいた時、模様がソックリなおとめちゃんと言う三毛ちゃんがいたよね。並んでいてもどっちがどっちか全く分からないほどソックリでした。
尻尾の形で見分けているとのことでした。

残念ながら、おとめちゃんは先に天国に行ってしまったけど、きっとさくらちゃんが幸せになったことを、お空の上から喜んでいますよ😇

さくらちゃんとたっくんの猫団子が、早くみたいです😻

by チセママ 2022-11-22 14:37

さくらさん、強面熟女だけど、ものすごい愛情深い猫ちゃんなんですね、偉いなあ、たっくんもきっと慣れて歳の離れたお姉さんみたいにきっと仲良くなりますよ、その日が楽しみです、二人のお母さんもいつも猫ちゃんの幸せ考えてくださって本当にありがとうございます。

by ブラのママ 2022-11-22 15:57

天使のたっくん、穏やかな一段と優しい顔つきになった。毛並みにも艶がでてきたし、るいお母さんに深く愛されている故だろう。さくらおばちゃんは、本当に頭が良さそうなしっかり者に見える。生死をさまよいつつも生き延びただけでなく、沢山の子猫を育て上げたのも頷ける。ネコの置物やネコの絵にも囲まれている、ネコ大好きなお母さんの暖かい愛に包まれて、たっくんとさくらちゃんが猫団子になれる日が一刻も早く訪れますように。

by Y.M 2022-11-22 17:24

たっくんがこんなにお話が上手だったなんて…
お母さんはとっても嬉しいです。
さくらとたっくんの猫団子が叶ったら、
また報告させていただきますね。
道ばた猫さん、
ありがとうございます。

by ruineko 2022-11-22 18:36

たっくん、きれいな顔つきになったね。
さくらおばさん登場でびっくりかも。でもたくさんの子供たちを育て上げた優しいおばさんだから大丈夫。
夢の猫団子はもうすぐかもしれませんね。

by ヤンヤン 2022-11-22 19:17

一見、ちょっと強面のさくらさん。実は愛情豊かな猫さんですね。
いつかたっくんとの仲睦まじい姿が見られますように。

by シーマン 2022-11-22 22:52

さくらちゃんの強い目に、心を射られました。呼んだらとんでくる、甘えっ子ぶりもたまりません。
ひもじい思いをしないように……の言葉に目頭が熱くなります。猫飼いみんなの願いです。
たっくんの穏やかな表情を見たら、きっと、この冬は猫団子間違いなしですね。

by ちぃ 2022-11-22 23:27

るいさんが ずっと恩返ししたかった感謝の猫 さくらちゃん。やっと念願かなって お家に迎えることができたものの ひとりっ子 たっくんの戸惑い…
たっくんのお喋りを通して るいさんの思いが しっかり伝わってきます。

たっくん、お母さんの愛情は半分こにしても きっと今までの倍以上の愛情を感じるはずよ。
大丈夫 大丈夫、お母さんは2人が仲良くするのを見るのが 何より嬉しいはずだから。

きっと たっくんとさくらちゃん、夢の仲良し猫団子が見られる日も まもなく!! のはず。
時々 遊びに行きながら 見守りたいと思います。

by ゆーこ 2022-11-23 09:52

たっくん、とーっても可愛いですね、ホントに天使ですね!さくらさん、堂々としていてかっこいい、素敵!と思ったら悲しい過去とそして立派なお母さんだったのですね。たっくんとさくらさん、猫団子に早くなれるといいですね、楽しみです(^-^)

by とも 2022-11-24 07:16

たっくん、とーっても可愛いですね、ホントに天使ですね!さくらさん、堂々としていてかっこいい、素敵!と思ったら悲しい過去とそして立派なお母さんだったのですね。たっくんとさくらさん、猫団子に早くなれるといいですね、楽しみです(^-^)

by とも 2022-11-24 07:45

>銀次さん

広くて深いお母さんの愛情は、半分こしても、何等分しても大丈夫!って、賢い猫さんにはすぐわかりますよね~~。

by 道ばた猫 2022-11-24 10:05

>ほごにゃん姉妹さん

たっくんは、今のところ、完璧にさくらさんに貫録負けですが、どんどん逞しくなっていって、さくらさんを守る立場になっていくことでしょう!

by 道ばた猫 2022-11-24 10:07

>チセママさん

おとめちゃんの分も、さくらさんには長生きしてのんびり猫生送ってほしいですね~。
時々遊びに行って2匹に会えるなんてうらやましい。

by 道ばた猫 2022-11-24 10:09

>ブラのママさん

さくらちゃんの今の穏やかな幸せは、シェルターを作ってお世話を続けた二人のお母さんがいてこそ。
こころから、感謝です。

by 道ばた猫 2022-11-24 10:11

>Y.Mさん

るいさんのおうちには、小さな美術館ほど素敵な猫の絵や置物があるんですよ~~。
病を持ちながら、恵まれない猫に愛情を注ぎ、明るい笑顔でみんなを惹きつける女性です。

by 道ばた猫 2022-11-24 10:14

>ruinekoさん

勝手にたっくんと会話しちゃいました(笑)。
たっくんとさくらさんのこれからが、とっても楽しみです!!

by 道ばた猫 2022-11-25 09:30

>ヤンヤンさん

さくらちゃんは、丈夫な体で、母性もたっぷりの肝っ玉母さんなんでしょうね~。
たっくんのことも、可愛がってくれると思います!

by 道ばた猫 2022-11-25 09:32

>シーマンさん

ホント。猫は見かけによらない(笑)。でも、猫の世界では、すぐに相手のやさしさを見破るんでしょうね~~。

by 道ばた猫 2022-11-25 09:33

>ちぃさん

たっくんは、お母さんがお出かけの時、寂しそうなお顔で見送っていたのですが、これからはお留守番もふたりで安心ですね~~。

by 道ばた猫 2022-11-25 09:35

>ゆーこさん

ゆーこさんや、チセさんミサさんたちのあったかい後押しがあってこそ、るいさんはたっくんもさくらさんも、家族にする決心をしたのだと思います。素敵なチームに乾杯!

by 道ばた猫 2022-11-25 09:37

>ともさん

さくらさん、ほんとに酸いも甘いも、って感じの堂々ぶり。甘えん坊の素顔も、いつか撮ってお披露目しなくちゃ。

by 道ばた猫 2022-11-25 09:39

さくらさんのやさしい🐈️さんだからね‼️たっくんも最初は近づけなかったかも知れないけど大丈夫と思って、家族に引き取られてよかったです。🐈️ちゃんの首輪つけるのはかわいそうです。やめてほしいなーと思いました‼️

by ばつ丸 2022-11-27 11:04

佐竹さんが紡ぐと、いつもなんてチャーミングで愛おしい物語になるのでしょう…!
きっと、たっくんも「うんうん、そう(^o^)」ってうなずいていますね。
たっくんも天使、そしてさくらさんも、るいさんも大天使です♪

「ひもじい猫がいなくなりますように。ねぐらのない猫がいなくなりますように…」
私も全く同じ想いで地域ネコ活動をしていますが、昨日大好きだったサクラ猫さんを葬りました。
メスや子猫には「オレが見とくから先に食べろよ」とエサを譲る、優しい優しいボスでした。いざという時は仲間を守るために体を張るけれど、ふだんは平和主義で誰からも慕われる、人間の私もほれぼれするようなカッコいいオトコでした(^o^)
うちが保護しているシナモンちゃんのパパなので、シナモンパパと呼んで特別に気にかけていましたが、最近急にめっきり年老いてきて…
でも、うちには、すでに6匹の保護ネコがおり、また急激な環境の変化がかえってストレスになるかとの心配もあり、悩みながらも保護してあげられませんでした…
せめてもの慰めは、シナモンパパが、寒空の下でなく、うちの軒下の温かいベッドで旅立ってくれたことです。眠るような安らかなお顔でした。弱っている彼に、奮発してうちで一番のご馳走をあげたのが、最後のお別れになってしまいました。もう固形物は食べられませんでしたが、それでも美味しそうにペロペロなめてくれました。
迷いましたが、やはり特別なネコさんだったので、うちの庭に埋葬しました。シナモンパパがよく散歩していた原っぱの、たくさんの野の花と一緒に…
「それほど悪くない猫生だったかな」と天国で思っていてくれるといいなあ…

by ぴっころ 2022-11-28 22:50

すみません、途中で送信してしまいました。
長文になり申し訳ありません。
ここの皆様なら、わかっていただける気がして甘えてしまいましたm(__)m
短足で顔の大きな、優しい優しいハチワレ猫さんの話でした。

by ぴっころ 2022-11-28 23:10

>ぴっころさん

シナモンパパ、なんてカッコいいオトコだったのでしょう。とてもいい猫生だったと思いますよ.ピッコロさんのお庭で、ゆっくり眠らせてくださって、ありがとうございます!短足で顔でかのやさしいハチワレさん…読ませていただいただけで、大好きになりました。

by 道ばた猫 2022-11-30 15:10

ぴっころさん、
シナモンパパはとってもしあわせな環境で旅立ったのですね。
ぴっころさんの愛情をたっぷりもらって。
優しい男前のシナモンパパ、安らかに眠ってくださいね。合掌。

by ruineko 2022-12-02 09:27

>佐竹さん、ruinekoさん
温かいコメントをありがとうございますm(__)m
こころに沁みました・・・(涙)
まだまだシナモンパパのいない生活には慣れませんが
他の甘えんぼの地域ネコさんのためにも頑張ります!(^^)!

by ぴっころ 2022-12-07 15:11