秋の森の実のようなふたつの瞳が、お部屋にさしこむ陽光を受けて、輝いています。
こまちくんは、このおうちに、この秋やってきたばかり。
お外で過ごした夏は暑かったし、ひもじかったし、怖いこともいっぱいあったことでしょう。
ガリガリだったこまちくん、もう安心。
ママもパパも優しいし、お姉ちゃんとお兄ちゃんが学校から帰ってきたらたっぷり遊んでくれるから、今は段ボールカジカジしちゃお。
でも、こまちくん、遊んでほしい相手が他にもいるんです。
ときどき、こまち君のいる部屋を怖~い目でのぞきに来るあの大きなキジトラお姉ちゃん。
そう、こまちくんが遊んでほしくてたまらないのは、
先週登場のまりえちゃんです!
なにしろお風呂の床下からやってきた猫だから、なかなか手ごわいんです。
こまちくんがこの家にもらわれてきたいきさつをお話ししましょうね。
まりえちゃんのために弟分を迎えようと、ママのりみさんたちは考えました。
保護猫ボランティアの尚美さんに紹介されて、預かりの玲子さん宅に会いに行ったその子は、とっても人懐っこいサバ白の男の子で、紬美ちゃんも裕成くんもすっかり気に入ってしまいます。
ところが、このココくんにトライアルを申し込んだ後に、ココくんがFIP(猫伝染性腹膜炎)を発症。玲子さん宅で闘病生活に入りました。
「ココちゃん、あと何回寝たら来るの」と楽しみにしている子どもたち。りみさんは、回復を信じ、長期高額となる治療費の一助にと「ココ基金」をココくん保護に関わったボラさんたちと立ち上げて、待っているつもりでした。
ところが、FIPは回復後も、大事をとって暮らすのが一番とのこと。小さな子供がふたりいる家ではココくんに負担をかけてしまいます。泣く泣くココくんを迎えることをあきらめた頃、こんな知らせが。
「ココくんにそっくりな子がいます。ノラがいっぱいいる場所で、その子はひときわガリガリなので、緊急に保護しました」
保護猫カフェの「ろくねこ」さんに会いに行くと、ほんとうにそっくり。
「ジャズくん」と仮の名をつけられていたその子を迎えることに決めました。
電車好きの裕成くんが「こまち」という新しい名をつけてくれました。
別部屋のケージハウスでの隔離期間、気になってのぞきに来るまりえちゃん。
室内フリーとなったこまちくん。まだひょろっこいですが、エンジン全開です。なんてったって、特別急行ですから。
眠くなって、ごろーん。
お姉ちゃんもお兄ちゃんも、メロメロです。もちろん、先住のまりえちゃん愛はいささかも変わらず、まりえちゃんファーストもぬかりありません。
「そこどいてくんない?」と、まるでものおじしない後輩に圧をかけるまりえさん。
あっ、かなりヤンチャな瞳になってきました!
先輩に飛びかかりにいって、猫パンチを食らう日々。
「ふたりの距離は縮まるのかしら」とやきもきしていたりみさんでしたが......
「今朝の写真です。はなつん挨拶してました」と、たった今、うれしい報告が。
「みんなで一緒に寝るのが夢」というりみさんの願いは案外早く叶いそうですね。
仲良し家族で、ハッピーハロウィン!!
治療を懸命にがんばって、どんどん元気になっているココくんのおはなしや、こまちくんと一緒の過酷な現場から順次保護された子たちのその後は、またいずれ。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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