置物ではありません
「2〜3年前だったらこの取材をお断りしていたかも」猫の背中を軽く撫でる私に、飼い主さんは笑ってそう言いました。聞けば、人が来ると隠れて出てこない臆病な性格の猫だったのが、15歳ごろを境に社交的になったのだとか。一体どんな心の変化があったのでしょう。 まずはこの子の生い立ちから伺ってみることに。
きっかけは姉の一言だったけど......?
飼い主の岡村洋子さん(千葉県在住・猫の陶芸家)と「オーリン」(18歳・メス)を繋げたのは洋子さんの姉の「長毛になるよ!」という一言。近くのスーパーの敷地でシャムっぽい長毛の捨て猫を見つけたお姉さんは、洋子さんに保護してはどうかと持ちかけたのでした。ちょうど長毛種の猫でご縁があればと考えていた洋子さんは、すぐに行動に移しました。保護を依頼し、東京にある姉の家まで車を飛ばしたのです。
もじもじ
カメラは好きかい?
洋子さんが子猫に出会うも......??? 猫は明らかに短毛種の装いでした。そこから姉妹の「(毛が)長くなる・ならない」論争が何ターンも繰り返されたのですが、捕獲してまた元に戻すのも忍びないと洋子さんはオーリンを連れて帰ったのでした。
その後も動物病院で「この子の毛は長くなりますか?」と先生に最終確認をするも、「ならないよ」とあっけなく確定した短毛種。洋子さんが望んでいたタイプの猫ではなかったとはいえ、18歳と長く生きてくれて、今は大当たりの猫だったと強く思うと同時に、姉の勘違いにも感謝するのでした。
だんだん慣れてきた
今日は主役だからね
同居猫は苦手にゃー
現在、岡村家には4匹の猫がいます。オーリンを筆頭に他の3匹は全てオスでどの子も保護された猫。ここで紅一点、最年長のオーリンをみんなが敬っているのかと思いきや、そうでもないらしく、若猫たちは容赦なしにオーリンを追いかけ回しているとのこと。それには猫に対してビビりすぎるオーリンの優しい性格が助長しているようです。ただ、今日はオーリンが主役の日。思いっきり羽を伸ばしてリラックスしてもらいたい! と思うのですが、2〜3年前は猫に限らず家族以外の人間も駄目だったんだよね? オーリン!
シンクがお気に入りの場所
絵になる
年々増える病院通いがもたらした変化
今は尻尾が短いオーリンですが、元々はスラッとながーい尻尾だったそう。洋子さんが尻尾の付け根のシコリに気づいたのはオーリンが13歳のころ。病院へ連れて行くと悪性の腫瘍だとわかり、断尾することに。当時、大事な舵取りがなくなると家族は心配しましたが、本猫は気にすることなく今まで不自由なく生活してきたとのこと。その後、左目が白内障になり、今は見えない方向から手を出すと驚くと言うので、おそらく左目は見えていないのでしょう。さらに15歳ごろには膀胱炎にもなり、年を重ねるごとに病院へ行く回数が増えていったようです。おや? ひょっとして病院通いで苦手だった他人を克服した? 先生やスタッフが優しくて、うれしかったのか、それとも反抗しても無駄だともう諦めたのか、こればかりはオーリンに聞いても教えてくれません。最近、耳も遠くなったと言いますし。
絨毯に溶け込む
短い尻尾でもフリフリ稼働できるのだ
猫と一緒に未知の世界へ
フードは色々試してきたと洋子さん。吐き戻しが多くなったオーリンの体に今一番合うのが「オールウェル高齢猫用」(ユニ・チャームペット)のドライフード。吐き戻しに対応している点が飼い主にはありがたく、小粒なのも奏功しているようです。(大粒は吐き戻し率が高い)またウエットフードはどの猫にもほとんど与えず、ご褒美的な扱いにとどまっているのだとか。それをたまーに与えるものだから、缶詰をプシュと開けた瞬間、さぁ、大変! 猫たちがダダダダーって駆け寄ってくると言うのだから微笑ましい。
爪をはむはむ
キレイな猫
「最期は食べなくなって、ガリガリに痩せて......」と過去に辛い看取りもしてきた岡村家ですが、今、オーリンの食欲があるうちは安心して暮らせているといいます。それでも今まで暮らして来た猫の最高齢は18歳で。これから家族は未知の世界へドキドキワクワク、緊張感もあって――というのが本音なのです。これまでの経験を総動員して、どんなに些細な変化も見逃さないと強く語る洋子さんと、その隣で佇むオーリン。ねぇ、オーリン今のは聞こえた?
ほんと18歳?
「猫又トリップ」が書籍になりました。
『
ご長寿猫がくれた、しあわせな日々』
15歳以上のご長寿猫と、その家族が奏でる28の物語をお届けします。
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(ΦωΦ)
写真
猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
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“キレイな猫”
ほんとにキレイな子ですね~
爪をはむはむする姿も“絵になる”
毛がながくなる、ってなんの根拠でお姉さんがおっしゃったのかわからないけど、今となってはナイス!ただナイス!
by ネエ 2022-09-09 14:01
ネエ様
ナイスですよねー。
お姉さんはどうしても知っている人に保護してもらいたくて、確信犯だったのかも。
by ケニア・ドイ 2022-09-28 15:50