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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年03月11日

町に生きる猫

 風が冷たいけれど青空の綺麗だった先日、所用がてら初めて歩いた郊外の町は、古い街道が四つもクロスする地形で、路地路地で日向ぼっこをする町猫たちに出会いました。

 不動産屋さんのわきでは、若いキジトラさんが壁倒立の練習をしていました。

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というのは、ウソで、45度首を右に傾けてこの写真を見ていただけたら、実際のキジトラちゃんののびのびポーズになります(笑)。

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すぐそばでは、さび猫さんもごろんごろん。この警戒心のなさは、かなり町の人たちに可愛がられているのでしょう。

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 不動産屋さんわきの、このスペースは、猫たちのくつろぎの場になっているようで、ひなたに猫ベッドや座布団まで置いてあります。

 ちょうど猫たちにごはんをやりに外に出ていた女性に「こんにちわ~ 猫さんたちくつろいでますね~」と声をかけると、とっても感じのいい笑顔が返ってきました。
 不動産屋さんにご夫婦でお勤めのエイコさん。外猫たち3匹の飼い主です。「この前を通る子ども連れ、学生さん、サラリーマン、おじいちゃんおばあちゃん・・・たくさんの町のかたに可愛がっていただいて、この子たち、半ば地域猫なんですよ~」

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 キジトラはチビちゃん、さび猫はジジちゃん、茶トラはチョビ君で、「まだ2歳くらいでたぶんきょうだい」とのことでした。お天気の日は、こうして猫ベッドを表に出してもらっていますが、奥には、暴風雨でもびくともしない頑丈で大きな猫ハウスがあります。

 3匹がエイコさんのもとにやってきたいきさつとは・・・・。
 3年前のこと。ご近所の年配のご夫婦のお宅の庭に10匹ほどの猫が住み着いていて、ごはんをもらったりもらわなかったり(奥様が病気がちのため)でガリガリに痩せているのを知ったエイコさんは可哀そうに思いながらも、心を鬼にして見ないふりをしていたといいます。自分の性格上、中途半端なことはできず、深入りしてしまうことをよく知っていたからです。10匹となれば、無理もありません。

「でも、ある日、見てしまったんです。ゴミをあさっていた2匹が、トウモロコシの芯を取り合っているのを。もう見ないふりはできなくて、その家に朝早くごはんをそっと運ぶようになりました。そのうち、そのお宅に知れて、どうぞどうぞと言っていただきました」

 最初は1匹だけ住み着いたノラが、次々と子を産み、あっという間に10匹になってしまったという話でした。「なんとかしないと」と思っていたエイコさんに、仔猫が4匹生まれてるという情報が、去年の夏、隣の商店のかたから入ります。お隣さんは猫が好きではなく、悪臭やゴミあさりにいつも眉をしかめていたのでした。

 エイコさんは心を決めました。「10匹の去勢避妊手術をさせてください。費用は私が全部出すつもりですが、もし少しでも出していただくお気持ちがあるのなら助かります」と、10匹の住む家にお願いに行ったのです。すると、先方も「ありがとうございます。助かります」と、費用を折半してくださることに。朝ごはんはエイコさんが、夜ごはんはそのお宅で分担することも決めました。(何匹かは事務所わきまで食べにくるようにもなっていました)。

 2か月くらいに育っていた4匹の子猫は事務所に連れ帰り、里親募集開始。3匹は友人たちに貰われていき、一番のビビりだったキジ白の女の子は「リコ」と名付けられて、自宅飼いとなりました。ご自宅には、へその緒がついた状態で捨てられているのを保護した「クウ」と、倉庫生まれで発見時ボロ雑巾みたいだった「ミー」という先住猫、そして、「ハッピー」という犬もいます。

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エイコさんに見せていただいた写真です。通いで事務所わきまでごはんを貰いに来ていた頃のチビ、ジジ、チョビは、まだやせっぽちでした。今では、猫ハウスの中でぬくぬくとしてふっくら体型です。

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 自宅猫となったリコちゃん(8か月)は、先住犬のハッピーと、こんなに仲良し。

 10匹の手術を無事終えて、そのなかでエイコさんになついて後追いをしていた3匹を事務所外飼いの猫として迎え入れることにした時、エイコさんはご近所じゅう挨拶に回りました。「この3匹はうちの猫になりました。終生面倒を見ますので、どうぞよろしく。なにかしでかしたら、すぐにおっしゃってくださいね」と。みなさん率直に知らせてくれるので、植木鉢の土をこぼした、などと聞けば、すぐに新しい土を持って飛んでいくエイコさんです。

「お隣さんは猫が嫌いだったのに、この頃はニコニコ顔で猫たちをのぞいて、『座布団使う?』なんて言ってくださるんですよ~。お父さん手作りの猫じゃらし持参でお父さんといっしょに通って来る小さな女の子もいたりして。そしてね、サラリーマンのかたの猫好きってすごく多いんです(笑)。こうして猫たちが自由にしていても、ご近所さんとはとてもうまくいっています。猫が町にいる風景っていいですよね~。みんな笑顔になるし」

 エイコさんは、ご年配のご夫婦がもしも猫の面倒を見られなくなったときは、今その家の庭に暮らす猫たちもここへ連れてきて、終生面倒を見る決心だそうです。

 エイコさんが最初の一歩の勇気を出さなかったら、10匹のその後は、どうなっていたでしょうか。猫が暮らしやすい町は、ひとも暮らしやすい町。日ごろの交流と気配りが猫好き・猫嫌いの溝を埋めていく。ごろんごろんする3匹を見て、その思いをつよくしました。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

猫のいる町はどこものんびりしていいですよね〜♪エイコさん、優しい方ですね。

by テス 2014-03-11 20:57

猫がのんびりくつろいでいる町は、歩いていて楽しいですよね。ほっこり優しい気持ちになれます。
それにしても、エイコさん、猫を助けたのはもちろんですが、猫嫌いの方をも味方にしてしまうなんて素晴らしいですね!野良ネコたちを見て、助けたくても周りの目を気にして、勇気が出ない人はたくさんいると思いますが、なにも恐れることはなく、こういうふうにしていけばいいんだなぁと思いました。
ついつい、猫好きVS猫嫌いになりがちですが、それでは、猫たちのためには全くならないですものね。

by ちぃこ 2014-03-12 19:23

ねこのかわいさは、猫嫌いの人たちさえ変える力があるんですね。
それにしても、えいこさん、すごいです!
周りの人たちともっともっと猫好きになってくれるとよいですね。

by メイちん 2014-03-13 18:54

>テスさん、ちぃこさん、メイちんさん

 対立は、猫のためにはまったくなりませんものね。猫好き同士がまず手をつなぎ、じわりじわり周囲の理解者を増やして、共生できる世の中にしてことが一番ですね!

by 道ばた猫 2014-03-17 14:09

エイコさん、凄い!!なかなか出来ない事です。思っていてもエイコさんみたいにやれない・・ですよね。ほんとに有難いです。私も通り道で猫が横切ると、あっ、ちゃんと何処かで飼われてる子かな・・と
思ってしまいます。ねこって・・みんな良い子達なんですけどね。

by りんりん 2014-03-17 20:22