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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2025年07月15日

続・楽しきひとつ屋根の下

先週記事(楽しきひとつ屋根の下)の続きです。
ちょうど1年前のこと。預かりとしてやってきた知らない猫の匂いに、厚子さんちの4匹は、そわそわしていました。

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10年前に公園で保護されてセンター経由でやってきた、むぎちゃんもソワソワ。
ちょうどそのころ、保護猫たちの譲渡のお手伝いを始めた厚子さんは、たまたま多頭飼育の場からの保護を手伝い、仲間たちと手分けして行き場のない猫たちの一時預かりをすることになったのでした。
厚子さんも、「4匹が限度で迎えるのはもう無理だけど、預かりなら」と、1匹引き受けることにしたのです。

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5年前に沖縄からやってきたきょうだい組の姉猫よつばちゃんも、興味しんしん。

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10年前にやってきたちゃちゃ姐さんも、どっしり構えながらも気になる様子。

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でも、何といっても、一番ソワソワしていたのは、この猫さん。
沖縄からさよつばお姉ちゃんと一緒にやってきたさんごくんです。
なぜって、さんごくんは、よつばちゃんと共にここでは一番の年若で、唯一の男子。
年長のちゃちゃさんやむぎさんにあまり相手にしてもらえず、よつばちゃんと遊ぶことが多かったからです。
「預かり猫は、最初は2階の布で覆ったケージハウスで過ごさせていました。さんごは、その前に陣取って、『今度の新入り預かりは、ボクの手下にするんだ。どんな子猫かな』とばかりに、対面の時をずっと待ち構えていましたね」と、厚子さんは笑います。 さて、ケージの布が取り除かれました。
ぎゃふん、というお顔になったさんごくん。なぜなら......

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そこにいたのは、酸いも甘いも噛みしめたような、悟った目をしたおとな猫「マツコ」でした。
当時10歳越えですから、ここで一番の年長ということになります。

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マツコはもともとの名で、彼女の暮らしていた多頭飼育の場所では、多数の猫たちがいました。厚子さんは、その中で10年以上を生きてきたマツコが気になって、「もうこれ以上の猫は無理」という家族の反対を押して、譲渡につなげるまでを預かることにしたのでした。
さて、さんごくんが退散した後、マツコさんはどうやったのか自分でケージのカギを開け、先住猫たちのくつろぐ1階へとトコトコ降りていきました。
ピクッ!とする先住猫たちを尻目に、マツコさんは思いもよらぬ行動に出ます。
なんと、1匹1匹のもとに「よろしくお願いね」とばかりあいさつ回りをしたのです。

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よつばちゃんに、スリスリ。

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そして、毛づくろいまで。

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さんごくんにも、お尻を枕に貸しています。
スリスリしてくる年上猫に、最初はどうしていいかわからなかった4匹。ナイーブなむぎちゃんは、1週間ご飯を食べませんでした。が、まもなく全員、この新入りを仲間として受け入れました。

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マツコの一生懸命なアピールを見ていた厚子さんは胸がいっぱいでした。
「大勢で暮らしていて、こんなに温厚な性格って......。集団生活で生き抜くための知恵もあるだろうし、元の飼い主さんにも可愛がられていたのかなあ」
マツコさんの一生懸命さを受け入れたのは、猫たちだけではありませんでした。
預かることも反対していた旦那さまと息子さんたちが「いいんじゃない、この子もうちの子で」と言いだしたのです。

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かくして、マツコさん、めでたく5匹目の家猫に。
ただ、他の子ができることで、マツコさんができないことが一つあります。

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それは、他の猫が楽しんでいる、お父さんの愛が詰まったお手製のワクワク天井ワールドに登れないこと。
推定11歳越えでは、キャットウォークやキャットステップに挑戦するのは、ちょっとハードルが高いようです。

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でも、好きな場所で、思いきりのびのびするから、いいもんね。

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仲良し5匹の平和な食事風景。
厚子さんはつぶやきました。
「マツコをうちの子に迎えたのは、多頭飼育の場所で懸命に生きていたマツコたちのことを忘れずにずっと心にとめておかなければ、という気持ちがあったのかもしれません」

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美しい瞳のマツコさん、みんなで仲よく元気で長生きしてね。
マツコさんの元の仲間たちも、それぞれ幸せになりますように!



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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

‘’ニャン生‘’とはどういうものか、全てがわかっているような表情のマツコさん、よつばちゃんが片目をつぶりながらも、毛づくろいを素直に受け入れられているのも頷ける。先輩猫としてのプラスワンが、幸せの大きな輪になって、みんなの中に広がっていきますように。

by Y,M 2025-07-15 16:26

マツコさん 見た目は、想像していた姿に近かったのですが、行動は、想像の遥か上でした。
マツコさんの生きてきた状況を考えると、胸が詰まります。
5匹が並んで仲良く食事する姿は、平和でもあり、尊いと感じます。ずーっと続きますように!

by ちぃ 2025-07-15 23:42

さて「マツコ」さん、どんな仔猫が現れるのかと思いきや! 自ら先住猫に挨拶ができる大人猫だったとは。
預かり猫からこんなに素敵なおうちの家猫になるなんて、ご家族の思いに心が温まりました。
多頭飼育だったマツコさんのお仲間も、それぞれ幸せになれることを願って止みません。

by ヤンヤン 2025-07-16 05:27

新入りを手下にしようと張り切っていたさんごくんの、ギャフンのお顔、想像するだけで可愛いです(^o^)
それにしても、マツコさんは大勢でもまれながら、生きる力や知恵を身に付けたんでしょうね。
マツコさんの賢さに脱帽です。
私たち人間も見習わなくては…
佐竹さん、今回も尖ったこころが、まあるくなる素敵なお話をありがとうございました!

by ぴっころ 2025-07-16 14:05

マツコさんの健気な姿に心打たれました。
4匹も5匹も一緒かな?
うちの子として迎える決心をされて頭が下がる思いです。
とてもよかった。

by ペンギン 2025-07-16 16:09

>Y・Mさん

マツコさん、もしかしたら、多頭飼育現場で、年下の猫たちの面倒をみてきたのかもしれないですね。そう思うと、とてもいじらしいです。

by 道ばた猫 2025-07-22 15:49

>ちぃさん

私も、マツコさんの行動をお聞きして、えっ!となりました。
なかなかできることでは。見倣わなくちゃ。

by 道ばた猫 2025-07-22 15:50

>ヤンヤンさん

預かり猫として迎えられたのも、そのまま家猫にしてもらったのも、「ご縁」があったと同時に、マツコさんの「猫徳」もあったのでしょうね。

by 道ばた猫 2025-07-22 15:52

>ぴっころさん

はい、猫って、人間の創造の斜め上を行く賢さとしたたかさ(いい意味で)を持ってますよね!
見倣わなくちゃ、です。

by 道ばた猫 2025-07-22 15:54

>ペンギンさん

お父さんとお兄ちゃんたちが一斉にマツコさんの味方になってくれて、心強いですね!
嬉しい結末でした!

by 道ばた猫 2025-07-22 15:55