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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2016年05月24日

命をつなぐ・・・その①「クロとみよちゃん」

由子(よしこ)さんは、2匹のワケアリ保護猫と共に、暮らしています。
4年半前にやってきたのが、オス猫のクロくん。

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この上ないビビリで、来客を察知するや、押入れに逃げ込んで気配を消して固まっていたところを由子さんに引っ張り出されて、この表情。「寄るな~寄るな~」と、一応の威嚇です。ご挨拶がすんだら、すぐに押入れの奥へ。

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「いつまでたっても人間を怖がるなんて、バッカじゃないの」と言いたげにクールにじっと見ているのは、みよちゃん。濃い茶白の、17歳半のおばあちゃんですが、3か月前にやってきました。樹木希林さんみたいな風格と眼力です。

2匹とも、いのちの瀬戸際を救われ、ここにやってきました。
由子さんは、学生の時、友人から託された保護猫を飼ったのが、猫との暮らしの始まりだといいます。病のため3年で亡くしたときには、「人生でいちばん泣いた」とか。
2匹目のルビも保護猫でした。一時期は10キロもあった性格のよい大猫で、20歳近くまで生きました。

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この写真は、亡くなる年のルビ。ガンで激ヤセしたとはいえ、まだまだふっくらさんです。
いよいよと思われたとき、可愛がってもらった友人たちを集め、「生前葬」をしました。みんなに撫でてもらったあと、ふーっと大きな息をついての大往生でした。
「もう猫は飼うまい」と思っていた由子さんでしたが・・・。

由子さんの仕事場は、渋谷川の真上。川岸には、餌は周辺の人にもらっているものの人慣れしていないノラたちが住みついています。排水管に逃げ込むので、地区の愛護団体の捕獲手術も全頭に及んでいません。毎年のように子猫が護岸から落ちて、助けられたり、助からなかったり。川べりは50センチほどの幅しかなく、降りていくちゃんとしたはしごもないのです。

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ルビを見送った年も、黒猫と白猫のきょうだい子猫が2匹下に落ち、毎日泣きながら、断崖を登ってはすべり落ち、を繰り返していました。
見かねた由子さんは消防車を呼んだのですが、子猫は排水管に入りこんで捕まらなかったため、引き揚げていきました。渋谷区の愛護団体の方に捕獲器を借りても失敗。
バリバリのノラ母さんから生まれたバリバリのノラっこなのでした。
「母さん猫が助けにいかないのが不思議でしたが・・・ともかくいのちをつなげようと、子猫が登れそうな縄梯子を設置したり、こわごわと作業用はしごを降りて毎日餌や水をあげてました。橋をまたいで川に下りようとした時、自殺者と間違われて、おばあさんに後ろから「待って!」と羽交い絞めされたことも」と、由子さん。
付近の焼き鳥屋さんのバイトの子たちも、網を手にパトロール。ホームレスのおじさんも、デパートの食品売り場からもらってきたすしネタを上から落としてやるなど、たくさんの人たちが、小さな2つのいのちがつながるようハラハラ見守っていたのでした。

そして、何日目かの早朝、餌やりに行くと、朝帰り風の若者ふたりが橋の上から川をのぞき込み、「子猫が1匹溺れてる!」と。
すぐにみんなではしごを降り助けようとしましたが、クロ子猫は、人間から逃げてより深みのほうへ。
「首根っこを捕まえて! 片手で! 母猫がくわえるようにしっかり!」
由子さんの飛ばした指令を若者は忠実に実行。ついに捕獲できました。

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懐かせて手術をしてから里親探しを、と思っていた由子さんでしたが、家庭内ノラ状態が延々続き、半年も気配を消して姿を見せませんでした。

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帰宅して、いくら探してもいないとき、風呂場の湯椅子の穴から、怖ーい目で覗いていたことも。
ちょっとだけなついてきたきっかけは去勢手術でした。動物病院から帰ってきたクロくん、「あんなに怖い所よりは、ここのほうがまし」と思ったようなのです。

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クロくんがやってきて4年後の今年はじめ。あまりにも社会性のないクロのためにもう一匹、と考えた由子さんのもとに、里親探しの情報が。
「動物生命尊重の会(アリスの会)」の会員の方からでした。
飼い主のおばあちゃまが亡くなって、家が取り壊しになるため、行き場のない高齢猫がいるというのです。それがみよちゃんでした。
みよちゃんは、やってきたときから、眼力で、クロを圧倒。瞬時に子分にしてしまいました。

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2匹でよくひなたぼっこをする平和な関係。みよちゃんは、ボス猫のならいで自分のウンチに砂をかけませんが、クロくんは、みよちゃんの始末をせっせとします。
2匹とも、リスやカモたちが動き回る「猫の好きな動画」が大好きで、食いつくように眺めます。
由子さんは、卓球が趣味ですが、試合の動画を見ると、クロくんは、球をキャッチしようと夢中になるそうです。

1代目、2代目の猫との暮らしで「ネコとは人懐こく、のんびりおおらか」と思い込んでいた由子さんのもとに、縁あってやってきたのは、衝撃的なタイプの2匹。だからこそ、猫はおもしろい!!!
やがてくる定年後の由子さんの夢は、どこか田舎で、猫屋敷と卓球所を作ること。みよちゃんのように、飼い主に遺された猫を、自分のできる範囲で引き取ることができたら、と考えているそうです。

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まだ怖いけど、ちょっと見知らぬ来客になれてきたクロくん。よく見ると、なかなかの男前です。
あ、クロくんと一緒に落ちていた白猫ちゃんのこと、皆さん、心配ですよね。
何と、白ちゃんのほうはほどなく自力で岸壁を登って生還。その後、人馴れすることなく、渋谷川ノラ社会の女ボスになって、今も元気でいるそうです。

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みよちゃんは、ひだまりで、うとうと。
あれ、みよちゃんのしっぽ、尋常でない猫又になりかけてやしませんか? 

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※ 今週から4回シリーズで、フェリシモ猫基金の宛先のひとつである「動物生命尊重の会(アリスの会)」ゆかりの保護猫たちを紹介していきます。
(アリスの会を立ち上げた金木洋子さんとは、12年前、女性雑誌のヒューマンドキュメントの取材を通して知り合いました。
ご主人の仕事を手伝う一主婦だった金木さんの「不用な命など一つもない。みんなが自分のできることを」というメッセージは、私の胸にも「自分のできることを」という小さな種をまきました)

※ 道ばた猫日記「セラピー猫ニケ」を読んでくださったTBSラジオの放送作家の方が、ニケの飼い主の墨田由梨さんを取材してラジオ番組になりました。
明後日26日、14時から放送の「ザ・ゴールデン・ヒストリー」です。お時間ある方はぜひお聞きください~


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

そうです。生粋の野良さんは、人間を敵とみなして、余程のことがない限り寄って来ません。我が家のサザエさん親子も子猫達は一度も近づいてくれませんでした。その子達は独立するまでそのままでした。お母さんのサザエさんは、最近ようやくなついてきてくれましたが、人間に撫でられたことがないのか、触るのは断固拒否されます。でもこのそっけなさがまた可愛いです。何よりそらを亡くした悲しみをどんなに癒してくれていることか。本当に感謝しています。

by ふみちゃん 2016-05-24 20:02

田原さんの愛しい想いが伝わりました。彼女には卓球を通じてお世話になっています。我が家も迷い込んだネコや拾ったネコ病気持ちのネコと続いているので、この愛しさは半端ないです。この共同生活を見守りたいです。

by 大高玲子 2016-05-24 21:39

シャアーと言ってるクロくんを抱いてる、由子さんの優しい笑顔が、愛情たっぷりでこちらまで幸せな気分になりました。
うちの子も、いつまでたっても人間恐怖症ですが、私はそういう子をいつまでもノラ母さんの言い付けを守っている賢い子だと思っています。そうだよね、クロくん(^^)
みよちゃんも、さすがの貫禄!
可愛いコンビですね。

by ちぃこ 2016-05-24 23:04

猫さんの性格もさまざまですね。目をまんまるにして佐竹さんを見ているクロくんかわいい。きれいな目ですね。みよちゃんの猫又への進化が楽しみです。
ルビさんの幸せなお顔。私もうちの子にこんな顔で暮らしてほしいです。まずは由子さんの笑顔を見習います

by さりゅ 2016-05-25 08:21

マリコさん いつもありがとうがざいます。クロくんもみよちゃんも味のあるにゃんこでとても可愛いいです。我が家の9年連れ添っているチイ子ファミリーと同じ匂いがします。うちは子供たちはなついているけどチイ子母さんがかたくなでいまだに抱いたことがないのです。寂しい気もするけど彼女なりに甘えようとする姿がとても愛おしいのです。4年前にぺったんという迷いネコがファミリーになり、そのせいか少しずつ彼女の気持ちが変化してきています。チイ子とぺったんとてもラブラブなのです。私も焦らずいつかチイ子を抱っこすることができるよう頑張ります!

by ぺったんの母 2016-05-25 15:34

クロ、なんという化け猫顔(笑)
二人っきりになると人一倍甘えたさんなのに、こんな顔では信じてもらえませんね!
クロを保護したときは、「保護した猫が懐いてくれない(悲)」のではなく、「家に帰ったらワイルドな野良猫がいる!(嬉)」と思うようにしていました。
みよちゃんも若い子分を得て、日々貫禄(?)を増しています。
佐竹さん、素敵なお写真と記事をありがとうございました~

by 由子 2016-05-25 17:51

クロ、なんという化け猫顔(笑)
二人っきりになると人一倍甘えたさんなのに、こんな顔では信じてもらえませんね!
クロを保護したときは、「保護した猫が懐いてくれない(悲)」のではなく、「家に帰ったらワイルドな野良猫がいる!(嬉)」と思うようにしていました。
みよちゃんも若い子分を得て、日々貫禄(?)を増しています。
佐竹さん、素敵なお写真と記事をありがとうございました~

by 由子 2016-05-25 17:57

>ふみちゃんさん

生粋のノラ母さんは、わが子に、生きのびるための野良魂を叩きこみますからね。そんな子が心を開くには時間がかかります。遠回りしかできない子は格別かわいくいじらしいですよね。

by 道ばた猫 2016-05-25 22:37

>玲子さん

いろんなワケアリのハンパなく愛しい子たちとの共同生活。ウチとおんなじです(笑)。
玲子さんちの猫さんたちも取材させてもらいたいなあ~

by 道ばた猫 2016-05-25 22:44

>ちぃこさん

同感です。クロくんは、ノラ母さんの「ニンゲンを近寄らせるな」の鉄の教えをいまも忘れないんだと思います。で、今では、由子さんは「ニンゲン」というより「ネコ」の分類に入れちゃって甘えてるんだと思うのです~

by 道ばた猫 2016-05-25 22:53

>さりゅさん

はい、猫には学校での集団教育がないから、それはもう個性的に育つのでは(笑)?
クロくんのシャー顔も、みよちゃんの達観顔も、由子さんの笑顔も魅力的でした!

by 道ばた猫 2016-05-25 22:59

>ぺったんのお母さん

チイ子さん、抱っこさせないなんてあっぱれじゃありませんか。ラブラブなぺったんさんがやってきてよかったですね! ところで、ぺったんという名前、なんて魅惑的なんでしょう。

by 道ばた猫 2016-05-25 23:04

>由子さん

ハロウィンになるとよく見かける「威嚇猫」そっくりのクロくんに大笑いしながら撮った写真。由子さんの笑顔が素敵だったので、最初に使わせてもらいました。
ああ、クロくんも、みよちゃんも、わたし好みでした!

by 道ばた猫 2016-05-26 01:04

ぺったんの名前の由来・・・保護した時 しっぽの先っちょがビーバーのようにぺったんこだったので夫が「ぺったんこ」と名付けました。しかしながら動物病院できれいにシャンプーしてもらったところ、きれいなまっすぐな長ーいしっぽになり、ぺったんこ改め「ぺったん」になりました。(笑)

by ぺったんの母 2016-05-26 09:30

>みなさま

記事中の最後にお知らせしました、ザ・ゴールデン・ヒストリーは、TBSラジオではなく、文化放送の間違いでした。聞けなかった方、ごめんなさい! いただいた情報を最終確認せずにお知らせしてしまいました。私も聞き逃して、残念です。

by 道ばた猫 2016-05-26 14:13

>ぺったんのお母さん

ぺったんの名前の由来を教えてくださってありがとうございます~ ご主人、いいセンスですね。
いつか道ばた猫日記で「なんでそんな名前がついてるの?」猫さん特集してみたいです(笑).

by 道ばた猫 2016-05-26 23:49

>ふみちゃんさん
クロに温かいコメントありがとうございます!懐いてくれない猫は、人間に色々なことを気づかせてくれますよね。
懐いてくれなくてもいいから、ストレスなく健康に育って欲しいと思います。
人間よりちょっと寿命が短い猫。次に来る猫は、前の猫からのプレゼントなのかもと思うときがあります。

>大高さん
コメントありがとうございます!
大高さん家の猫にもお会いしたいです。猫って実は自分の話をされるのが大好きですよね?!
また試合のときに猫の写真を見せ合いましょう〜

>ちぃこさん
そうです、賢い子なのです! たとえ掃除機が世の中で一番恐い生物だと思っていても、、、
すぐ寝返っちゃう子よりも信用できるじゃないですか。でもふと、人恋しい顔をしていたりするんですよ。ツンデレちゃんの魅力です。

>さりゅさん
コメントありがとうございます。クロのこの顔写真は、佐竹さんの大傑作だと思っています!
猫の目、じーっと見ているとどこか遠い惑星のように見えたり、「ピータンに似てるなあ、旨そうだなあ」と思ったりします。

>ぺったんちゃんのお母さん
クロとみよちゃんを気に入ってくれてありがとうございます!ラブラブ猫同士、いいですね〜
うちはみよ婆さんが絶好調すぎて、クロはいつも怒られたさんです。超ビビリだから、猫社会ではかなり格下のようです。

>佐竹さん
わわ、クロは当初家庭内ノラだったので性別も分からず、「渋谷川2号元気?」「川に流れてたからジョーだよ、由子さんは丹下のとっつぁん」とか言われていました。いつの間にか「黒いの」「黒鼻さん」「クロ」というベタな名前になってしまったことが悔やまれます。
みよちゃんの本当の名前は「ピン」ちゃんだったそうです。でも、アリスの会の保護猫サイトで仮に付けていただいた名前「みよちゃん」がとても似合っていて可愛いので、うちでは「みよちゃん」として生きることになりました!

みなさま、一週間遅れのまとめコメントになってしまって失礼しました〜

by 由子 2016-05-30 22:09