人見知りの天(てん)くん(3歳すぎ)は、お客さんがちょっぴり苦手。
さっそく隠れてしまいましたが、隠れた場所は階段の下で丸見えです。
「おやつの音で、すぐ出てきます」とお母さんのみおさん。
その通り。すぐに出てきました。
「みゃん、みゃお~~ん」高音で甘えます。
茶トラ男子は、噂通り、わかりやすく甘えん坊で食いしん坊の子が多いようです。
みおさんが社会人の娘なつさんと暮らすおうちには、もう1匹。
先住猫のキジ白女子音(おと)ちゃん(4歳半)です。
なつさんに抱かれた音ちゃん。
2匹は、それぞれ違う境遇から保護され、縁あってこのおうちにやってきて、いいコンビになりました。
みおさんは、ひとり娘なつさんのためにも、猫を飼ってやりたいとずっと思っていたそうですが、当時の家族の反対で叶いませんでした。
なつさんが大学生の時に猫を迎える環境になったことから、知り合いの厚子さんに相談、譲渡会に出かけます。お目当ての茶トラの男子とはトライアルには進みませんでしたが、「こんな子もいるよ」と厚子さんに見せられた写真の子に一目ぼれ。
それは、房総で保護された漁港生まれの子猫たちで、写真右上のキジトラの女の子だけおうちがまだ決まっていませんでした。
すぐに預かり元へ会いに行き、とんとんと話が進みました。
やってきた初めての猫、「音」と名付けたその子は、置いてあったかごに入ってスヤスヤ。その可愛さといったら。
そして、初めての夜に一人ではさみしいだろうと、ソファーで一緒に横になったみおさんに甘えて、顔をペロペロ舐めてくれたのです。
「あああああ~~って感じでした(笑)。猫の舌があんなにザラザラしているなんて知らなかった。痛くてそのうち顔をそらしてしまったのですが、子猫の精いっぱいの愛情表現を受け止めきれなかったことを、今になって後悔してます。人間の子どもと同じですね~」
「かわいい、かわいい」と母娘の愛情を一身に浴びて、すくすく育つ音ちゃん。
ちなみに、最初の夜に小さな音ちゃんが入った同じかごに、現在の音ちゃんが入るとこうなります。
音ちゃんを迎えた4年半前は、ちょうどコロナ禍で、みおさんの仕事も在宅が多かったのですが、出勤が増えてきて、留守番をさせることが多くなりました。
それで、寂しくないようにと、2匹目を考え始めた折も折。
音ちゃんに引き合わせてくれた厚子さんから「これから子猫を保護するよ」とメールが。ちょうど3年前の秋でした。「うちに来るかな~」と直感したというなつさんでした。
いきさつは、こうです。
厚子さんが郵便物を投函しに行った帰り、庭いじりをしていたご近所さんとしばし立ち話をしていたとき、子猫らしき鳴き声が聞こえました。
気にしているとまもなく、隣のおうちの車のボンネットから、茶色い子猫がポトリと落ちるのを発見。その子は、今度は立ち話相手のおうちの車のボンネットに移り隠れます。ボンネットを開けると見つかるけれど、なかなか捕まらず。
「このままでは、この子の命は危ない」と思った厚子さんは即保護を決めました。捕獲機で、捕獲成功。厚子さんから送られてきた「保護しました」という子猫の写真を見て、みおさんはすぐ会いに行きました。
長毛なのでわからなかったけど、子猫は痩せていました。もしかしたら、ボンネットに入り込んでどこかから遠く運ばれてきたのかもしれません。
「こんな小さい子がいったいどこから、どんな思いで」と思うと、いじらしくてたまらなかったですね」と、みおさん。
「天」と名付けたその子は、みおさん母娘の家に。2週間の隔離生活ちゅう、天くんは部屋中冒険をして楽しみ、音ちゃんはそうっとのぞいていたそうです。
縁あって、姉と弟になった2匹。天くんは、長毛種だけにみるみる大きくなり、体格ではお姉ちゃんをゆうに超えました。
「引っ掻き合いもしてます。先週はずっと天がやられていて、今週は音がやられてる。じゃれ合いの延長みたいですね」と、みお母さんは、どちらの肩も持たずに見守ります。まさに子育て。
大きいけれど、ビビリなのは、天くんのほう。
おやつを食べた後は、冷蔵庫の上で瞑想中の音ちゃんの後ろに隠れましたが、またもや丸見え。
「ばあっ」と、いきなり下から覗いたお母さんに、思わずシャー!してしまいました。
しっかりキジトラ女子と、おっとり茶トラ男子。またとない姉弟の組み合わせのようです。いつまでも揃って仲良く元気でね!
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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音ちゃんと天くん、実の姉弟のように良い雰囲気。保護経験者とはいえ、優しい家庭にもらわれて何より。しっかりは女子で、おっとりビビりは男子は人間とおなじ?
by Y,M 2025-11-25 16:11
血が繋がっていなくても、生まれたところが違っても、音ちゃんと天くんはきょうだいですね。
子猫時代の可愛さはもちろん、大人になっても愛らしさは変わりませんね。並んでいる姿にほっこり…
猫のいない生活なんて、考えられませんよね~
by ちぃ 2025-11-25 19:47
しっかりキジトラ女子と、おっとり茶トラ男子、猫の個性ってたまらなく可愛いですね。
我が家は姫おひとりしか迎えられなかったですが、何とも楽しそう。
なるほど、ビビりな天くんの「シャー」も可愛らしいです。
by ヤンヤン 2025-11-26 05:54
>Y・Mさん
たしかに、しっかり姉とおっとり弟、またはおっとり兄としっかり妹の組み合わせは、人間でも最強コンビですね!
by 道ばた猫 2025-12-05 13:19
>ちぃさん
猫って、まるで違う場所からやってきても、すんなりなきょうだいになることが多いですね。猫の運命を受け入れる素直さってすごい!
by 道ばた猫 2025-12-05 13:23
>ヤンヤンさん
個性の違う猫を複数飼いするのも楽しいですが、一匹飼いを堪能するのもまた楽しいですね~!
by 道ばた猫 2025-12-05 13:25