そこはかとなく哀愁の漂う金色の目が魅力の大猫さん。彼の名は金蔵、呼び名は金ちゃんです。
この夏に保護され、いろいろとわけあって、有紀さんのおうちにやってきました。
紹介の貼り紙が、新入りなのに偉そうに描かれています。金ちゃんの本質をつかんだ絵ですね。
「また猫が増えてる~!」と言いながらも、夏休みに帰省した大学生の娘さんが描いてくれたものです。
広いリビングの真ん中にあって、庭も裏山も見渡せるこのソファーは、黒キジ浜ちゃんのお気に入りの場所だったのですが、さっそく金ちゃんが独り占め。おっとり大福くんが「そこ、浜ちゃんの場所なんだよ」と言いたげに見ています。
でも、浜ちゃんも大ちゃんもノブちゃんも、先住猫たちはみんなさして気にしてはいません。
部屋は広々としていて、他にもいくらでも快適な場所がここには用意されているからです。
「それにしても、態度デカいわね」と、あきれ顔のノブちゃん。
さて、この大猫金ちゃんは、いったいどうしてここにやってきたのでしょうね。
その前に、有紀さんちの猫さんたちのことを書いた記事をぜひご一読ください。
→
sippo 猫のいる風景「短命であろうとも、仲間と一緒にふつうの家猫生活を」
そう、金ちゃんはWキャリア(猫エイズと猫白血病)なのです。ノンキャリアの先住猫のいる家には譲渡できませんし、キャリアそれもWとなると単独譲渡も至難です。
金ちゃんを保護したかたの家には先住猫が2匹いて、別室隔離したままの金ちゃんは昼も夜も鳴き続けていました。
金ちゃんは推定4~5歳。顔面(耳の下)に30針近く縫った傷痕があり、その土地のボス猫として生き抜いてきたようです。
保護仲間から行き場のない金ちゃんの話を聞いた有紀さんは「うちで引き受けましょうか?」とすぐに言いました。
2階には、「にくまん」くんをはじめとするバリバリの元ノラの猫エイズキャリア組がパラレルワールドを作っています。
白血病のたびちゃんを見送って一階組は何とか空きがあり、ある日流れてきた「保護した猫が白血病キャリアだった」というSNSの「きんちゃん」という猫を引き受けるつもりでいたところ、きんちゃんの容体が急変。遠くの町まで駆けつけたその数日後に旅立ってしまったのです。
「迎えるはずだったあの子と元ボスだった風情がよく似ていて、不思議な縁を感じ、金ちゃんと名付けました」
迎えるまで、金ちゃんがボスだったということで、「先住とうまくやっていけるかなあ」という思いがあり、最初は同室内ケージインからスタートしました。
今よりほっそりしていて、やさぐれ感が残っていますね。
ところが、有紀さんの懸念をよそに、先住4匹も新入り金ちゃんも、すぐに打ち解け合ったのでした。
しおらしいスタートでしたが、そこは元ボス。おやつタイムは、温厚そのものなのに食べものには猫が変わる大福くんと、元ボス金ちゃんの一番争い。「やれやれ」とノブちゃん。譲って身を引くやさしい浜ちゃん。(後でちゃんともらいます)
金ちゃん、みるみるふっくら顔の家猫顔になりました。
「ねえねえ、イケメンの大きな新入りさん、どっからきたの」と、興味しんしんの通い地域猫さん。
7キロの巨体ですが、すぐにゴロンと甘える術も覚えました。これはズルイ!
キャリアの子たちを何回か取材した経験からですが、キャリアの子たちは自分のことをよく知っていて、無駄な小競り合いなどに体力は使わず温厚でまあるい性格の子が多いような気がします。そしてたとえ短命だとしてもそれを寿命と淡々と受け入れている気がします。
ストレスが発症のきっかけとなってしまうキャリア同士の穏やかなふつうの家猫生活。有紀さんのように、キャリアの子たちに理解をもっておおらかに懐を開く家庭が増えると素敵だなあと、心から思います。
仲間たちとストレスのない暮らしで、金ちゃん、みんなと一緒に一日でも長く家猫暮らしを満喫してね。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram
憂いある表情からあどけない表情まで、さまざまな顔を見せる金ちゃん、大ネコ家族に迎えられて本当に良かった。恵まれたストレスフリーの環境の中で、発症することなく末永くキャリアを積めますように。
by Y,M 2025-10-14 18:11
「たとえ短命だとしてもそれを寿命と淡々と受け入れている気がします」
この言葉が、胸に染みます。
夏に保護猫で歳も分からない仔を、見送りました。出会って、うちの仔になって7年。短かったと思っていたのですが、茉莉子さんの言葉に救われた気がします。
金ちゃん、少しでも長く生きて、これまでの辛さを忘れて、優しい人や同居猫さん達と幸せになってね。
by 名無し 2025-10-14 18:53
おお~哀愁ただよう深い眼差しのイケメンさん…
アラン・ドロンのようではありませんか!
私も、このタイプのネコさんには弱いです~(^^;
金ちゃん達、幸せな家猫さんになれて、ほんとうによかったです…!
有紀さん、たくさんのキャリア猫さんを幸せに
してくださって、本当にありがとうございますm(__)m
キャリアだからこそ、家猫として穏やかな生活を送ってほしいと切に思います。
どうかキャリア猫さん達の受け入れが、もっともっと広がりますように…♪
by ぴっころ 2025-10-14 20:40
金ちゃん、哀愁たっぷりで健気な男前ですね。とっても可愛い💕
みんなと仲良く穏やかに長生きしてくださいね🥰
by Mimi 2025-10-14 20:50
キャリアの猫さん、自分のことが分かっている… 切ないですが、賢い彼らのことですから当然でしょうね。
長くはない命かもしれませんが、ストレスなく穏やかに過ごせますように。
by ヤンヤン 2025-10-15 13:44
金ちゃん、やっぱり茉莉子さん好みのオトコですね。どこか哀愁を漂わせて。
by ムヨク 2025-10-20 14:47
>Y.Mさん
末永くキャリアを積めますようにって、上手い! 座布団一枚!
せっかくつかんだ安寧。満喫してほしいです。
by 道ばた猫 2025-10-21 15:08
>名無しさん
7年間、一緒に暮らせてしあわせでしたね。一日一日を愛されて穏やかに暮らせれば、猫にとって寿命の長さはさして意味もない気がします。
by 道ばた猫 2025-10-21 15:11
>ぴっころさん
アランドロンのよう❕言いすぎでしょと思いながら、じっくり見たら、たしかにアランドロンの憂いある金色の瞳でした!
by 道ばた猫 2025-10-21 15:13
>Mimiさん
元ボスの大猫をすんなり仲間に受け入れるなんて
やっぱり猫ってすごい!優しくて賢いなあと思いました!
by 道ばた猫 2025-10-21 15:16
>ヤンヤンさん
どんなに愛しくても、いつかは来る別れ。私たち人間はじたばたするけど、
じたばたせずに別れを告げるたちの美学は尊重したいと思います。
by 道ばた猫 2025-10-21 15:19
>ムヨクさん
お見通しですね(笑)。
性格悪そうな猫も、ビビリの猫も、猫はみんな好きなんですけどね(笑)
by 道ばた猫 2025-10-21 15:22