オッポくんは、推定5歳。
仔猫の時におそらく事故のために短くなった特徴的なシッポを持っているので、この名前になりました。
オッポくんは、5歳にして、捨て猫 → 家猫 → 外猫 → 庭猫 → 間借り猫 → 家猫という経歴の持ち主です。
私が初めて彼に会ったのは、去年の5月。
玲子さんのおうちに保護猫たちの取材に行った時でした。
取材中、ずっと、外から、おうちの中を覗き込んでいたのです。
きょとんとしたまん丸な目が、印象的でした。
玲子さんは、道ばた猫日記2025年8月5日の「
小さな命をあきらめない」で書いたように、行き場のない猫たちを救い続けてきた人です。
「ずっと覗いているあの子はだあれ」と尋ねると、「家に入りたがっているから、何とかしてあげたいのだけど、一応おうちと飼い主がいるの。お腹がすいているようで、ご飯とお水はいつも用意しているのだけれど」という返事でした。
庭に置いてある鳥のエサ台によじ登ってエサを盗み食いしていたのが、庭への初来訪だったとか。
「今思えば、飼い主さんは体調が悪くて、オッポのご飯をちゃんと用意できなかったのではないかしら」と、玲子さん。
その次にオッポくんに会ったのは、12月。
なんと、彼は、2階の広い「いっちゃん部屋」で、のんびりとひなたぼっこをしていました。
いっちゃんは、酷い虐待の末、コインロッカーに遺棄されていた、年齢不詳の黒猫さんです。
いっちゃんの記事はコチラ → 2025年5月13日「
虐待から生還したいっちゃん」
オッポくんの飼い主だった老姉妹のかたが、相次いで救急搬送され、自宅に戻るめどが立たない状態に。ご近所付き合いもなかったようで、玲子さんは警察や行政に親族の居場所を訪ね回ったのですが、どこも教えてくれませんでした。
そこで、家を失くしたオッポくんを、とりあえず、庭猫に。ようやく遠くの親族と連絡が取れて、寒波襲来の前に家の中に入れてやることができたのでした。
(猫は所有物扱いにあるので飼い主を亡くした猫の保護は難しい点があります。家の中に閉じ込められている場合は悲しい結末となることも)
いっちゃんは、虐待の後遺症で、思うように体が動かせず、大人猫は大の苦手。
かなりのストレスはあったでしょうが、それでも、オッポくんに間借りを許してくれました。
オッポくんも、温厚な性格なので、彼なりに気を使っているのかいないのか(笑)、のびのびと暮らしていました。
そして、この春。
「オッポにおうちが見つかりました」といううれしい知らせが、玲子さんから。
なんと、出る予定のなかった譲渡会に、たまたま参加したところ、会場初訪問の純さん・典子さん夫妻にとても気に入られてとんとん拍子に譲渡が決まったのだとか。
玲子さんと共にオッポくんのずっとのおうちを訪ねました。
あれ、オッポくん、カーテンの陰に隠れてしまいました。
おうち猫になると、急に人見知りになる猫が多いようです。「ぼくんち」への侵入者とみなされるのでしょう。
隠れても、そのダルメシアンのような点々模様で、すぐにオッポくんだとバレバレだよ!
それでも、恩深き玲子さんの声や姿に覚えがあるのか、来客が気になって階段を行ったり来たり。
あれ、お顔の輪郭が、逆三角形から丸になったような......。
「ほら、オッポがよく知っている人だよ」とお父さん。でも、腰が引けています。
ご夫妻は、家に出入りの植木屋さんの保護猫だった愛猫のマイキーちゃんを、去年の大みそかに亡くしたばかり。おそらく心臓発作と思われますが、あっという間の別れは悲しすぎました。
数カ月して純さんが「猫のいない生活はもう耐えられない」と言い出し、3月にふたりして出かけた近隣の譲渡会場で、出会ったのが、どこかマイキーの面影のあるオッポくんでした。
60過ぎのご夫妻でしたので、息子さんに後見人となっていただいての譲渡となりました。
やってきたオッポくん、緊張していたのは半日くらいだったとか。
最初からここの子だったかのように、のびのびと暮らし始めました。
いっちゃん部屋もそうだったけど、このおうちの2階からの眺めは最高。全部屋出入り自由の快適生活です。
食欲もバッチリで、お医者様からは「『ちょいデブ』にとめておいてね」と言われている幸せ太り体型。
甘えん坊も加速して、お父さんの膝の上が大好きなおっぽくん。
この前は、お父さんの苦手な害虫をいち早くテレビの後ろに発見してあげて「助かったよ~」と感謝されました。
純さんもマイキーを亡くした悲しい経験から、オッポには天寿を全うしてほしいと、救急処置などを身につける「ペットセイバー」の資格を取りました。
「男同士、とっても仲がいいんです」と言う典子さんも「おっくん」と呼んで可愛くてたまらない口ぶりです。
とにかくお父さんお母さんのいる場所へついて回るさびしがりや。おうちを失った後、玲子さんちにたどり着かなくて外猫のままでいたら、どんなにさびしかったことでしょう。それとも、外にいたとき寂しすぎたから、甘えん坊になったのかな。
そんなオッポくんを見て、玲子さんは言います。
「あんなに面倒を見たのに(笑)、私のこと覚えてないの? でも、前のことはまるで覚えてないほど今が幸せそうなのが、私の一番の喜び。だからどんなに大変でも保護活動を続けていられるんです」
「初めて会ったとき、あるイケメン俳優さんに似ている猫さんだ!と思った私でしたが、シャープなお顔からふっくら丸顔になったオッポくん。」
純さんも典子さんも口をそろえて「おっくん、楽しく一緒に暮そうね!」
この先も、男っぷりに磨きをかけて、お父さんお母さんと一緒に楽しく長生きするんだよ!
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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