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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2012年01月31日

それぞれの出発

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 いかにもきかん気なこのキジトラさんの名は、トマトちゃん。トマトちゃんの瞳が、野生に光っているのはまだ幼かった4年前に、都内の川べりの公園に捨てられて、こころない人たちに苛められたり、犬をけしかけられたりして、人間不信におちいってしまったから。うしろ左足を投げ出して座っているのは、誰かの仕打ちで足を骨折し、手術の跡に、足に金属をいれたから。
 
 足を骨折したとき、トマトちゃんが救いを求めたのは、同じ公園で暮らすホームレスのIさんでした。Iさんの足元にうずくまったトマトちゃんは、Iさんと、公園の猫たちのえさやりグループのひとたちの連携プレーにより、病院に運ばれ、無事手術を受けることができました。
 
 足が不自由になったトマトちゃんは、1回出産をして(足の手術で避妊手術があとまわしになったため)、娘の三毛猫ミーちゃん、黒猫ナスビちゃんとともに、公園でIさんに守られて暮らしました。Iさんのひざの上が大好きで、寒い冬もIさんの寝袋に一緒にもぐりこめば、ぬくぬくでした。いじわるな人間もいっぱいいましたが、いつもIさんが守ってくれました。
 
 私はよく、甘党のIさんに和菓子、トマトちゃんたちにはなまり持参で公園にいき、ベンチでIさんと猫話に興じましたが、通り過ぎていくひとたちの最初の一瞥で、ホームレスやノラ猫に対するひとの心が手に取るように分かったものです。
 
 公園に暮らして6年。昨年春、Iさんは、ホームレス生活を卒業することになりました。工場に仕事が決まり、トマトちゃんたちと一緒に暮らせるアパートがみつかるまで、毎日公園に通ってトマトちゃんたちに会いにくる生活がスタート。
 
 「絶対にぼくは3匹と暮らせるようにするから!」といっていたIさん。でも、猫3匹と暮らせる安いアパートを探すのは、至難のわざでした。
 
 最初に、足の不自由なトマトちゃんが里親のもとにひきとられました。最後まで「僕が必ず迎えにくるから、よそにはやらない」といっていたIさんを、餌やりグループのNさんたちが「トマトちゃんたちは必ず幸せにするから、Iさんは、いまは一生懸命仕事にうちこんで新しい人生を固めて」と説得したそうです。ついで、ミーちゃんにもナスビちゃんにも里親が決まりました。姉妹一緒です。
 
 トマトちゃんは いま、大邸宅暮らしです。里親さんにすっかり なついて、甘えん坊さんだそうです。何の不自由も不安もないでしょう。
 
 でも、ふとこんなことを思います。トマトちゃんの心の奥には、大好きなIさんと一緒に、公園の桜吹雪を受け、夏は木陰で昼寝し、冬は寝袋で一緒に抱き合って寝た、あの「このうえもなく幸せな日々」が大切にしまわれているに違いない、と。
 
 ともあれ、Iさん、トマトちゃん、ミーちゃん、ナスビちゃんの、それぞれの再人生を心から祝福したいと思います。Iさんは、元気に工場に通っているそうです。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

佐竹さんの猫日記には、いつも心をほんわかとさせてもらっています。

ネコには
惜しみなく愛情をそそいで守ってくれる人間がわかるんですよね。
ウチのにゃんこも、
それを感じ取って我が家に来てくれたのならうれしいなあ!

トマトちゃん母娘がIさんを心の奥で大切に思いつづけて
これからの幸せな人生(にゃん生?)を過ごせますように。

by マダム・カネガネーゼ 2012-02-01 11:21

いつも心温まるお話と写真ありがとうございます。
猫大好きな私はどこでも猫を見かけると声をかけてしまうのですが、きっと怪しい人にみえるんだろうな。。。

それぞれの道。
はなればなれになっても、ずっと気持ちはつながっていると思います。

by よーこ 2012-02-02 00:45

泣けました。大好きなIさんと一緒に・・の件で、ぼろぼろ泣けました。

by emmy 2012-02-02 09:25

Iさんの気持ちが本当にうれしいです。
最後まで可愛がって、愛しくて愛しくてたまらなかったんでしょうね。
きっとお仕事頑張ってまた一緒にすごせる仲間をご自身で見つけられると思います^^
私も飼い猫3匹との生活を何が何でも守れるようにこの話とIさんの心意気を忘れないように刻み込みます。
Iさん、甘いもの食べ過ぎないでくださいね^^
トマトちゃん親子は絶対忘れないと思います。
それぞれ道は別れてもずっとずっと一緒です!

とても素敵なお話をいつもありがとうございます。

by ぞのこ 2012-02-04 20:00

泣いてしまいました*笑*
時に人間はとても非情なことをします。
それでもまた、同じ人間が素晴らしい愛を動物にあげます…!!
傷は一生癒えないかもしれないけれど、覆い隠す分だけの愛が、トマトに起こりますように!!
そしてIさんの素敵な行動に、自分の心が清められた気がします。

やっぱり、助け、守る人間になりたいと、再度実感!!

by えみたむ 2012-02-04 20:44

佐竹さんの「道端猫たちへ」の写真展に行きました。猫ちゃん達それぞれの表情からそのね

by きらら 2012-02-27 19:09

涙が止まりません・・・
Iさんたちのやさしい気持ちにも感動です!

でもにゃんこちゃんたちがいま幸せそうでよかったと思います。

わたしの彼も捨てられたにゃんこを引き取り今とても可愛がっています。福太郎といいます。

写メでしか見たことがないけれど、とてもかわいいにゃんこで彼にとても甘えてくるそうです。
仕事から帰って福ちゃんがいると癒される~って言ってます。
福ちゃんも彼と出会って幸せなことでしょう!

にゃんこやわんこは人間に癒しを与えてくれます。
いじめる人間はそことこに気がつかないでいるのが同じ人間としてはがゆいところです・・・

のらにゃんこをいじめないで!!!って思いました。

トマトちゃん達・・・いつまでもお幸せに(^^)

by くーちゃん 2012-03-14 11:22

偶然にここにたどりついて読みました。
泣いてしまいました。
胸が痛いです。同時に胸が温かくもなりました。

by こまち 2012-04-03 21:32

好き 動物好きにはたまらない いいお話ですね(^^)苦労した分みんな幸せになってください(*^^*)

by ラスカル 2013-11-26 20:45