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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2019年04月23日

町角で出会った「たまちゃん」

先週ご紹介した、むぎちゃんぽんちゃん取材の帰り道、小さな坂道の曲がり角で、こんな猫さんとぱったり出会いました。

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真ん丸な目に鼻周りの模様がチャーミングなその猫は、古書店のガラス窓の向こうから、通りを飽かず眺めていました。
私は、どんなに遠くても物陰でも、猫の形をしたものを見逃しません(笑)。
「おや!」と私が立ち止まると、今度は私を興味しんしんで見つめました。隠れるふりをすると、身を乗り出して探します。

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こんな出会いがあるから、町歩きはやめられません。
私はネット検索をしないので、人とも猫とも思いがけない出会いをした時のときめきはとても新鮮。
物語も、写真も、その光景に出会うことから始まる、というのが持論です。

「待ってて、今店に入るから」
そう呼びかけて、さっそく店の入り口に回ります。
こんな貼り紙がありました。

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おお、店内は、レトロでとってもいい感じ!
古本、ランプ、掛け時計、昔のおもちゃや小道具、レコードなどで埋め尽くされています。

「すみません、いま、そこの窓辺で、猫さんと目があったんですが・・・店内でその子の写真を撮らせてはいただけないでしょうか」
人見知りなんですが、猫に関しては、我を忘れてしまう私。

「いいですよ」
店番をなさっていたご夫妻が、柔和な笑顔を向けてくださいました。
「たいていはレジ周りにいるんだけど、きょうは急にあったかくなったから、窓辺が気持ちよかったんでしょう」とのこと。

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名前は、たまちゃん。女の子です。
まだ小さいころ、店の横にちょこんと座って、ご飯をもらうのを待っていたのだそうな。
そのうち、店の中にも入ってくるようになり、今は自宅から店にご夫妻と通勤する完全室内猫となりました。

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たまちゃんが来る前までは、「にゃりこ」という黒猫が、店番をしてたのですが、たまちゃんとウマがあわず、にゃりこさんのほうは、お店には出ない自宅猫となりました。
このにゃりこさんも、このへんのノラでしたが、ある日、自分からお店に入ってきたそうです。

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「にゃりこは、今ではすっかり大きな猫になって、オス猫と間違われます」と、ご主人。

「この辺は、まだノラ猫が多いんですか」と尋ねると、
「お店を開いた10年前は、けっこういましたよ。手なずけて店に入れようとした矢先に交通事故で亡くなった『にゃりすけ』という猫や、みんなに可愛がられていたけど、東日本大震災の年に行方不明になってしまった『ぐれこ』という猫もいました。ボランティアの方たちが手術をしてくれて、いまではほとんどノラの姿は見かけなくなりましたね」
そんな町猫の歴史をお聞きすると、いっそうたまちゃんがいとしくなります。

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たまちゃんに会いに来るお客さんもいっぱい。
たまちゃんと相思相愛の女の子。
「たまちゃ~~ん」と会いに来て、「たまちゃ~~ん、またね~」と名残惜しげに帰っていくおじさん。
「猫が外から見えたから」と、ふらりと入ってくる初めての客。

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ただし、店内で、遭遇しても、たまちゃんはチョロチョロと逃げ回ります。
なぜか、レジ台の中にいると、デーンと落ち着いて接待するのだとか。

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ことにお気に入りの場所は、レジの上。

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たまちゃんをやさしく見やりながら、ご夫妻は言います。
「たまは、今は店員見習い中なんですが、どうも社長職を狙っているようなんです」

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そうか、たまちゃん、ここはノラだったたまちゃんが「ここに決めた!」お城なんだね。
お父さんとお母さんのお手伝いをしっかりして、お客さんをどんどん呼び込んでね。

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たまちゃんの爪とぎ用に、椅子に毛糸が巻き付けてあるのが、なんとも愛情を感じます。

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「また、遊びに来てね」と、たまちゃん。

「トルバ堂」という店の名は、フランス語の「トルバドゥール(吟遊詩人)」からとった名だそうです。

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「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

nekodatte200-290.jpg
猫だって......。
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

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里山の子、さっちゃん
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

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しあわせになった猫 しあわせをくれた猫
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

人見知りww
それはないない(^_^;)
一体このブログだけで

な ん に ん

と!

会話したのですら??


おいらは
「コミュ障!!!」
なのでネコと劇団ひとり会話は
得意中の得意だが

にんげん様との会話はどうもダメなのねんよ(^_^;)

あれ?
そのわりにはネコボランティア活動してるなあ?
あれれ??(^_^;)(^_^;)


「にゃりこ」

うーん久々にヒットしたぞ
このネーミング(^_^;)
すごいセンスだによ!!

たまは金銭管理が得意そうなので
まずは
経理部長
に任命してはどうかの?

連休明けだからあと二週間後かあ

「衝撃の顔デカオトコ」

なにしろゴンレベルのネコらしいし

早くみてえ~(^_^;)

by ドラ猫マスター 2019-04-23 17:05

近所にこんな本屋さんがあったら猫ちゃん目当てにちょくちょく通っちゃうなぁ。羨ましいです。たまちゃん、社長目指して頑張ってね!

by シーマン 2019-04-23 20:45

久しぶりに、更新当日にこちらに来れました^^
「その光景に出会うことから始まる」という言葉に、稲妻が走るようにシビれてしまった!
常にスマホ片手に、なんでもネット検索するイマドキの光景に疲れているのかもしれません…

思いがけない出会い、それ以上のときめきはないですよね〜まさに道ばた猫日記✨

レトロな店内に溶け込んだ、愛嬌たっぷりの可愛らしいたまちゃん♡見守るご夫婦と、あたたかい街の方々との交流がずっと続きますように。
お店のお買物袋がまた、ご夫婦の猫への愛情があふれ出ていてすてき。
また行ってみたいお店が増えちゃったな〜(*^^*)

by kimiko 2019-04-23 22:27

たまちゃん、とってもキュートですね!
会いに行きたいけど、遠いなあ。いつか、きっと。

by 黒白猫マニア 2019-04-23 23:07

たまちゃん、いい味にじみ出てるねぇ~。
一瞬、ハナでかさん?と思わせるユニークな模様気に入りました。(笑)

「また、遊びに来てね」の表情、フォルムにノックアウトされてしまいました。
かわい過ぎるやん~♪


>ドラ猫マスターさん
ところで、ドラ猫マスターさん鋭い。
茉莉子さんのさりげない「人見知り」告白に突っ込み入れるのさすがです。(笑)
私も同感です。
でも私も茉莉子さんと同類かも?なんでわかる気もします。
猫さまやワンちゃんを目の前にすると知らない人でも臆せず話しできちゃうんですよね。

道ばた猫日記をひとめぐりしてきました。
道ばた猫日記のコメント欄でドラ猫マスターさんのコメントはとてもユニークで面白いです。
いつしか知らないうちに記事を読む度にドラ猫マスターさんはどんなことを?と期待してる私が!Σ(O_O;)
とても「コミュ障!!!」とは思えません。
これからもコメント楽しみにしてます(^-^)/

by 才蔵 2019-04-24 07:33

たまちゃん。可愛い子がまたここにも!!
佐竹さんの猫感知アンテナ、すごいです!
まさに招き猫さんですね!可愛がられているのがよくわかりました(*^_^*)

by とも 2019-04-24 07:50

ニャハハ♥
佐竹さんのにゃんこセンサーったら
ピカイチですニャン(=^_^=)
ンでもって、お目々まんまる⭕
お顔まんまる⭕からだもまるまる⭕
う~む…たしかにたまちゃんニャ~(^・^)

by にあ 2019-04-24 17:03

一度見たら忘れられなくなりそうな、個性的なお顔ですね!こんな猫さんを見かけたら、思わず話しかけたくなります~。(どんな猫さんでも、かな)
毛糸をぐるぐる巻いて爪研ぎに、なんて、たまちゃん愛されてますね。私も作ってみようかな♪

by さび茶風 2019-04-24 22:54

>ドラ猫マスターさん

だからあ(笑)、猫および、猫を愛する人となら臆せず話せるんです。
子供の時から今に至るまで、客が並ばず我先に注文する店頭では、なかなかお店の人に声がかけられず、最後になってやっと声をかけてもらえます(笑)。

by 道ばた猫 2019-04-25 01:56

>シーマンさん

私も。トルバ堂さんの本は、とても状態がよく、絵本もたくさんあったので、近くにあったら、通います! たまちゃんとも友達になりたいし。

by 道ばた猫 2019-04-25 01:59

>そうなんですよ~。ネットで有名猫を検索して会いに行く人が多いけど、やっぱり、ふと出会った「猫のいる風景」が一番心に残ります。このブログも「初出の猫さん」紹介を心掛けていますが、楽しいです!

by 道ばた猫 2019-04-25 02:02

あ、上のコメントはkimikoさんへの返しです。書き忘れました、ごめんなさい。

by 道ばた猫 2019-04-25 02:04

>白黒マニアさん

古書店と猫はよく似合いますね。町の喫茶店や、骨董屋さんや、銭湯、ギャラリーとも。
思いがけないところでは、レコード店や生地屋さんやケーキ屋さんやボクシングジムでも会いましたっけ。

by 道ばた猫 2019-04-25 02:11

>才蔵さん

はい、ドラ猫マスターさんのコメントは、ツッコミながらやさしくて、楽しみです。
どうぞ、皆さんも、コメント欄で、どんどん楽しい猫トークを繰り広げてください!

by 道ばた猫 2019-04-25 02:14

>ともさん

車で走ってても、「あ、そこの路地の奥に猫がいた」「屋根で猫が日向ぼっこしてる」なんて見つけちゃうんで、驚かれるんですよ。これも才能? いや、ただの年季ですね(笑)

by 道ばた猫 2019-04-25 02:18

>にあさん

たしかに、たまちゃんは、たまちゃんだ~。
「にゃりすけ」「にゃりこ」の線で行くと「にゃりみ」かなと思うけど。それだと、先住にゃりこさんが混乱してしまいますね。

by 道ばた猫 2019-04-25 02:25

>さび茶風さん

動物学的には、白黒猫は強いんですよね。ボス猫になる確率も高いと聞いたことがあります。鼻が大きいのが強いらしいから、黒い模様で鼻が大きく見えるたまちゃんは、最強女子?

by 道ばた猫 2019-04-25 02:29

たまと相思相愛(?!)の女の子です。たまのお友達です(^^)笑 朝駅に向かう時『たまいってきます』、夜の帰り道『たまただいま』、時間がある時には、たまや店主のお二人とお話したくてつい長居してしまいます。帰宅が遅い私にとってトルバ堂のお店の明かりはホッとさせてくれます。日々の疲れを癒してくれる大好きな空間です。たまのかわいい写真やトルバ堂の魅力溢れる記事をありがとうございます(^^) たまは大切なお友達です!

by わかにゃん 2019-04-27 01:48

>わかにゃんさん

店主から「女の子」とお聞きして、何となく小学生を思い浮かべていました(笑)。若い女性だったんですね。たまちゃんと仲良し。いいなあ~。 今度夜のトルバ堂に入ってみたいです。

by 道ばた猫 2019-04-27 09:38

>皆さま

環境省主導の管理計画で、議論が沸き起こっている、希少種クロウサギを捕食すると言われる奄美大島の「ノネコ」。人間を知らない野生動物というと、歯をむき出すようなイメージを持つ方がほとんどと思いますが……。朝日新聞WEBのsippoで連載している「猫のいる風景」に、ノネコのことを書きました。ぜひご覧になって、ノネコの置かれている状況を知っていただければ嬉しいです。

by 道ばた猫 2019-04-27 09:44