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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2013年08月27日

花さんの初めての猫

 花さんは、22歳。京都の実家から関東近郊の町に出てきたばかりで、叔父さんの家に居候をし、町のパン屋さんでアルバイトをしています。
 
 2週間まえから、花さんは、「早くお部屋に帰りたい」病になっています。休みの日も、外に遊びに出かける気にはなりません。なぜなら、お部屋には、こんなに可愛い子猫が待っているから。花さんの初めての猫、草(そう)ちゃんです。
 
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 草ちゃんはまだ2か月半の男の子。ひとりの留守番はさびしい年頃です。お出迎えしてすりすり甘えてくる草ちゃんのことを思い浮かべると、もう会いたくてたまらない花さん。
 
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 花さんは、子どものときからずーっと、猫を飼うのが夢でした。でも、お父さんが猫アレルギーだったため、その夢は叶いませんでした。
 いつか猫と暮らしたい!と、ネットで里親募集中の猫たちの写真をいつも眺めていたそうです。ペットショップやブリーダーからお金で買うのではなく、保護された猫の里親になろうと決めていました。
 
 京都から出てきて、叔父さんちに間借りすることになり、猫好きの叔父さんが「猫飼っていいよ」と言ってくれたときは、嬉しくて飛び上がらんばかりでした。探し始めたころ、叔父さんが「近くのコンビニにこんなの張ってあったよ」と、チラシをコピーして持ち帰ってくれました。「里親さん募集中です」のチラシには、生後1か月半の愛らしい子猫たち5匹の写真が。
 
 「5匹のなかに、1匹ぼやっとしてる子がいて、男の子か女の子か不明やったんやけど、なんだか春っぽい顔で、このコがいいな、と」。
 
 まずは、保護主との面談。保護主にとっては、猫を譲渡するにはじつは花さんは「独身」「定職についていない」「自宅ではない」など条件的には「アウト」だらけでした。そういう相手には基本的に手渡しません。でも、花さんに会って「この人なら終生可愛がってくれる」と、保護主さんはすぐに確信したそうです。
 
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 首にざっくり深い傷を負ったノラの母さんから生まれて、保護されたときは、やせっぽちのネズミ状態で、育つかどうか危ぶまれていた子猫たち。そのなかで、ぼやっとしてるのが花さんに気に入られたサバ白は、正式名を「春草(しゅんそう)」、愛称草ちゃんと名付けられました。いきいきとした猫の絵を何枚ものこした日本画家の菱田春草からとった名です。
 花さんのもとにやってきた日は、「猫をかぶって」おとなしーくしていた草ちゃんでしたが、その夜中、花さんがトイレにたってベッドに戻ってみると、デーンと枕を占領して寝ていて、「おーっとォ」と思った花さんでした。
 
 「猫を飼って驚いたのは、とにかくよく走り回ることと、猫の体って熱いんや!ということ。真夏というのに、ベッドでわたしに密着して寝たがり、熱いので私が壁際にひくと、またくっついてきて、ついにわたし、壁ぎりぎりに押しやられてしもて、草はゆうゆう真ん中で寝てるんですよ~(笑)」
 
 草ちゃんのチャームポイントは、ピンクの鼻先や肉球、先が真っ白な長い尻尾、そしてマイペースなところです。第一印象とかなり違うやんちゃ坊主だったけど、もう、花さんは、草ちゃんがかわいくってかわいくってたまりません。抱っこしたとき、こんなふうに、顔をおもちゃにされて、鼻の穴を肉球でふさがれたって。
 
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 キラキラの無邪気な瞳でじっと見つめられて、「ニャー(もっと遊べや~)」「ニャー(メシくれ~)」(なぜか京都弁)と甘えられても、可愛さあまって、ついこんなことを言ってじらしてしまうのですって。
 「ニャーしか言えへんのか~ ニャーだけじゃあわからへんなあ~ たまにはニャー以外言ってみ」
    
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 ついこの前のこと。とても不吉な恐ろしい夢を見て目覚めた花さんは、ベッドの上で大泣きしてしまいました。いつもなら、朝目覚めると、草ちゃんは花さんの鼻や口にチョイチョイとちょっかいを出したあと、さっさとベッドから出て行くのですが、そのときは・・・・
 
 「泣いているわたしのそばにじーっといてくれて、そのあと涙をぺろぺろ舐めとってくれたんです。あれは、感動でした。草がきてまだ2週間なのに、昔からずーっと一緒やった気がします。もちろん、どんなことがあったって、これからずーっと一緒です!」
 
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 ------草ちゃんのきょうだいたちもおうちが決まり、、母さん猫も入院してケガの手当と避妊手術をすませました。
 夏のはじめ、裏道を車で走行中に、首に大けがをした痩せた母さん猫を発見し、あとをついて行って、死にそうな乳飲み子だった草ちゃんたちも見つけ、一家を保護したのは、ちょうど1年前の猫日記「まりやのハート」でご紹介したルイさんです。
 わたしが「ルイさんは、ノラたちの天使ね」と言ったら、ルイさん、「ちがうの、猫たちが天使なのよ~」と言ってました。
 
 ルイさんと花さんは、年代は違うけど、とっても仲のいい猫友達になりました。


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

四枚目の写真を見て、思わず電車の中で噴き出しました笑
花さん幸せそう〜♡(私もされたい…)

花さん、草ちゃん、お幸せに!

by ともえ 2013-08-27 16:05

肉球タッチ たまらないですよね~
花さんの気持ち よーーーーーーーくわかります (^o^)
草ちゃんも えくぼがチャームポイントの花さんが大好きにゃー って感じですね

by にゃにゃ 2013-08-27 16:42

鼻に手を突っ込んでいる写真に思わず吹き出しながら泣いてしまいました。
首輪がユルユルなのも可愛いです(すっぽ抜けてしまわないかちょっと不安)。

by レオ 2013-08-27 17:23

草ちゃん、ラブリー

by akiko 2013-08-27 18:16

花さん幸せそうですね~*
こんなに可愛らしい子が待っていたらすぐにでも帰ってきたくなっちゃいますよね♪
いいなぁ~~*

by りょう 2013-08-28 14:25

花さんと草ちゃん、とってもいい写真ですね~☆
ありがとう ♪  道ばた猫さん ♡

by ruineko 2013-08-28 15:49

子猫時代の肉球パンチ懐かしい! 花さん、草ちゃんありがとう。癒されました。

うちにも めんこいけど どデカな♂3匹と♀1匹が私の帰りを待っててくれています。

by chachamaru5 2013-08-28 17:24

>ともえさん、にゃにゃさん、レオさん、akikoさん、りょうさん、chachamaru5さん

 花さんと草ちゃん、またとないカップルですよね。初対面の時の草ちゃんは、ほかの子猫たちが「お客さんだあ~」と寄っていくのにわれ関せずで、障子戸のすきまに挟まっていた(笑)そうです。「ちょっと情けない感じがよかった」と、花さん。いまや、優しく凛々しいボーイです。

>ruinekoさん

 花さんと草ちゃんのキューピット、ruinekoさん。やっぱり、前世は、私と同じノラだったのかな(笑)。

by 道ばた猫 2013-08-29 00:53

すごく悲しいことがあって。起き上がれないくらいの気持ちになって。
道ばた猫日記を始めからずっと読ませてもらいました。
そして、花さんと草ちゃんにまた戻ってきました。
もう気持ちは違います。
泣いたり、笑ったり。悔しかったり切なかったり。そして泣けて泣けて。
ありのままにこころが動いていました。
そしたら、なんか嬉しくなって。
そうかあ、いつもそのまんま生きようって。
私のかたわらの3匹も一緒にいてくれたんだ。
道ばた猫さん、私も猫に選んでもらえて良かったです。
いつも本当にありがとうございます!

by じゅんこ 2013-08-30 15:53

>じゅんこさん

 よかった、猫日記が心を上向けるお役にたって。じゅんこさんのそばには猫がいるんですね。それも3匹も!それだけで、なんてしあわせもん! 猫たちは、じたばたすることないよ~ なるようになるさ~、生きてるだけでもうけもん、って教えてくれますものね。また、新しい9月がやってきますね!
 

by 道ばた猫 2013-08-30 23:58

道ばた猫さん
ひとりひとりにコメント下さって。
本当にありがとうございます!
ノラだったフー子が、私のもとで5匹の赤ん坊を産みました。2匹が残って親子3匹と暮らしています。フー子は14歳。息子と娘は13歳。
私、フー子に選んでもらえたんだ。
ブログを読んで、なんかすっごくもっと幸せになりました。
猫たちと暮らせることが!!

本当に9月ですね。
楽しみになりました(≧∇≦)

by じゅんこ 2013-08-31 15:57