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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫のまもりびと

2021年10月02日

第5回【猫のまもりびと特別編】宮崎徹先生にインタビュー


我が家には、慢性腎臓病と診断された猫がいます。今年10歳になるアルクです。

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「どうすれば治るんでしょうか」
そう質問したとき獣医さんから言われた言葉は、とてもショックなものでした。
「一度なってしまったら、今の医学ではもう治りません。かつ、ここから少しずつ進行します」

その日から私は、猫の腎臓病について調べ始めました。多くの猫が腎臓を病むこと、腎不全で亡くなることも、はじめて知りました。腎臓の専門医にもかかりましたが、言われることは同じでした。
こんなに多くの子が苦しむ病気なのに、治療法すら確立されていないなんて。絶望しかけたとき、ネット上で気になる記事を見つけました。それが、東京大学の宮崎徹教授が手がける「AIM」というタンパク質の研究の記事だったのです。

「猫の腎臓病の原因を究明、治療法の開発に取り組んでいる」
そう書かれているのを見て、目の前が明るくなる思いでした。私は、さっそく宮崎先生のTwitterをフォローし、続報を心待ちにしていたのです。

その後宮崎先生は、今年8月に『猫が30歳まで生きる日』という本を出版され、大変話題になりました。先生の研究を応援したいと、東京大学には、3週間で2億円に迫る寄付が集まったのだそうです。
そして。幸せなことに私は、念願だった宮崎徹先生との対面を果たすことができました。東京大学の研究棟にお邪魔し、お話を伺う機会をいただいたのです。

宮崎先生の研究は日々進んでおり、状況は刻々と変わっていきます。伺ったお話を少しでも早くお届けすべく、今回は『猫のまもりびと 特別編』として、ご紹介させていただきます。

インタビューの前に、AIMとはなにかということについて、ごく簡単に説明します(詳しくはぜひ、時事通信社『猫が30歳まで生きる日』をお読みください)。



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『猫が30歳まで生きる日』
日本では1000万頭近い猫が飼われているといわれますが、その多くが腎臓病で亡くなっています。原因は、これまで不明でした。そんななか、宮崎徹先生が血液中のタンパク質「AIM」が急性腎不全を治癒させる機能を持つことを解明しました。この AIM を利用して猫に処方すれば、腎臓病の予防になり、現在の猫の平均寿命である15歳の2倍である、30歳まで生きることも可能であるとされています。最新医療の研究現場のリアルを伝える一冊です。


AIMは、血液中にあるタンパク質の一種で、私たち人間の体にも、猫の体にも存在しています。
AIMの役目は、分かりやすく言えば「体内のゴミ掃除」。AIMは通常、IgMと呼ばれる抗体の一種と結合しており、病気などで体内にゴミが発生すると、IgMから離れ、ゴミを掃除しにいきます。
ただ、猫の場合どういうわけか、IgMとAIMの繋がりが強固で、体内にゴミが発生しても、AIMが離れることができず、掃除をしにいけないのだそうです。そのせいで、猫の腎臓にはゴミが溜まり続け、結果として、慢性腎臓病や腎不全を引き起こしてしまうのです。
宮崎先生は、このAIMの存在を発見し、性質や働きを突き止めました。そして今、腎臓を病んだ猫たちを救うべく、AIM製剤の開発に取り組んでいらっしゃるのです(以下敬称略)。

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宮崎 徹(みやざき・とおる)
東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター分子病態医科学教授。1986年東京大学医学部卒。同大病院第三内科に入局。熊本大大学院を経て、92年より仏ルイ・パスツール大学で研究員、95年よりスイス・バーゼル免疫学研究所で研究室を持ち、2000年より米テキサス大学免疫学准教授。06年より現職。タンパク質「AIM」の研究を通じてさまざまな現代病を統一的に理解し、新しい診断・治療法を開発することをめざしている。


AIM製剤は、あとどれくらいで完成しそうですか。

宮崎:2年以内にできるのではないかなと思っています。新型コロナが世界的に感染拡大した影響で、開発は中断せざるを得ない状況になってしまったのですが、中断する前の段階で相当いいところまでいっていました。2つの方向で作業を進めていたんです。ひとつは薬自体を作っていく作業。もうひとつは、薬としての承認を得るための臨床試験、いわゆる治験の準備です。
治験は「なるべく短い期間でやる」というのが鉄則です。腎臓病はとても長い病気なので、どのステージで治験をすれば、一番早く、明確な結果が出るかを見つける必要があるのですが、大勢の腎不全の猫のオーナーさん方にご協力いただき、「このステージで打てば大体半年以内ではっきり差が出る」というところをすでに見つけてあります。
あとはもう、治験薬を作り、大量生産をし、それを治験に使って申請するだけという段階ですので、開発が再開できたら、2年以内には認可までいけると思います。



先生の研究に対して、3週間で2億円弱の寄付が集まったと聞きました。それでもやはり、まだ開発は再開できないのでしょうか。

宮崎:「コロナによる資金難で開発が中断された」というニュースが世に出たとき、ありがたいことに、大勢の方々から寄付をいただきました。ただ、今まで我々は、製薬とはまったく関係のない会社にスポンサードしていただき、自分たちでいろいろなところに委託しながら作業を進めてきましたので、その方法だと、この額でもまだ足りないのです。おそらくここから先、総額5、6億円はかかるという算段でしたので。
ですが、今回多くの方に注目していただき、これだけ望まれているものなんだということがはっきり目に見える形で示されたおかげで、いくつかの製薬会社さんが手をあげて下さったんです。ここから先、製薬会社さんとタッグを組めば、もっと早く、もっといいものが作れると思いますので、もしかしたら、先ほど2年と言いましたが、短くなるかもしれません。製薬会社さんはやはりプロ、認可されるまでの工程なども、コツをご存じですので。
今は、製薬会社さんがどのような計画で完成させ、どのように販売するかなどをしっかり見極めつつ、パートナーを決めようとしているところです。

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AIM製剤は、だいたいいくらくらいの薬になりそうですか。

宮崎:AIMはタンパク質の薬で、化学合成できるものではないので、どうしてもコストがかかってしまうんです。化学合成の薬なら、機械にかければ、プログラム通りに同じものを安定して作ることができますが、AIMは培養細胞、つまり生き物に作らせるので、細胞のご機嫌が悪いと全然できなかったり、温度や湿度の影響を受けたり、培養液の質が悪いと育ちも悪かったり......。
ただ私は、薬価をできるだけ安くして、多くの人に自由に使ってもらいたいと思っています。と言うのも、私はこの薬を「私たちだけで作ったものじゃない、みんなで作ったものだ」と考えているんです。皆さんからの寄付やたくさんの声が、開発再開を推し進めて下さったわけですから、お金持ちだけが打てる薬ではなく、あまねく還元したいんです。だから、例えば、製薬会社さんが1回5万円と設定しても、それをなんとか最終的には1万円くらいで打てるように、今、仕組みづくりをしようとしています。実際にいろいろな方に相談しているところです。



AIM製剤が完成したら、欲しい人が殺到して、手に入りづらくはならないでしょうか。また、AIMはどのような形状の薬になりそうですか。

宮崎:手に入りづらくなることはないと思います。例えばコロナワクチンなどは、地球上のすべての人が打つので数も膨大ですが、猫は、とりあえず国内ですと1000万頭なので、その分くらいは作れるキャパを持った製薬会社さんと組みたいと考えています。
AIM製剤は、静脈注射になる予定ですが、最終的にはオーナーさんがご自宅で打てるよう、皮下注射の形にできたらと思っています。



人間の場合は同じ薬でも、効く人と効かない人がいます。AIM製剤も、効く子と効かない子がいるのでしょうか。

宮崎:AIMの場合、すべての猫で体内で働いていないという状態なんです。ですからAIMを注射で入れたとき、効果に個体差はなく、本来はすべての猫に効くはずです。そこが普通の薬と違うところと言えます。ただ、他になにか重篤な病気や合併症を持っている子は、AIMによって腎臓の環境は改善しても、なかなか効果が見えてこない場合があると思います。
あとは本当に末期の腎不全ですと、本に登場してくれたキジちゃんのように効く子もいますが、末期となると貧血や出血など体の中でいろいろなことが同時に起こってしまっていて、多臓器不全の状態になっている子も多いので、腎臓に関連した症状は改善しても他のところがどんどん悪くなってしまう......ということはやはりあります。
ただ腎臓病から来る末期の症状に対する効果という意味では、基本的にほとんどの猫に効いています。それに関する論文は、今年中に投稿しようと思っています。

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AIM製剤は、すべてのステージの子に打つことができるのでしょうか。

宮崎:臨床試験(治験)では、病気のステージを限定する必要がありますが、幸いにして動物薬というのは、承認されてしまえば使い方は獣医師の先生の裁量に任されています。ですから、末期の子に使うことも、若い子に使うことも、もっと言えば癌や肥満に対して使うことも基本的には可能です。AIMは腎臓病に限らずいろいろな病気に対して効果がありますので、逆に、発売された後に腎臓病のいろいろなステージや、ほかの病気に対する効果に関する臨床データがたくさん取れて、今度は人間薬を開発するときの参考になるのではないかと期待しています。

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AIMは、どれくらいの間隔で打つことになりそうでしょうか。

宮崎:症状とステージによると思います。「導入期」と「維持期」というのがあるのですが、ステージが進んだ状態ですと、打ち始めの「導入期」というのは、腎臓の大部分が死んでいて、大量のゴミが溜まった状態だったりします。そこにAIMを打って、例えるならゴミ屋敷に大勢の清掃業者を呼ぶかのごとくきれいにする。そういう場合は、最初は頻繁に打つことが必要ですが、データを見ながら徐々に減らしていくことが可能なのではないかと思います。その状態が「維持期」ですね。そして、もっと若いうちから予防的に打つのであれば、ゴミもまだ少ないでしょうから、1年か半年に一度というふうに、ワクチンのように定期的に投与していけば、そもそも腎臓は悪くならないと思います。



AIM製剤の開発と並行して、体内のAIMを活性化させる成分を配合したキャットフードを開発中とのことですが、具体的にどんなものになりそうですか。

宮崎:血液の中にあるAIMは、本にも書かせていただいた通り、航空母艦に乗って敵(ゴミ)を待っている戦闘機のようなもので、体内にゴミが溜まると発進して敵(ゴミ)を攻撃(掃除)するわけです。猫の場合はこの戦闘機が発進できないため、ゴミが溜まりっぱなしになり、さまざまな問題が起きるのですが、去年の末くらいに、猫のAIMでも発進をある程度促すことができるとてもいい成分が見つかりました。薬ではなく、もともとは人間用のサプリとして開発したものです。今、ペットフード会社と協力していくつかの形で急いで開発を進めています。
これを定期的に、ごはんあるいはおやつとして食べていれば、毎日いくらかのAIMが発進して腎臓のゴミを掃除しますので、まだあまりゴミが溜まっていない若いうちから与えていれば、結果として腎臓を保護すると思います。ただ、ある程度ステージが進んでしまった子ですと、これだけではゴミを掃除するAIMの量が足りないかもしれませんが、少なくとも進行を遅くすることは期待できます。ですので、AIM製剤が完成するまでのあいだ、これを使っていただくことで、オーナーさんに少しでも安心していただきたいです。
今年度中には形にできるように頑張っていますので、あと少しお待ちください。



ということで。
宮崎徹先生が長い時間をかけて取り組んできたAIMの研究。本のタイトルにあるとおり『猫が30歳まで生きる日』が実現されることを心待ちにしつつ、私も続報を楽しみに待とうと思っています!


※第6回の更新は11月13日(土)予定です。


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猫のまもりびとライター紹介

あさのますみ

声優、作家。さまざまな経緯で出会った保護猫4匹と暮らしている。2019年、生まれて初めて野良猫を保護したことをきっかけに、地域猫活動や、TNRに興味をもつ。猫に関する著書に、「日々猫だらけ ときどき小鳥」(ポプラ社)、「ねがいごと」(学研)。趣味はカメラ。

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カテゴリ: 猫のまもりびと
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みにゃさまのコメント

うちにも腎不全の猫がいます。
このニュースを聞いて、スゴく期待しています。
あと2年かぁ、うちの子頑張ってくれるかなぁ。

by ペンギン 2021-10-02 10:18

うちの子たちは間に合いませんでしたが、とても希望のあるお薬!読んでいてワクワクしました。
年配の猫さんでも、手術ではなくお薬なので使う事ができそうだし、ありがたいですね。
待ち遠しいです!

先生のお話が思っていたよりわかりやすくて
本の方も読んでみたくなりました。
インタビューありがとうございました。

by かめち 2021-10-02 21:31

宮崎先生!尊敬します!神です!
うちは保護猫5匹いるので少ないですが寄付させて頂きました。
先生!待ってます。
本当にありがとうございます!

by とむママ 2021-10-05 11:22

今年夏から闘病しています。つい数日前から食がかなり細くなってしまいました。皮下点滴も嫌がってなかなか打てません。餌は食べなくは無いのですがとても好みがうるさく、このままでは餓死しそうです。。
先生、頑張って下さい!!我が家のカイ君も闘病、頑張ってくれると信じています!

by カイ君飼い主 2021-11-02 12:53

日本テレビニュースエブリ東大宮崎徹教授の猫ちゃん腎臓病新薬💊開発AIMニュースにでたミミのパパです😅ほんと待ち望み頑張ってくれていますミミ😂体重も少し減ってたまに吐いたりでほんと1日も早く😂そればかりです、毎日家で点滴💉と💊で🤣ほんと助けてやりたいです😂宮崎徹教授先生すべての猫ちゃん救う開発頑張ってください。宜しくお願い致します🤣😺🐾

by 腎臓病マンチカン、ミミ😸 2021-11-21 22:14

宮崎先生!どうか早くAIM出して下さい。
早く腎臓病日々進行している猫ちゃん達を1日でも早く良くしてあげて欲しいです(>人<;)
そしてうちの子も、早く投与してあげたい切なる願いです!よろしくお願いします

by 三毛猫元野良ちやんみーたん 2022-01-06 22:11

猫の腎臓病は、よく聞く話ですね、早くできるのを、心から祈ります。しかし、私の飼っていた、猫はfipと言うなれば難病でした。その薬の研究もお願いしたく、思います。

by チップのママ 2022-01-14 08:05

どうか早くお願いします。
発表から何年間も待っています。
ドリアンだとか秋刀魚だとかで
治れば良いのですが
一回5万~1万円でも
完全に治るならば、命の引換券として
払います。
出来れば、栄養缶詰め、パウチ等
安価なペットフードを願うばかり。
( ω-、)
レシピが知りたい

by バニラ 2022-01-15 09:37

一刻も早く出して欲しい。最初は高くても飼い主は気にしてない。
我が子が長生きして健康になればそれでいい。と思ってるでしょう。

by ポン太郎 2022-01-24 00:12

愛する我が子(15歳の女の子・避妊済み)が先週の健康診断で慢性腎臓病と診断されてしまいました。ステージ1→2の段階のようです。食物アレルギーがありサプリメントや療養食にも制限があります。一日も早くお薬をお願いします!心から待ってます!

by ナナのママ 2022-02-20 16:27

今年に入り、末期の腎不全と診断されました。毎日皮下点滴を自宅で頑張っていますが、食がだんだんと細くなってしまい、もうどうして良いのか分かりません。一日でも早くお薬が世の中に普及してくれますように!同じ辛い思いをしている猫ちゃん&飼い主様がホッと胸を撫で下ろす日が一日でも早く訪れますように(涙)先生お願いします!

by こっちゃん 2022-02-20 22:09

AIMのお薬がうちの子にも早く届くことを願ってます。お薬が届くまで我が子の命を守ってます。

by シュリまま 2022-03-07 15:52

AlM-30 マルカン 売り切れ御免でした。
療養食ではありませんが
早く食べさせてあげたいです。(*≧∀≦)

by ナオのママ 2022-03-09 16:40