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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2018年12月18日

福ちゃんと八重おばあちゃん

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福ちゃんは、推定2歳と7カ月。きれいなハチワレのふっくらメス猫さんです。

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お父さんの有治さんに抱っこされた、福ちゃん。

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お母さんの和美さんにも甘える福ちゃん。ご夫妻の愛情を一身に浴びています。

2年前の5月に小さな福ちゃんがこのおうちにやってくるまでには、いろいろな人のリレーがありました。
空き家になっているおうちの庭でノラ母さんから生まれた子でしたが、この家の持ち主は猫嫌い。
何かあってはかわいそうと、近隣のかたたちが相談。
猫保護のベテランで近くの町に住むるいさんチームの知恵を借りて、子猫の保護・里親探しに乗り出しました。

なかなかつかまらず難航しましたが、子猫2匹は無事保護。母猫も手術をすることができました。
保護猫でいっぱいいっぱいのるいさんチームからの頼みを聞いてくれて、一時預かりをしてくれたのは、先住猫「草ちゃん」と暮らす花さん。5年前の道ばた猫日記「花さんの初めての猫」でご紹介したかたです。

ここで人馴れしたハチワレの子猫は、すぐにおうちが見つかりました。
友人から子猫の話を聞いた文子さんが、兄の家で子猫を欲しがっているからと、もらいにきたのです。

なぜ、お兄さんが子猫を欲しがっていたか?
そのわけはこうでした。
文子さんのお兄さんの有治さんは、一緒に暮らす90代のお母さん、八重おばあちゃんが元気をなくしていくのが気がかりでした。
とくにどこが悪いというわけではなく、食欲がなくて明るさもなくしているのです。認知症も始まっていました。

「そばで、いいコいいコするものがほしい」と八重おばあちゃんは言います。
「ぬいぐるみかい」と尋ねると、
「いいや、ぬいぐるみは動かない」という返事。
有治さんはピンときました。
「ははあ、猫だな」と。
代々、猫好きで、猫のいる家でしたが、最後に飼った「福」を亡くしたあとは途絶えていたのでした。
そこへ、保護仔猫の情報が。

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やってきたのは、2か月足らずの小さな小さなハチワレさん。
すぐに八重おばあちゃんと、「福」と名づけられた子猫は、大の仲良しになりました。
起きては一緒、寝る時も一緒。
おばあちゃんは、みるみる元気になりました。

ところが、身体は元気なものの、認知症は進みます。とうとう留守番が危険な状態になりました。
福ちゃんがやってきて2年後、おばあちゃんはホームに入居することに。
「母が猫と一緒に暮らせるホームを探したんですが、猫と暮らせて介護も手厚い、というホームがどうしても近くに見つからなかったんです」と、有治さん。

すぐ近くのホームに入居後、お父さんは、ホームにかけ合いました。
猫も部屋に家族訪問させてくれないか、と。
返事は「規則でできません」でした。
さらにかけ合い、「玄関先でなら」ということに。
「でも、玄関先は寒いし、まるで刑務所の面会みたいで落ち着きゃしない。玄関先に停めた車の中で母に福を抱いてもらっていたんですが、やっぱりゆっくりできない」
有治さんは、さらに、ホームの女性オーナーに直談判。
「猫の訪問ができないなら、明日退所します」

お母さまと福ちゃんの絆を大事にしてこその、ねばりでした。
ついに、部屋訪問を認めてもらいました!
「出入りの際は、ケージなどに入れてホーム内で逃げ出さないよう」という約束で。

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部屋でゆっくり福ちゃんとの時間を持てるようになったお母さんの喜んだこと。
そのうち、福ちゃんを部屋に置いて、有治さんは家にいったん帰り、数時間後に迎えに来るようになりました。
八重おばあちゃんのお昼寝時間には福ちゃんも一緒に寝るようになったからです。
迎えに行くと、八重おばあちゃんは言います。
「置いて帰ってもいいんだよ。泊まって行ってもいいんだよ」

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そして、帰宅後の有治さんの元へ、何度も何度も電話がかかってきます。
「猫はそっちにいる?」「猫は元気?」
無事を確認すると、電話は切れます。八重さんの用事は、福ちゃんのことしかありません。

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週に3日は、八重おばあちゃんに会いに行き、ゆっくりお昼寝を一緒にして過ごす福ちゃん。
大きな洗濯用ネットに入れられる時もまったく嫌がることなく、おとなしく、ホームに向かいます。
帰る時には、ホームの事務室の猫好きスタッフたちがそのまま帰してはくれません。ひとしきりナデナデされまくります。

こんな訪問が可能なのも、福ちゃんが穏やかでおりこうさんだから。
八重おばあちゃんが今も大好きだから。

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おうちでの、福ちゃんの好きな場所は、外が見える窓辺。お父さんやお母さんが帰ってくるのを待ち構え、「にゃあにゃあ」と愛想よくお出迎えします。

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身体をコロコロしてもらうのも大好き。台椅子の上にぴょこんと乗ると「コロコロして~」の合図。「顔も~」ってせがみ、気持ちのよさに椅子から落っこちそうになる福ちゃんです。

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「猫は小さい時からいじめられることがなければ、いいコに育つね。シャアシャアいってなつかないノラはよっぽど怖い思いをしたんだよね。可愛がればみんないいコ」というのが、猫歴の長い有治さんの持論です。

箱入娘福ちゃん、いつまでも八重おばあちゃんと仲良くね!

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★*゚*☆*゚* お知らせひとつ。*゚*☆*゚*★
12月21日~1月27日まで、猫のいる美術館で知られる千葉県匝瑳(そうさ)市の松山庭園美術館企画展「十人十色展」に参加します。
私の展示会場は、サロン隣の小部屋。テーマは「草上の猫たち」~空が青い日、猫たちは草の上で微笑む~です。
写真、クレヨン画、釘絵、水彩画、詩を出品しています。

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会場で販売する絵はがきセットやミニ額絵の売り上げは、すべて、個人で外猫や保護猫たちのために頑張っていらっしゃる方たちへのカンパといたします。
また、大阪中崎町の路地カフェ「ピピネラキッチン」のゆいこさんが、看板猫しじみちゃんをモデルに作ったバッジも300円で販売。製作実費100円をのぞく200円が「どうぶつ基金」への寄付となります。

松山庭園美術館・・・千葉県匝瑳市松山630
開館は金・土・日・祝 のみ。(正月3が日も開館) 10:00~17:00


「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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猫だって......。
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

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里山の子、さっちゃん
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

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しあわせになった猫 しあわせをくれた猫
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

なんて素晴らしい、優しい人達のリレーでしょうか。おばあちゃんも福ちゃんも幸せで、暗く悲しいニュースが多い中、本当に心が暖かくなりますね。福ちゃんを産んでくれたお母さん猫さんも、我が子がこんなにも愛されていたら、きっと喜んでくれますね。どんどん寒くなる季節、母さん猫さんには、暖かい居場所がありますように、願わくは福ちゃんのように、優しい人に巡り会えて幸せを掴めますように。

by ふみちゃん 2018-12-18 17:06

福ちゃんの二枚目(^_^;)

どうしてここに登場するネコは
こう大人しくて良い子で可愛いんだよ(^_^;)


花さんは当時は大学生だったね
今は立派な社会人になってるんだろうなあ。
草ちゃんも元気そうで何より


そして有治さん(^o^)

「ははあ、猫だな」

出たド定番の

「老人とネコ」

おいらだって
「老人と海」
はわからんちんだけど
「老人とネコ」
ならピンとくるだよ!!

ばあちゃんも

「いいや、ぬいぐるみは動かない」

って(^_^;)
素直にネコ欲しい言えよと(^_^;)

そして必殺技


「猫の訪問ができないなら、明日退所します」


これだ!!


全国のネコ好きの人よ
この技を決して忘れてはいかんぞ!!

「では退所してください!!」

と言われてもおいらは責任とれんけど(^_^;)

しかしかわいいなあ
福ちゃんめ(^_^;)

by ドラ猫マスター 2018-12-18 17:56

>みなさま

追記。福ちゃんと共に保護されたきょうだいの男の子のその後が、今、わかりました。
預かってくれていた花さんがもらってくれて、「お茶漬け」という名になり、先住猫の草ちゃんと兄弟のようにつるんでいるそうです。
本文最後のお知らせの中、「松山庭園美術館」を「町山庭園美術館」と謝って表記してしまいました。祝日も開館なので、12月24日も開館です。

by 道ばた猫 2018-12-18 21:49

>ふみちゃんさん

お母さん猫はTNRをした近所の方々が見守ってくださっていると思いますが、うちが見つかっていたらうれしいですね! みんなで力を合わせたすてきな例だと思います。

by 道ばた猫 2018-12-18 21:54

>ドラ猫マスターさん

吹き出しながら読みました。いつも楽しいコメントありがとうございます。
福ちゃんは、顔の横広輪郭が猫好きにはたまりませんね~ 猫なら可愛いのに。福ちゃんめ。

by 道ばた猫 2018-12-18 21:58

福ちゃん!名前の様に福よかで美人さんに成長して良かったね。
多少なりとも、福ちゃんと文子さんのお兄様一家の橋渡しが出来、
八重おばあちゃんの良き相棒になった福ちゃんの事を、嬉しく思います。

高齢になり長年連れ添ったペットと別れなければならない、悲しい話を
聞きますが、年を取った人こそペットは必要です。
八重おばちゃんのように、幸せなペットとの生活ができる社会になる事を
願っています。

by チセママ 2018-12-18 22:14

あー素敵な話

素敵な八重ママ
素敵な施設

猫の持てる力を
存分に感じさせました!!d=(^o^)=b
福ちゃん…素敵なところにいって良かったです♪(´・∀・)

私も老後
猫と一緒に暮らせる施設に入りたいです

猫のことは計り知れない力を
多くの火とに知って欲しいです

by みさママ 2018-12-18 22:24

変換の訂正てす
多くの人に猫の計り知れない力を知ってもらいたいです♪(´・∀・)

by みさママ 2018-12-18 22:28

ホントにも~、まったくも~
福ちゃんたら福ちゃんたらも~
カワユイったらも~
どしたらイイにょか、
言葉にゃんか
出てこにゃいし、も~
今回はも~
ウシになっちゃってるにょだ、も~(〃▽〃)

by にあ 2018-12-19 00:41

私も八重おばあさんのようなお年寄りになりそうです。
^^素敵な猫とご家族ですね。
私事ですが、偶然にも祖母の名も「八重さん」です。

by みり 2018-12-19 06:07

八重おばあちゃん、最高に親孝行な息子さんをもって幸せですね。福ちゃんの表情も愛情で満ち足りているのが伝わってきました。にゃんこは本当に癒してくれますね。私の母も施設に入居中で、時々わが家で癒されて帰ります。一緒に暮らせる施設が増えるといいですね・・・。ちなみに私の祖母も八重おばあちゃんでした。(笑)

by ぺったんの母 2018-12-19 09:36

一枚目の福ちゃん、なんとまぁぬいぐるみのようで可愛いこと♪そしてお名前のまんま福たくさんのお顔ですね(*^_^*)
八重おばあちゃま、福ちゃんとお部屋で会えて良かった!!そういう施設が多くなることを望みます!そしてそういうところにはたくさんの幸せが運ばれてくるようにと心から願います。
良いお話をまたありがとうございました♪

by とも 2018-12-20 13:18

>チセママさん

猫好きにとって、最後の日まで猫と暮らすのが夢ですものね。それを実現できるよう、家族、仲間、地域で後押しするのがあたりまえのこれからになりますように。

by 道ばた猫 2018-12-21 09:09

みさママさん

息子さんの熱意も素敵なら、許可したホームも素敵ですよね。
そしてなにより、週3回通う福ちゃんがえらい!!

by 道ばた猫 2018-12-21 09:12

>にあさん

福ちゃん、ほんとうに綺麗な楕円形の横広顔で、これぞ可愛がられている「円満顔」だと思いました。
福ちゃんがそばにいれば、八重おばあちゃん、まだまだ長生きなさいますね!

by 道ばた猫 2018-12-21 09:16

>みりさん

みりさんのおばあさまも、きっと「幸福が八重にかさなるように」という思いを込めてつけられたお名前なのでしょうね~  めざせ、我らみんなで、猫と共に老いる人生!

by 道ばた猫 2018-12-21 09:21

ぺったんのお母さまのお母さまも八重さん!
ときどきおうちで猫に癒されていらっしゃるといったケースもまた、お幸せですね~

by 道ばた猫 2018-12-21 09:24

福ちゃん、名は体を表すのモデルですよね。
八重さんのお部屋のドアには、ホームのスタッフの方が折った猫の折り紙が貼ってあるそうです。

by 道ばた猫 2018-12-21 09:28