ケージの中には、生後2カ月半くらいの子猫が3匹。
青い目で、茶色が少なめのシロくん。
茶色の部分が多めのベージュくん。
お兄ちゃんたちの後ろに隠れているグレーちゃん。
3匹の名は仮の保護名で、これから車に乗って遠い町へ出発するので、緊張しています。
「さあ、お引越しだよ」と、尚子さんが声をかけます。
ちょっと寂しい、でも、この子たちのしあわせにつながる次のステップへと送り出すうれしい日です。
有機野菜の共同出荷場「おかげさま農場」のメンバーである尚子さんが、この子たちに出会ったのは、5月30日の日暮れどき。
仕事先からの帰り道で、通ったことのない山道を軽トラで帰宅中でした。通ったことのない山道というのは、保護猫のことで頭がいっぱいで、道を間違えてしまったからです。
春から嵐の日々でした。民家の軒先で出産した母猫と子猫たち。側溝を逃げ回って、自動車工場の人と中学生たちが救助してくれた子猫(
先週の道ばた猫日記で、紹介した未来くん)。公園に捨てられていた仔猫3兄妹。お腹に大ケガを負っていた母猫とその子たち(子猫たちは玲子さんが引き受けてくださり、母猫は尚子さん宅で治療中)。放っておくわけにはいかない、命の切羽詰まった猫たちに次々と出遭ってしまい、本業の苗付けが間に合っていない状態なのでした。
あれこれ考えながら、運転していた軽トラの前に、小さなものがカラスに突かれながら山から転がり出てきました。白っぽい子猫が2匹です!
猫たちの救助の直訴があまりにも自分に続くので、「噓でしょ、夢でしょ」と一瞬思ったものの、急停車して車を下りました。右手と左手で2匹をつかみ、紙袋に放り込みます。
2匹だけでないかもしれないと思い、耳を澄ませると、鳴き声が。ヤブを探すと、もう1匹グレーの子がいたので、保護。
3匹以外の子猫と母猫は見当たらず、誰かに捨てられて何日か経っていたのかもしれません。みな痩せていて、ベージュくんの塞がった片目は膿だらけ。そのまま動物病院へ直行し、初期手当てをしてもらい、お薬ももらって自宅に連れ帰りました。
公園の3兄妹も、山道3兄妹も、まだ目薬や薬服用が必要なので、野菜直売所の当番の日は、同伴出勤をしました。直売所を縄張りとしているチャーリーさんに場所を借りての保育園です。
集荷場の猫となった元ノラのぶち君も、気になってのぞきに来ます。
寝る時間を削ってお世話をした甲斐あって、ガリガリからポンポコリンになりかけた頃。
遠くの町から、「預かって、譲渡先も探しますよ」と声をかけてくださったグループがいました。
保護12日目、6月11日のお引越しでした。
着いたのは、厚子さんち。
昨年の7月に道ばた猫日記「
楽しきひとつ屋根の下」「
続・楽しきひとつ屋根の下」でご紹介した、マツコさんたちのおうちです。
「よろしくお願いします」と、尚子さんから厚子さんの膝の上にそっと手渡した子猫たち。「花束みたい」と、尚子さんがつぶやきました。そう、小さな命の花束のバトンタッチに立ち合う私も、胸がいっぱいでした。
マツコさんがやってきて、小さく「シャー」をしますが、子猫たちは平気!
階段の上から、「あの子たち、いったいどこから来たの」と気になる先住さんたち。
グレーちゃんは、厚子かあさんのGパンの脚のすき間がすっかり気に入ったようです。
大学生の次男くんもお部屋から出てきて「わあ、ちびっちゃいなあ!」と、抱っこしてくれました。
「甘えん坊の白くん、暴れん坊のベージュくん、食いしん坊のグレーちゃん。3匹をよろしくお願いします」と尚子さんが言うと、次男くんからは「任せてください」といううれしい言葉も。
さて、お預けの日から、今日で5日目。
こんな写真が厚子さんから届きました。
次男くんの膝の上でほどけきった3匹の、何とも平和な姿です。
ひざに乗りたがり、ゴロゴロゴロがとまらないそうです。
まだ2階で先住さんとは隔離生活ですが、ドアの向こうに人の気配がすると、「遊んで~!」と絶好調。
白くんは、目の色から「そら」くんに。
ベージュくんは、「きなり」くんに。
グレーちゃんは、和名の鈍色から「にび」ちゃんに。
元気はつらつに過ごしているようです。
そらくんの甘えん坊、にびちゃんの食いしん坊ぶりは拍車がかかっているようですが、厚子さんがこんなことを。
「暴れん坊のきなりくんは、他の2匹の勢いに押され気味で、暴れん坊というより寂しん坊かな」
預かり先を探してくださった直美さん。最初に手をあげてくださった友美さん。体調を崩した友美さんの代わりにこころよく預かってくださった厚子さん。個人で保護活動を続けている玲子さんたちMaileボランティアの皆さん、気になって2階をのぞきに来るマツコさんはじめ先住さんたち。響き合い、助け合う輪があれば、助かる命はたくさんあるのですね。本当にありがとう。
※猫部ブログをお楽しみいただき、ありがとうございます。
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「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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