山裾の小径を上っていくと、その店はありました。
日本風古民家ですが、店の名前は「グーテカッツェ」。デッキの下では、キジトラが1匹、お出迎え。
店内に入り、ロールキャベツを頼みました。
そして、クリスマスの焼き菓子もおいしそうだったので、食後の珈琲とシュトーレンも頼みました。
ここは、埼玉県の小川町というのどかな町ですが、なんだか外国の田舎に旅してるようで、ワクワクします。
ふと見ると、さっきの猫が戸の向こうに、きりりと座っています。
靴番をしてくれているのかと思いましたが、お店の奥さん曰く「ロールキャベツの匂いが大好きなんです」
あっ、キジトラがお店の片隅を横ぎりました。お外にキジトラがまだいるのに、分身の術みたいに。
「外にいるのが、Murli(ムーリィ)で、そこにいるのが、Schnurli(シュヌーリ)。兄妹なんですよ」と、奥さんが教えてくださいました。
ここは、ウイーン生まれのオーストリア人ハンスさんと、日本人の直子さんご夫妻が、日曜と祝日だけ開いているカフェです。
ここで出す料理やパンやケーキ作り、珈琲のドリップもハンスさん。故国オーストリアの味付けを堪能させてもらえます。
統計学者であるハンスさんは、日本が大好き。日本の伝統にも造詣が深いのですって。
平日の夜には、カフェが英語やドイツ語の教室になります。広い別室は、アートギャラリーにもなり、音楽や落語を楽しむ場にもなっています。
お店の壁に掛かっているのは、直子さんが描いた水彩画。アメリカにいたとき、おふたりは保護猫兄妹を迎えて一緒に暮らしていたそうです。
キジトラで、その名も「ムーリィ」と「シュヌーリ」。
その子たちを亡くしたときの悲しみは、「あんな悲しみは他にはないわね」と、直子さん。
4年前にこの店を開くときに、またキジトラのきょうだいと暮らしたいと願い、探しました。
「人間が手を加えていない姿のままが一番美しい」という美学を持つふたりの希望は「耳カットしていない保護猫」。やっと見つかったのが千葉県で保護されたばかりのキジトラ兄妹でした。
迎えた元ノラ兄妹はビビリで、室内暮らしを怖がって部屋中逃げ回ります。
部屋に何着か掛かっていたハンスさんの背広に飛び乗り、肩の部分を爪痕だらけにしてすべて台無しに。
猫好きのハンスさんでしたが、この時だけはさすが怒って「この子たち、返しておいで!」
直子さんがなだめて、ことを収めました。
先代キジトラ兄妹の名をそのままもらった2匹でしたが、その後も、いろいろやらかしました。小麦粉の入った袋を床にぶちまけたり、シンクの食材ごみを漁ったり、みそ汁のだしをパックごと食べてしまったり。
そのうち屋根裏から外に出る抜け穴を発見し、家の内外を自由に出入り。
お天気の日は、広い庭を駆け回り、ときには、裏山遠足も。
吹き渡る風が心地よい丘の上。
お父様がプロの写真家だったというハンスさんも、写真がプロ級。
ハンスさんが担当するインスタには、ときどき猫たちも登場して、文章の最後はいつもこう結ばれます。「猫たちとお待ちしています」
お店の正面に見える青い仙元山(せんげんやま)風景を猫たちも楽しんでいるようです。
町に鳴り響く、子どもたちの帰宅を促すメロディーが、ムーリィたちの夕食の合図。
食事の合間には、子どもの頃は音楽院に通っていたというハンスさんが、アコーディオンでジングルベルを演奏してくださるというサプライズ。
ハンスさんも直子さんも、「人生でいちばん大事なのは、猫。好きなように暮らしてほしい。
私たちは猫たちのご飯代を稼ぐために生きている」と、一致しているのだとか。
そうそう、店名「グーテカッツェ」は、ドイツ語「Gute Katze」で「いい猫」という意味です。ちょっと人見知りなキジトラ兄妹と、猫の看板が迎える、のどかな町のオーストリア・カフェ。いい猫といい時間が過ごせます。
• Cafe Gute Katze
埼玉県比企郡小川町小川1520-17
営業=日曜祝日のみ 11時から16時
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram
ムーリイとシュヌーリ、自然と音楽そして食事に絵画等々の、文化度の高い猫好きのお宅に誘われて何より。日本生まれでも難しい自分の名前が分かるのかな?
by Y,M 2025-12-16 15:20
ネコのいる素敵なオーストリア・カフェ!
聞いただけでも行きたくなります。埼玉県の長閑なロケーションもいいですね。
県民ランキングではあまり上位に来ない埼玉県ですが、山あり、川あり、都市部もあります。(海は残念)
住みやすくて大好きなんですけれど。(実はケンミンだったりします...)
by ヤンヤン 2025-12-17 05:15
素敵なご夫婦のお店ですね。ロールキャベツは、美味しくて大好きだけど、作るとなると少し手間がかかる……
近くにこんなお店があったら、通い詰めるかもしれない。
自由に生きる兄妹猫さんも、魅力的。数々のいたずらは、少し経つと笑い話になりますね。うちも、お米をぶちまけられたり、食パンを袋ごと、かじられたり、壁紙もボロボロだったり。全てが可愛い!
兄妹猫さん、元気でね〜
by ちぃ 2025-12-17 19:56
2年くらい前に旧友がこちらでアコースティックライブをやりました。風邪で行けなかったんですよ。残念で残念で。やっぱり頑張って行かなきゃならないかな。猫わずらいの食いしん坊だから(^^)
by ねこま 2025-12-24 13:02
>Y・Mさん
たぶん、ムーリィとシュヌーリは、「シュ」というカスレ音があるかないかで聞き分けけているのではないかと(笑)
by 道ばた猫 2025-12-24 16:23
>ヤンヤンさん
海はないけど、田畑も街道も風情ある場所が多くて、埼玉県、好きですよ!
まだまだ探訪したい県です。
by 道ばた猫 2025-12-24 16:27
>ちぃさん
埼玉は、山猫度が高いように感じます(笑)。あ、でも2匹は千葉出身なんですよね。それで、自由猫なんだ!
by 道ばた猫 2025-12-24 16:30
>ねこまさん
それは残念でしたね! リベンジで、ぜひ今年こそ。
お店は行きたいと思ったときが行きどきですから!
by 道ばた猫 2026-01-07 12:46