会いに行くと、ふふちゃんは、ちょっと所在なげな目をして、ちょこんとソファーに座っていました。
ふわふわの毛並みの生後3か月の女の子です。
「お客さんはまだこわいの」
無理もありません。ここにやってきて少ししか日がたっていないのですから。
それまでは半ノラをしていたので、お部屋暮らしは初めてです。
だから、迎えてくれた美子母さんでも、急にお部屋に入ってくると、ひとまず隅っこに隠れて、手を伸ばされると小さくシャーシャー言ってしまいます。
ソファーの下に隠れたり。
本箱の下に隠れたり。
でも、ふふちゃんのシャーシャーはちっとも怖くないし、爪を出したりも一切しないので、美子さんは簡単にふふちゃんを抱っこしてしまいます。
「しまった、抱っこされちゃった」というお顔のふふちゃん。
そして、ソファーの上に置かれてしまいました。
美子さんの振る猫じゃらしに興味津々。
たまらず、飛びつきます。
この分だと、秋にはすっかり人馴れして甘えん坊になっていることでしょう。
ここは、印旛沼を見下ろす小高い丘の上にある、ギャラリーカフェ「風草」。オーナーは、陶芸家の美子さんです。
季節季節に咲く草花や、コナラの木々の間を風が吹き渡る、野趣に富んだ別空間です。
風草には、「風(ふう)ちゃん」という看板猫がいました。
印旛沼のある崖下から、ギャラリーめざして必死で上ってきたガリガリの子猫でした。
猫嫌いの美子さんを夢中にさせた風ちゃんのお話は、8年前の当ブログ「
風になった風(ふう)ちゃん」で。
風ちゃんは、「巨大結腸症」の大手術も乗り越え、その後の通院もがんばり、風草の風に吹かれて穏やかに17年を生きました。
最期は、大好きなお母さんの胸の中で。
風ちゃんが旅立って8年。何度も「仔猫を飼いませんか」というお尋ねはあったそうですが、その気にはなれなかった美子さんでした。
ところが、今年6月のある日、知人が保護した子猫の写真が送られてきたとき、「風に似ている!」と初めて心が動いたのでした。
手賀沼ほとりの大きなお店の敷地内で暮らしていたノラ母さんの産んだ子です。ご飯を運ぶ人がいたので、スレてはいないけれど人馴れもしていない、いわば半ノラ。
美子さんは、自分の年齢も考えて、何かあったときは娘が引き受けるという約束のもと、子猫を迎えることに決めました。
やってきた次の日から食欲旺盛。
「ふふという名は、風(ふう)からもらったの」と、美子さん。
「やっぱり猫のいる暮らしは、楽しいわ」と笑顔です。
抱っこが大好きだった風ちゃん。最後の日々は、まるで子猫のような軽さでした。
ふふちゃんを胸に抱くとき、美子さんは風ちゃんを抱っこしたあの温もりを思い出しているに違いありません。
きっと風ちゃんが寄こした子猫、ふふちゃん。
ところでこのふふちゃん、見ているだけで「ふふふ」と笑顔にさせる愛くるしいお顔ですが、じつはけっこうなやんちゃ娘なんです。
個室暮らしの今は、棚にあるものを落としまくるのがマイブームのようです。
棚の上のものを落として遊ぶ時期が過ぎたら、ギャラリーデビューかな。
ギャラリー風草での秋恒例の「わんこにゃんこ展」は、9月20日~22日までの3日間。私も参加しますので、お近くの方はぜひ。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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茉莉子さん、愛らしい ふふ の写真を沢山撮っていただき有難うございました。
懐かしい風の写真もみると、いまでも胸がいっぱいになります。
ギャラリーにいらした、猫ちゃん好きなお客様もふふ部屋で、ふふといっぱい遊んでくれました。皆さん有難うございました。
by 松平美子 2025-07-29 14:33
ふふちゃん 可愛いお名前ですね~ 子猫がいたずらしても、笑って済ませられますよね。猫なら、大人猫でも、許しちゃいます。
風ちゃんみたいな堂々とした姿になりそうです。風ちゃんも、楽しそうなお母さんをお空から見て、きっと安心してますね。
by ちぃ 2025-07-29 20:41
ふふちゃん可愛らしい!
印旛の崖を上ってきた先代 風ちゃん、毛皮を着替えてやってきたのかなぁ~
秋恒例の「わんにゃんこ展」とても楽しそうですね、是非行ってみたいです。
by ヤンヤン 2025-07-30 07:21
最初の写真を見たときは、ふふちゃんは学者先生かと思ったら何と3か月の女の子!! 大きな目と耳、立派な手足、耳の中の長い毛等々、特徴満点。風ちゃんとも鼻の先が黒いところが違うだけでそっくり。美子さんの制作の手助けになることを期待したい。
by Y,M 2025-07-30 07:30
風ちゃん、風草さん、懐かしいです。最後にお会いしたのが10年前。ご無沙汰しております。ふふちゃんお幸せに。
by ムヨク 2025-07-31 08:28
>美子さん
風草さんで、再び猫さんの紹介ができるなんて嬉しかったです。
ふうちゃんも、空で目を細めているのではないでしょうか。
by 道ばた猫 2025-09-16 14:32
>ちぃさん
そっか、ふうちゃんみたいに堂々とした猫に!
想像していませんでしたが、なりそうですね!楽しみです。
by 道ばた猫 2025-09-16 14:34
>ヤンヤンさん
ちょっと交通の便がよくないところなのですが、そのかわり、ロケーションは最高です。
ふふちゃんに会いに、ぜひ!!
by 道ばた猫 2025-09-16 14:35
>ヤンヤンさん
今度は崖経由でなく、ふんわりとやってきましたね~。
でも、きっと、ふうちゃんの差し金か、生まれ変わり。
by 道ばた猫 2025-09-16 14:54
>Y・Mさん
うわあ、観察が鋭いですね!そんなにふうちゃんと共通点があるとは。
すてきな作品もたくさん生まれますね!
by 道ばた猫 2025-09-16 14:56
>ムヨクさん
もう10年もたちますか。
できれば、風草であのころの風草に集った人たちとの同窓会をいつかできたらなあ!
by 道ばた猫 2025-09-16 14:58