明けましておめでとうございます。
今年も町々で出会った猫と人が織りなす物語をお伝えしていきます。よろしくお願いいたします。
1月は、家猫となって初めての暖かいお正月を迎えた猫たちのシリーズ。まずは、建具屋さんの子になったももちゃんのしあわせ物語を。
ももちゃんは、推定1歳半の白黒さん。口元のほくろがチャームポイントです。
ここ建具屋さんの子になってまだ50日ちょっとですが、このお正月はやってきた親戚の子どもたちの接待で大忙しでした。追いかけられて一応逃げるものの、本気では逃げず、頭を撫でてもらったり、お返しに甘噛みをしてあげたりで、大人気だったのです。みんながももちゃんにおやつをあげたがり、正月太りにもなりました(笑)。ほら、二重あご。
子どもたちはももちゃんを「2代目」と呼びました。この建具屋さんで前に飼っていた猫の名も「もも」だったからです。
1代目は来客がちょっと苦手な物静かな美人さんでした。今度の2代目は1代目よりずっと愛想がいいので、子どもたちは「可愛い」を連発し大はしゃぎでした。
ももちゃんのずっとのお父さんはこの人です! →
道ばた猫日記 2021年3月16日「猫嫌い」のおじさまと猫
14歳で旅立ってしまった1代目ももちゃんのお話になると、人前でも涙がこぼれてしまう自称「猫嫌い」のお父さんに、「ももちゃんという名の保護猫がいるけど、会ってみませんか」と声をかけたのは私でした。1代目が旅立って1年近くの、去年9月のことです。
ももちゃんは、7月に成田の農家さんのおうちの前に突如現れた子でした。農家さんが農作業から帰ると、7~8カ月くらいに見える痩せた小さな猫がお行儀よく家の前に座っていたそうです。お腹がペコペコのはずなのに放し飼いのニワトリを狙うでもなく、ニワトリたちに混じって玄関先にいて、人懐こく家には入りたがります。でも、その農家さんにはすでに6匹の保護猫がいてもう増やせない状況だったので、農家仲間の尚子さんに相談しました。当ブログでも何度かご紹介しているむぎちゃんたちの保護主さんです。
預かりを引き受けた尚子さんは、「もも」と名付けたその子があまりにも人懐こく、いくらでも食べたがり、心なしかおっぱいが目立つようなので、小さな体に赤ちゃんを宿しているのではと、ふと思いました。子を宿したノラは生き抜くために必死に人にすり寄ることが多いと聞きました。
獣医さんに連れていくと......。
小柄だけれど1歳くらいで、出産歴があるとのこと。おっぱいが茶色く吸われた跡があるのは、すでに卒乳しているからということがわかりました。
ももはなんと1歳前の幼いからだで懸命に子どもを産み育てていたのです。病気や事故で失った子もいたのでしょうか、離れ離れのノラになったのでしょうか、もらわれた子もいたのでしょうか。ももが現れた農家さん周辺では子猫の姿を見た人はいませんでした。もものこれまでを想像すると、尚子さんの心は痛みました。そして約束します。「きっといいおうちを見つけてあげるからね」
そんな話を聞いた私が頭に浮かんだのが、同じ名前の猫を可愛がっていた建具屋さんだったというわけです。「もらいましょうか」という返事でした。
尚子さんちで安心して子猫返りしたかのように、むぎちゃんといい勝負のやんちゃっぷりを見せたももちゃんは、10月に建具屋さんのおうちに下見に行きました。ももちゃんはおうちが気に入り、建具屋さんとも最初から打ち解け合った様子。脱走防止の扉や窓格子を取り付けてもらった後の11月に正式譲渡となりました。
さっそく抱っこされるももちゃん。建具屋さんの口元はほころびっぱなしです。
「今日からここがあたしのおうち? あたし、ずっとおうちの子になりたかったの」
そう言っているかのように、お父さんを見上げるももちゃん。
約束のしるしのように、ももちゃんはお父さんの指を噛みました。
うんと可愛がってもらって、うんと幸せになるんだよ。尚子さんはももちゃんを抱きしめてお別れをしました。
その晩、ももちゃんはお父さんのお布団でさっそく一緒に寝たそうです。
そして、翌日から尚子さんと私のスマホには、建具屋さんからももちゃん便りが続々と。
「トイレに行ったら、ドアの外で待ってた」
「やりたい放題です。仏壇を探検してます」
「足をフミフミモミモミしてくれてます」
「さっき2階の仕事場に行ったら、仕切りの格子の前でずっと待ってた。可愛すぎる。猫嫌いなのにどうしよう」
「仕事にならない、どうしよう」
「猫嫌いのおふくろと仲良く並んでテレビ見てます」
そして最近は......。
「毎晩おやじ狩りされてます。待ち伏せして飛びかかり、僕を虐めて楽しんでます」
「膝の上でいっしょに新聞読んでテレビ見ます」
「本を読みだすと、あたしを見てと邪魔してきます」
さびしくひもじい期間が長く、おうちの子になりたかったももちゃんは、2階にある何部屋もの自遊空間と、甘々の飼い主(しもべ)を見つけたのでした。
尚子さんが「ももをもらっていただき、たいへんお世話になりました」と年末年始の挨拶をメールしたら、こんな返事が返ってきたそうです。猫嫌いの建具屋さんから。
「こちらこそ、可愛いももをいただき、ありがとうございました」
そうそう、年末、こんなこともついつい漏らした建具屋さんでした。
「きのう、こんな夢を見たんです。台所の窓が開いてて、そこからももが外に出て行ってしまった。夢の中で、なぜか僕は少年。懸命に探すけど、どこにもいない。見つからない。目が覚めたら、泣いているぼくのそばに、ももがいました」
だいじょうぶ。ももちゃんはあなたのそばにずっといますよ、猫好きの建具屋さん。
だって、こんなにふたりは相思相愛ですもの。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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😭
やばい、涙止まらんです😭
ほんと、どの子にもずっとのお家にご縁がありますように🙏と願わずにいられません
by さくら 2026-01-06 10:08
可愛いももを見つけてくれた農家さんは、託して終わり!ではなくずっと気にかけてカリカリや物資を届け続けてくれていました。頼れる優しい仲間です。
by かざねこ 2026-01-06 12:47
ももちゃん可愛い~♪
初日から一緒のお布団で寝るなんて、これはもう「ネコ嫌いの」お父さんと運命の赤い糸で結ばれていたとしか思えませんね~(^-^)v
佐竹さん、新年にぴったりの幸せな幸せなおふたりの物語、ありがとうございます♪
今年も佐竹さんのブログを楽しみに、私もささやかな保護ネコ活動頑張ります!
by ぴっころ 2026-01-06 14:35
明けましておめでとうございます。
何てあったかいお話しなんでしょう!
猫嫌い?の建具屋さんのももちゃんへの言葉、尚子さんのももちゃんを抱きしめる姿…
涙が止まりません。
猫は家を選んでやって来る。まさに、ももちゃん、いいおうちの前にやって来たんだね。
私の膝の上で今、グルングルンと喉を鳴らしているおばあちゃん猫もそうだったなぁ...
by ちぃ 2026-01-06 15:46
素晴らしい!モモちゃんは美猫だ。お母さんの経験もあるというから、きっと心も広く愛情いっぱいなのだろう。新しいおうちでの日々が明るくにぎやかでありますように。
by Y,M 2026-01-06 16:17
ももちゃん2代目、先代に続いてなんとも可愛らしい!
「猫嫌い」のお父さん、他人ごとではありません。
今は元保護猫姫様に下僕認定された私ですが、
「猫反対してたよね」、「おやじ、猫嫌ってたでしょ」などといまだにチクチク言われる有様…
一緒に暮らしてみて初めてわかることもあるんですよねぇ。(汗)
by ヤンヤン 2026-01-06 16:24