「さあ、今日からここがムタさんのおうちだよ」
キャリーからお部屋に出されたムタさんは、びっくり。
あっちにもこっちにも猫がいるではありませんか。
「今日から、みんな仲間だよ。よろしくね」
ムタさんの新しいお母さんとなるゆきさんが、そっと声をかけました。
ムタさんをゆきさん(右)のおうちに届けたのは、保護主の直美さん(左)と、預かり主の絵美子さん(真ん中)。
ムタさんは、直美さんたちが、この春保護に関わった外猫が何匹かいる地域で暮らしていた猫です。1匹だけ長毛で、聞けば元は飼い猫だったものの、家と飼い主を失い、5年もの年月を外で暮らしていたということでした。
長毛の猫の外暮らしは過酷です。暑い夏など、どう過ごしていたのでしょうか。
この写真は保護時。長毛は束になり、脚の裏など、黒くすすけています。
長毛でわかりにくいものの、痩せていました。
温厚なのできっといいおうちが見つかるはずと、直美さんによって保護されたムタさん。
しかし、思いもよらぬ事実が待ち受けていました。
ムタさんは、猫エイズと白血病のwキャリアだったのです。Wキャリアの子は寿命が短めで、他の猫と隔離が必要なので、まず譲渡先が見つかりません。ストレスを与えないのびのびした生活が少しでも寿命を延ばすことにつながりますが、直美さんたちは、ムタさんにひと部屋あげる余裕はとてもありません。いつだって、次々待ったなしでやってくる保護猫たちで、もういっぱいいっぱいだからです。
直美さんたちの心痛を知ってか知らずか、久しぶりの屋根の下でくつろぐムタさん。
こんな愛らしい子が、5年も外で暑さ寒さを耐えていたばかりか、Wの病気を持ってしまったなんて。ムタさんは、いったん絵美子さん預かりとなりました。
絵美子さんちの保護猫のお話は、コチラ → 2025/09/30「
美しき翼・エールくん」
そんなとき、「うちでよかったら」と思いもよらない救いの声をかけてくださったのが、キャリアの子ばかり迎え入れてきたゆきさんでした。
そう、あのWキャリアの元ボス金ちゃんのいるおうちです。
金ちゃんのお話はコチラ → 2025/10/14「
新入りは、Wキャリアの元ボス」
ムタさんがやってきたのは、梅雨入り後の、ちょっと蒸し暑い時期。
でも、ここは、「山の家」みたいに、広々として眺めがよく、快適なんです。
さっそく順番に匂いをかがれるという、新入りとしての洗礼をうけます。
さすが外暮らし5年、ちょっとやそっとのことにはたじろぎません。
「ここでは好きな場所で好きなふうに過ごしていいんだよ。テーブルの上はみんなのお気に入りさ。庭や、その向こうの森がよく見えるんだ」と、金ちゃん。
「1階は全部ボクたちのすみか。あ、ニンゲンたちと共同だけど。2階は、エイズキャリアとノンキャリア組のすみかだから、2階にだけは上れないけどね」と、浜ちゃん。
その時間時間で、眺めや日差しが最適なスポットがあるようで、ムタさんはこのおうちがすっかり気に入ったようでした。
隠れたいときは、グランドピアノの下とか、暖炉の後ろとか、いくらでも身を潜められそうだし。
金ちゃんのように部屋の真ん中でゴロンゴロンするには、もうちょっと慣れてからかな。
おやつタイムには、ムタさんもさっそく参加しました。
猫食堂も兼ねる、小上がり風の畳の小部屋が、ムタさんはいたく気に入ったようです。
直美さんと絵美子さんが大安心して、ムタさんをゆきさんに託して3週間近く。
ムタさんはどう過ごしているのでしょうか。ゆきさんちを訪ねてみました。
おお、金ちゃんが大あくび。
暑い夏がやってきたけど、ここはまるで避暑地の別荘のよう。
ムタさんも、みんなが好きなテーブルの上がお気に入りになっていました。
「暖炉の台石の上もひんやりして大好きなの」
すっかり、仲間に溶け込んで、ここの子になっています。
「ムタさんはいちばんの食いしん坊。小腹がすくと私の後をくっついて回るの」と、ゆきさんは笑います。
いくつものバトンタッチで実現した、今のムタさんの穏やかな暮らし。思う存分仲間たちと猫生を楽しんでね!
直美さんたちの保護譲渡活動は真夏も続いています。
この日曜日19日には、かざぐるま尚子さんが保護して、玲子さんや厚子さんに預かっていただいている子猫たちが一斉に譲渡会デビューします。
千葉県松戸市近辺で、猫を迎えようかなと思っている方はぜひ足をお運びください。
※maile(マイレ)保護猫譲渡会
7月19日12:00~15:00
松戸市五香5-37-3 (株)ありす
※猫部ブログをお楽しみいただき、ありがとうございます。
このブログへのコメントは、手動で承認をしておりますため、公開までお時間がかかる場合がございます。休業日にはコメントは公開されませんので、予めご了承くださいませ。
何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram