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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2019年07月30日

猫の気配

「猫さんが、います?」
こらえきれずに、取材の途中で、そう尋ねてしまった私。

この夏の初め、猫とは全く関係ない「椅子」の取材で、八ヶ岳南麓にお住いの、画家でエッセイストの平野恵理子さんを訪ねたときのことでした。
玄関を入ったときから「猫の気配」がありました。

物陰に小さなお皿。壁に猫の絵。猫の写真。
そして目の前に、いかにも猫に好かれそうな、平野さんのやさしい笑顔。
ぶしつけな私の問いに、平野さんは、いっそうやさしい笑顔に。
「はい、横浜から連れてきた猫が、屋根裏で、いま、息をひそめています。お客様が大の苦手で、お帰りになるまでいつもずーっと気配を消すんです。よくお分かりになりましたね」

私に気配を見破られてしまったのは、ドレミちゃんでした。

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これはかなりの猫好きと思ったのか、平野さんは、
椅子の取材後、「ドレミを紹介しますね~」と、梯子を上った先の屋根裏に案内してくださったのです。

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おお、スベスベマンジュウガニのような(最高にほめてます!)、私好みのお顔の輪郭!
ドラミちゃんならぬ、ドレミちゃん。なんてかわいい名前。なんてかわいい猫さん。

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雌猫にしてはかなりの大きさと、人見知りとのギャップが、たまりません。


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ドレミちゃんは、横浜の保護猫で、平野さんと一緒に、2年前にこの緑に囲まれた地に引っ越してきました。
「たぶん、ノラのお母さんから生まれた子だと思うんですが、赤ちゃんの時、ひとりぼっちでいたそうです。ビビりなのは、さんざん怖い思いをしたせいかな。愛想がなくてすみません」と、平野さん。

でも、そのすれてないところが、ドレミちゃんの大きなチャームポイントです。

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「ドレちゃん、いいお顔で撮ってもらおうね」
「うにゃにゃっ(ヤだってば!)」

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「ドレちゃん、私にも冷たいんです。いつも構いすぎては、『やめてください!』って抗議されてます。それでも、構っちゃう(笑)。でも、夜は一緒に寝てくれるので、とってもしあわせ。いつかは、自分から膝に乗ってくる子にしたるで~!と、思ってます」
どの窓からも、樹々の緑と溢れる陽光がいっぱい。恵理子母さんの愛情もいっぱい。
ドレミちゃんのお城、屋根裏部屋からは、青空と、いろんな鳥たちが眺められ、楽しき山荘暮らしのようです。

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ドレミちゃんは完全室内飼いですが、一度だけ外に脱出して2時間帰ってこず、お母さんを泣かせたことがありました。
庭を横切った猫を見つけ、するりと戸のすき間から出て猛然とどこまでも追いかけていってしまったのです。
「いくら待っても帰ってこない。探し回った末に、チラシを作って、泣きながらプリントしていたら、どこかから「にゃあん」という声が。隣のベランダにいるドレミを、無事捕獲できました! あの時は、帰ってこなかったらどうしようと、生きた心地がしませんでした」

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そんなお話を伺っていると、いつの間にか、階下に降りて、私のリュック周りの匂いをチェックしているドレミちゃんでした。

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さて、この時の取材で、平野さんには、北欧の名椅子「Yチェア」や、松本民芸家具の椅子やら、アフリカのナイロン編みの椅子やらら、素敵な椅子をたくさん見せていただきました。

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印象に残ったのが、この言葉。
「この家にあるものは、どんな小さなものも、私が好きで連れてきたもの。『ここに来てくれてありがとう。これから仲良く暮らそうね』と毎日話しかけています」

ドレミちゃんは、その「いとおしきものたち」の中でも最たるものなのでしょうね。
「横浜や東京に行くこともよくありますが、ドレミがいるので、すぐに帰ります」という平野さん。

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「ドレミったら、緊迫感のある顔しかお見せできなくて、ごめんなさいね」と、見送ってくださった平野さん。
幻の猫と会えて、ラッキーでした!

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愛され猫はね、どんなに気配を消しても、わかっちゃうんだよ。ドレミちゃん。
山荘暮らしを、大好きな人とずっとずっと元気いっぱい楽しんでね。
そして、膝に乗りたくなったときは、ドーンと乗っていくんだよ~



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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

スベスベマンジュウガニのような…のフレーズで声を出して笑ってしまいました アハッ(^^♪
お顔もおメメも体つきも?コロンとしてて可愛い~ドレミちゃん
うんとうんと愛されてるのが伝わってきました。
ドレミちゃんがお外に出ちゃうと恵理子お母さんは生きた心地がしないくらい心配(私も血の気が引いた経験を数回…)しちゃうからもう何処へも行かないでね
ドレミちゃんの一番お気に入りのチェアはどれかしら?恵理子お母さんのお膝の上が一番になるといいな!

by マム 2019-07-30 16:37

猫以外の

お し ご と

も !

していたのか(^_^;)

「一度だけ外に脱出して2時間帰ってこず」

うちの奴め!
暑い時期は
2時間くらいしか家の中にいないぞ
ほとんど休憩&食事休憩場となってる
我が家。


昨日なんか一度も見てない
家の中の餌はきっちりなくなっとるだ。。。

今日は朝出勤の時、家の前の自然公園の中を
疾走している姿を見たが(^_^;)


ドレは良い子にゃん!

by ドラ猫マスター 2019-07-30 17:26

ドレミちゃん 
幻の猫に会えたなんて
さすがまりこさん!
家の子も最初の頃はこんな顔してたなあ····
今や腹出して寝てますが(^_^;)
ドレミちゃんも腹出して寝るように鳴るいいですね(笑)

by ぽん子 2019-07-30 17:54

ドレミちゃん、はにかみつつも「アンタ、ただの猫好きじゃないわね」って興味津々の顔をしてますね。

by 田舎の猫 2019-07-30 18:57

ドレミちゃん、まんまるお目々でちょっと緊張してるのかな?いつかお母さんの膝の上で寛いだ表情が見られると良いですね。

by シーマン 2019-07-30 21:06

ドレミちゃん、名前もお顔もなんて可愛いんでしょう。クールな性格も堪らないです。ちゃちゃことぽんずはひたすらにフレンドリーでスリスリ、ゴロンゴロンしまくりですが、クールな子もいいですね。

by ふみちゃん 2019-07-30 22:26

お客への態度がうちと全く一緒です(笑)。うちのコも、2階で気配を消してます(^-^;
 
平野恵理子さんて、読売家庭版で連載されている方ですよね?優しいイラストと、丁寧な暮らしぶりが印象的で、毎月楽しみにしているコーナーです。猫と暮らされているのは知っていましたが、写真で見ると親近感湧きます✨ドレミちゃん、可愛いですね~。
スベスベマンジュウガニ、半世紀近く生きてきて、初めて聞きました!

by さび茶風 2019-07-31 00:31

出た!スベスベマンジュウガニ!
私も思わず声出してプッ!と( *´艸`)
ドレミちゃんを見てホントだ!と笑っちゃいました。
茉莉子さん例えがう上手すぎ。(^o^)

それにしてもドレミちゃんウチのりんこりんと似すぎ?!
キジシロのハチワレできれいなシンメトリーの泥棒ひげ模様の鼻周り!
手足に白い靴下履いてるところも。
そしてツンツンデレ?な性格もね。
知らない人が来たらまず隠れるよね。(笑)
そんな時、猫います?って言われたらうれしくなって喜んで紹介しちゃう恵理子母さんの気持ちよくわかるわ~。私も最近そんな体験したばっかなんで。

ウチのりんこりんも10年近くいっしょに暮らしてるけどまともな抱っこは一回も無いと思う。
でもいつも夜は近くで寝てくれるよん。
近く止まりなんだけどね。(笑)
でも最近甘えたさん度が増して撫でろ要求が激しく1日に何度も催促される。(実はうれしいのかもね)


ドラ猫マスターさんナイス!
私も同じこと思いました。茉莉子さん猫さま絡み以外のお仕事もされてたんだって。かなりビックリ!(失礼極まりすみません。(^^;)

ドラ猫マスターさんの猫さまが朝出勤時に公園の中を疾走してたっていう光景にウルッときちゃいました。なんかドラ猫マスターさんの愛を感じちゃったんだよね。

今回も触れたいこと多すぎ。
また後にコメントしちゃおうかしらん_(^^;)ゞ
ドレミちゃんの名前の由来も気になるしねぇ。

by 才蔵 2019-07-31 06:00

可愛い可愛い!!ドレミちゃん♪佐竹さんのことを用心深くみていてでもなにもなにか感じとったようにジーっとみている表情がたまりません!「………タダ者でない……もしかして……あなたがあの佐竹さん?!」と猫はとーっても賢いからわかったのかも~(*^_^*)佐竹さんの猫センサーもさすがです♪
小さなノラのときは怖くて寂しい思いをきっとしていたでしょうドレミちゃん、今はたくさんの愛情で幸せいっぱいで良かったね(^-^)うれしいです!

by とも 2019-07-31 07:33

さすが茉莉子さんですね。うちのゆいぽんも来客があると、じっと気配を消して姿現さず幻の猫と言われています。(笑)是非是非茉莉子さんに会って頂きたいですねえ♡ノラだったちー子母さんの教えでしょうか家人にしか心を許しません。ドラミちゃんの表情、行動、手に取るようにわかります。(笑)それがまたますます可愛くてたまらないですね。「寄り添う猫」拝読させていただきました。とっても心に残ります。

by ぺったんの母 2019-07-31 10:31

>マムさん

うちの猫のお気に入りの椅子は、私の仕事椅子なので、私は前の部分にほんの少し腰かけさせてもらってるので、すごくお尻が痛くなります(笑)。2つ並べても、私の椅子に移って来るのはなぜ?

by 道ばた猫 2019-07-31 12:42

>ドラ猫マスターさん

猫たちの休憩所となっているマスターさんち。つーさんちみたいですね。(我が理想。いい環境あってこそ) 目の前を疾走!! 疾走する猫なんて、今どき珍しい!

by 道ばた猫 2019-07-31 12:48

>ぽん子さん

お客嫌いがお客平気になるのは、まずないでしょうねえ。
(うちにもいる)飼い主としては「よしよし、よその人怖いねえ」と、ちょっぴりしあわせだったりして(笑)

by 道ばた猫 2019-07-31 12:51

>田舎の猫さん

ドレミちゃん、瞳孔を開きっぱなしにさせちゃって、ごめんなさい。
きっと、その晩は、お母さんにくっついてぐっすり寝たことと思います(笑)。

by 道ばた猫 2019-07-31 12:54

>シーマンさん

猫さんによっては、どけてもどけても、膝の上に乗ってくる猫もいて・・・どうも、オス猫の方が甘えん坊が多い気がします。うちのコは、どけてもどけても、胸の上に覆いかぶさってきて、金縛りになります。

by 道ばた猫 2019-07-31 12:57

>ふみちゃんさん

そうですそうです。ベタベタさんもゴロゴロさんも可愛いですし、おずおずさんも可愛いですし、知らんぷりさんもシャアシャアさんも可愛いです。要するに、猫にはどんな態度をされても可愛いです!

by 道ばた猫 2019-07-31 13:00

>さび茶風さん

私は、はるか昔「ドラえもん」の中で、スベスベマンジュウガニを知り、架空のカニかと思ってたら、房総の海辺にふつうにいて、感激したものです。ただし、毒ありなので、食べられません!

by 道ばた猫 2019-07-31 13:03

>才蔵さん

手のひらにひっかき傷のある人にも「猫、います?」と聞いて、大当たりのことがありましたっけ。
私の本業は人間インタビューなどのノンフィクションで、取材後の町歩きで、たくさんの猫と巡り合っていた延長で猫の仕事が増えました。猫関係は、仕事というより(もちろん、一生懸命書きますが)「猫の味方をしたい」という気持ちが強いので、猫収入は、個人保護主さんなど猫さんがシアワセになるためにがんばっている方に還元しています。

by 道ばた猫 2019-07-31 13:11

>ともさん

ほんとに、見返してみたら、ドレミちゃん、すべて真ん丸お目目で、かなりビビらせちゃったみたいです。だけど、会えてうれしい!って気持ちだけは伝わったかな・・・。

by 道ばた猫 2019-07-31 13:15

>ぺったんのお母さま

以前、コメント欄にちぃこさんが「シャアシャア言う子は、ノラ母さんの教えを今もしっかり守っている賢い子」というようなことを書いてくださって、たしかに!と思いました。ゆいぽんもドレミちゃんも賢い子!

by 道ばた猫 2019-07-31 13:18

賢い子!なんてほめて頂き光栄ですが・・・ちなみにあまりのあんぽんたんさに呆れて、名前を「ゆい」改め「ゆいぽん」にした経緯もあり、母として恥ずかしいような複雑な思い・・・(笑)
もちろん、ドレミちゃんは賢い子です!

by ぺったんの母 2019-07-31 14:18

茉莉子さんの本業はインタビュアーでしたか。
それで全国津津浦浦なところに出没する機会があるのですね。そこで猫さまたちに出会う機会もあるのですね。

私も手や腕に引っ掻き傷を見つけて猫友になった方が何人かいます。今ドキ猫以外で引っ掻き傷をおってる人ってそうそういないもんね。f(^^;


スベスベマンジュウガニのこと
触れちゃおうかしらん。

私はかつて自然観察指導員をやってて。。。(いかめしい名前ですが要は自然観察会の運営に携わる何でも屋。)
私はボランティアでやってたけどプロの友人も何人かいて、そいつらに都合よく呼ばれていろんな所に出没してました。

夏のこの時期の自然観察会で大人気なのが磯遊び。海水浴しか知らない人が磯遊びの面白さを
知った時のはまりっぷりときたら、、、ヽ(^。^)ノ

関東以南の磯遊びで必ずと言っていいほど出没するのがスベスベマンジュウガニ!
甲羅がスベスベでマンジュウみたいに真ん中が少し盛り上がってるのが名前の由来。
インパクトある名前なんで水族館とかでもけっこう人だかりするんだよね?
スベスベ○○っていう名前の生き物はけっこういてカニ、エビ、ヤドカリをスベスベ似た者三兄弟と呼んでました。(磯遊び自然観察会での鉄板ネタのひとつ。f(^^;))

そうそう、茉莉子さんも触れてますがスベスベマンジュウガニはその辺によくいるけどテトロドトキシンというフグ毒を持ってたりするので絶対に食べてはいけません。
毒を吐いたりすることは無いので普通に手に持ったりするのは全然OK。
磯でよく猫さまがカニをほじくって遊んでる光景を目にするけど食べないでね~とひそかに願うのです。

今回も長々すんませんねぇ

by 才蔵 2019-08-02 05:28

>ぺったんのお母さま

小田原漁港には、「あん」「ぽん」「たん」きょうだいがいましたっけ(笑)。それも可愛さ余っての命名だったようですが.ゆいぽんもかわいらしい名前!

by 道ばた猫 2019-08-03 01:38

>才蔵さん

そうだったんですか!自然観察指導を。 私も子どものとき川遊び、磯遊び、野遊び、森遊びが好きで好きで。今も、好きですが…前世が猫だったのやらカニだったのやら虫だったのやら(笑)。

by 道ばた猫 2019-08-03 01:45

>みなさま

平野恵理子さんの個展「高原暮らし 春・夏・秋・冬」が、山梨県北杜市小淵沢町の「くんぺい童話館」で、8月25日まで開かれています。期間中無休。金・土・日曜日は、平野さん在廊だそうです。夏休みに小淵沢方面へいらっしゃる方は、ぜひ!

by 道ばた猫 2019-08-03 01:50