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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2021年03月02日

美容室のうめちゃん

利根川を渡れば茨城県という、千葉県北部の香取市。
目の前は、原っぱというのどかな路地に、ミヨコさんの美容室はあります。

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「お客さん?猫好き? うにゃあ~お」
奥から現れたのは、ここの看板猫、うめちゃん。芳紀11歳です。
雌猫にしては、けっこう野太い声で、目力とともに胆力を感じさせる猫さんです。

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でも、ミヨコさんに抱っこされている姿は、愛らしさたっぷりの、甘ったれさん。
この美容室は、地元のお馴染みさんばかりなので、うめちゃんのことは知れわったいて、猫好き客は来店早々「うめちゃんは?」「うめちゃ~~ん」。
今日のお客さんのカヨコさんも、そうです。

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大の猫好きカヨコさんは、いつも、うめちゃんの好きなおやつ持参で、来店するそうです。
「『きょうも可愛いね~』から始まって、うめちゃんにかまってもらいます。髪をいじってもらっている間、膝に乗ってきてくれたりすると、もうふにゃふにゃ」
うめちゃんがお店にいないときは、奥から、ミヨコさんが連れてきてくれることもあります。

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大人気のうめちゃん、11年前に、市内のお花屋さんからもらわれてきた子猫でした。

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こんなに、いとけなかった、うめちゃん。

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取材時の初対面で、私は、うめちゃんに「お母さんのハナちゃんに似てるねえ」と思わず言っていました。
そう、もう9年まえの道ばた猫日記「花屋のハナちゃん」でご紹介した、ハナちゃんです。
ハナちゃんの印象は強烈でしたので、その後も何回か会いに行きましたが、血液の難病を発症し、2年前に天国へ。
お花屋さんや地域の人たちに愛された一生でした。

うめちゃんは、そのハナちゃんが花店に迷い込んでから産んだ6匹の子の1匹です。
ミヨコさん一家が子猫だったうめちゃんを迎えたのは、先住猫の死という悲しさからいまだ立ち直れない時期でした。

先住猫は、息子さんがまだ小学生の時、地区センターに段ボール箱で捨てられていた子猫でした。

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マックと名付けられ、一家の愛情を浴びて、育ちます。
こんなチャーミングなおじさん猫に。

そのマックを見送った後のさびしさ。
ミヨコさんに「花屋さんに子猫がいますよ~」と声をかけたのは、なじみ客のカヨコさん。
ミヨコさんと、当時高校生だった息子さんが見に行くと、1匹の子猫が息子さんの膝にぴょんと乗ってきました。
この子をもらおうと決めかけたとき、「アタシも行きたい」とばかり、物陰からジーと見ていたのが、うめちゃん。
膝に乗ってきためいちゃんと、うめちゃんは、一緒にもらわれてきたのでした。
お父さんには「1匹でいい」と叱られたそうですが、手術のための病院行きなど、せっせと面倒を見たのも、お父さん。

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めいちゃんとうめちゃんは、仲良く育ちましたが、めいちゃんは残念なことに早く旅立ってしまいました。
うめちゃんは、しばらくめいちゃんのことを探していたそうです。

お店の目の前は、広々とした原っぱと田んぼが続いています。
うめちゃんは、子猫の時は、枯葉を集めてきては、おうちの中で並べるといった、女の子らしい遊びをしていました。が・・・。
やっぱりハナちゃんの娘です!
そのうち、お風呂の浴槽にカエルや小さなヘビやら、持ち帰って遊ぶように。
息子さんが獲物を逃がしてやるのに苦労したようです。

完全室内飼いとなった今では、こんな武勇伝も笑い話。

数年まえ、ガラス越しにうめちゃんに恋するオス猫が現れました。
触らせないので、なつくまで、車庫の奥に雨風防げるハウスを作ってやり、やがて、家の中に入れてやりました。
それが、モコ。

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マドンナと一つ屋根の下で暮らせることになったモコ。
だけど、うめちゃんは、いつもちょっと距離を置きます。
うめちゃんをじーっと見つめるモコに、息子さんもほだされて「モコ、そんなにうめが好きか・・・」。
うめちゃんが寝入っているときに、そーっと添い寝して、手を握るモコなのでした。

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「モコ、どこ触ってるの」と笑われるモコ。
モコはキャリアだったので、うめちゃんとの短い同居でしたが、最後は幸せだったと思います。
つれなかったうめちゃんは、具合の悪くなったモコくんを遠くから見守ってあげていたそうです。

ミヨコさんご家族の、いろいろな猫たちとの歴史があって、今ある、うめちゃんの幸せ。
長生きしてほしいからこそ、完全室内飼い。時々リード付きで、外を散歩します。

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出張のときにはお父さんは電話をかけてきては、いつもミヨコさんにこう尋ねます。
「うめも〇〇〇(息子の名)も元気にしてるか」
「順番が逆ですよね」と、ミヨコさんは笑います。
みんな、みんな、うめちゃんが大好き。
ハナお母さんの分も、めいちゃんの分も、モコくんの分も、うんと長生きしてね!

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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

うめちゃんにそっと手を添えるモコ、幸せを感じ取っていた姿がいじらしい。それにしても、めいちゃんモコちゃんマックそしてハナ母さんと、ネコちゃん達の命は余りにも短い。今は天国から、優くしてもらったミヨコさん家族を思い出しながら、脱力した甘え方を身に付けたうめちゃんを見守っていることだろう。

by Y.M 2021-03-02 16:14

花屋さんのハナちゃんの記事、よく覚えています。そのハナちゃんの忘れ形見なんですね、うめちゃんは。
鳴いている顔がそっくり。いいおうちにもらわれて、よかったね!

by ひじきママ 2021-03-02 21:49

モコくん、大好きなうめちゃんと一緒に過ごせて幸せだったでしょうね。例えつれなくされても側に居られるだけでも嬉しいものです。うめちゃん早く旅立ってしまったみんにゃの分まで元気に長生きしてね!

by シーマン 2021-03-02 23:19

>Y.Mさん

脱力した甘え方…ほんと、そうですね!言いえて妙。
ミヨコさんちの猫さんたちは、どの子も、愛され猫のお顔ですね~。

by 道ばた猫 2021-03-03 01:22

>ひじきママさん

ハナちゃんの6匹の子供たちは、みんなそれぞれいいおうちにもらわれていったそうです。元気にしてるかな。みんな、ハナちゃんの面影があるのかな。

by 道ばた猫 2021-03-03 01:25

>シーマンさん

モコくんは、大きなオス猫さんみたいですが、いちずでいじらしいいですね。
大好きなうめちゃんと一つ屋根の下で暮らせてよかった。

by 道ばた猫 2021-03-03 01:29

マック、うめちゃん、めいちゃん、モコくんに幸せをくれたミヨコさん家族に感謝です。
そして可愛くて仕方ないのに、素直じゃないお父さん…。
大好きです。

by ジハにゃん 2021-03-03 09:10

うめちゃん、なんて可愛いコでしょう!無防備なお腹に恋をしそうです。
モコくんのように見つめ続けたら振り向いてもらえるかしら(笑)
マックくん、めいちゃん、モコくん。愛情たっぷりのミヨコさんご一家で過ごせてみんな幸せでしたね。
うめちゃん、いつまでも幸せにね!

by りんどう 2021-03-03 20:58

>ジハにゃんさん

お父さんは、2匹を連れ帰った最初だけ、「1匹でよかった」と叱ったそうですが、もう、あとは、2匹にメロメロ一直線。いまは、うめちゃんを溺愛中だとか。

by 道ばた猫 2021-03-04 00:48

>りんどうさん

無防備なお腹に吸い寄せられるとは、りんどうさん、かなりの猫好きですね(笑)。
ミヨコさんちの猫になれば、みんな安心して無防備になるんでしょうね~

by 道ばた猫 2021-03-04 00:52

うめちゃん!目力すごい!!可愛い!!もこくんもマドンナうめちゃんと過ごせて幸せでしたね。甘ったれた姿も子猫の時もまた可愛いですねぇ(*^-^*)めいちゃん、もこくん、みんなの分までどうか長生きしてね♪

by とも 2021-03-04 07:16

>ともさん

うめちゃんは、お母さんのハナちゃんをマイルドにした感じですね(笑)。
ノラ経験があるかないかの違いでしょうか、甘え方が上手です!

by 道ばた猫 2021-03-05 13:36