[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

キーちゃんは、推定１１～１２歳くらい。
シャインマスカット色の賢そうな瞳と、やわらかなさび色の毛と、カギしっぽを持つ小ぶりの猫さん。



真理子さん一家の愛猫としてこよなく可愛がられています。このおうちには他にも保護猫が4匹、犬が1匹。
今日も、あたたかな窓辺で、うとうとしていたら......。



「キーちゃん、今日はね、ママが遠くの町から会いに来てくれるよ」
真理子母さんが言いました。
えっ？　キーちゃん、不思議顔です。私のお母さんはここにいるのにな。
真理子さんとキーちゃんとの出会いは8年前でした。



たまたま立ち寄ったカフェにサビ猫がいたのです。
ある日突然駐車場に現れたというその子は、ぐるんと巻いたカギしっぽだったので、「きーちゃん」という名をもらい、カフェ「美音」に出入り自由でお客さんたちに可愛がられていました。猫好きなママに面倒を見てもらい、耳カットされた地域の猫でありながら、夜も店の中で寝ていたしあわせな子でした。
でも、真理子さんが行ったとき、店にはこんな貼り紙がありました。



閉店することとなったものの、ママには自宅にきーちゃんを迎えられないやむを得ぬ住宅事情があり、きーちゃんのおうちを懸命に探していたのです。
トライアルは決まっているという話で、胸をなでおろした真理子さんでした。
客席の隣で甘えるきーちゃんの愛らしさが忘れられず、「閉店前にもう一度会っておこう」と再び店を訪ねると、トライアルは中止になったということで、ママさんはせっぱつまっていました。
このままどうしても譲渡先が見つからない場合、町猫としてそのまま置いていっても、隣の会社がちゃんと面倒見を引き継いでくれる約束もできていました。でも、店内にねぐらのあったきーちゃんを外暮らしにさせるのは忍びなく、また、こんなに人が好きな子を外に置くのは危険にも思えたママさんでした。
真理子さんは、迷わずきーちゃんに尋ねました。
「うち、くる？」
その日から8年。
カタカナ表記の「キーちゃん」となって４匹の保護猫たちと1匹の犬と穏やかに暮らしていますが、猫同士でつるむより、母さんのそばで一対一が好きなようです。



さあ、ママが来る時間。
真理子さんと美音のママは連絡を取り合ってはいましたが、ママがキーちゃんに会いに来るのは初めてです。
「キーちゃん、ママ来たよ！」



「まあ、キーちゃん、とっても元気そう！」
ママの顔はたちまち喜びでいっぱいに。



「よかったねぇ。ここの子にしてもらって」



ママに抱っこされるキーちゃん。さっきと違って安心しきった表情です。
「あっ、キーちゃん、ママのこと思い出したんだね！」と真理子母さんもうれしそう。



その日、キーちゃんは、ママと母さんに挟まれてご機嫌でした。



その一部始終を見ていた14歳のきなこちゃんもどこか感慨深げ。きなこちゃんは、コンビニの駐車場から真理子母さんに保護されてきた子です。他には、お父さんが保護した「モフモフ」と「スノウマン」や、母さんの職場に現れて保護された「トラオ」もいますが、みな人見知り。
「キーちゃんって、私たちと遊ぶより、お母さんに構ってもらう方が好きなのは、寂しかった時、ママに一対一で優しくされたからなのかな」



「また会いに来るからね」
ママはそう約束して職場に帰っていきました。ママの新しいお仕事は、会社の寮でおいしい食事を作ること。寮で暮らす働くおじさんたちも地域の猫に優しい人ばかりなのですって。



大好きだったママと、今、毎日大好きなお母さん。
自分を心から想ってくれる人をふたりも持つキーちゃんは、しあわせにあたたかな年末を迎えます。
また、ママに会いに来てもらおうね！

---

「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。


『猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選


『猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを


『寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。


『猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。


『里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。


『しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化！


『いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います！