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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

保護猫しあわせ物語

2020年12月05日

「保護猫しあわせ物語」Vol.61 パロちゃん

みにゃさまと一緒につくる連載、「保護猫しあわせ物語」。
Vol.61は、飼い主さんにたくさんのことを教えてくれた「パロ」ちゃんのお話です。

その猫に出会ったのは2014年の夏のことでした。
私が住むマンションの目と鼻の先の駐車場に、黒白ハチワレのメス猫が暮らしていました。
駐車場のそばにある会社の社員さんからご飯をもらっていたこの猫を、会社名の一部をもらって「パロちゃん」と呼ぶことにしました。

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私と夫は一目でパロのことが好きになり、翌日からおやつを持ってパロの元に通いました。
はじめは警戒しがちだったパロもすぐに私たちに慣れ、毎朝マンションの前で待っていてくれるようになりました。私も夫も動物と暮らした経験はなく、インターネットで猫のことを色々調べ、お外で暮らす猫を取り巻く事情についても初めて知ることとなりました。
家にいる時は、いつも駐車場が見える台所の窓にかじりつくようにして、パロの姿を探していました。
そして出会って半年になる頃、事件は起こりました。
いつもと様子が違うパロに近づくと、右目と耳の間の柔らかい部分(猫の額?)に、小さなネジが刺さっていたのです!! 驚きパニックになった私は、すぐにホームセンターに走り、キャリーバッグを買い、病院を調べて再びパロの元へ走りました。 ネジは既に取れていましたが、化膿してはいけないので病院に連れて行こうと思いました。でも何度挑戦してもうまくいきません。
猫初心者だった私が買ったキャリーバッグは布製で、閉じるのにもたついてしまい、その間に逃げられてしまうのです。洗濯ネットを使うという知識もありませんでした。早めに帰宅した夫にも協力してもらいましたが失敗続きで、これ以上の負担はパロにとって良くないと思い、少し様子を見ることにしました。
何度も確認に行きましたが、傷はみるみる回復し、2週間後には完治してしまいました。運が良かったとはいえ、猫の回復力に驚嘆した出来事でした。
それから穏やかな日々が過ぎてゆき、その頃には早朝だけでなく夜もパロの元に通っていました。 パロはどこにいても私の持つキーホルダーの鈴の音が聞こえるとすぐに出てきてくれました。
2015年の秋には、夫の帰宅時間に合わせて、私は駐車場にいるパロに声をかけて、一緒に並んで歩いて夫を迎えに行くようになりました。夫と合流するとまた3人で歩いて帰り、それは本当に幸せな時間でした。
パロは私たち夫婦にとってかけがえのない存在となっていて、ずっと抱いていた「パロと暮らしたい」という想いが抑えきれなくなっていました。でも、ペット可の物件はなかなか見つからず、焦れったい思いに駆られていました。
そんな2015年の12月、いつものようにおやつを食べていたパロが、しゃがむ私の膝の上に上がろうとする素振りを見せました。私は翌日ダンボールを持参し、その上に座ってパロを誘いました。するとパロはすぐに私の膝の上で眠り始めたのです!!
震えるほど嬉しかったですが、同時にアスファルトの冷たさが堪えました。パロはいつもこんなに冷たいところを歩いているのだと切なくなりました。
それからしばらくダンボールを抱えてパロの元にいきましたが、その私の姿を見た夫が、不審者に間違われたら大変だからと、車の後部座席に誘導することを提案してくれました。おそらく初めて車というものに乗ったパロは最初こそ怯えていましたが、すぐに私の膝に乗り、そのまま1時間ぐっすり寝てしまいました。
膝で眠るパロにかけるフリースと、後で飲ませる温かいお水・おやつを持ち、沢山のカイロを身体中に貼り付けて、毎晩真夜中の2〜3時頃パロを車に連れてきました。
身体中が冷え切ってしまいましたが、パロがのっている膝だけはとても温かく、プゥープゥーとパロの寝息だけが聞こえる静かな時間は、今でも大切な思い出です。そして起きると2人で駐車場までゆっくり歩いて、持ってきたお水を飲んで、駐車場のパロの寝床にカイロを仕込んでお別れする、そんな幸せなひとときは12月から3月の終わりまで続きました。
2016年5月、ようやく中古マンションを手に入れることができました。
ご飯をくれている会社の社員さんに事情を話すと、パロを引き取ることを快諾してもらえました。
社員さんの話では、パロは10年ほど前に駐車場に連れてこられたそうです(その時すでに避妊手術は終えていたらしい)。そのまま遺棄されたのかどうか、詳しいことを知る人はいないとのことでした。
お腹を空かせているパロを見かねて、社員さんがご飯をあげるようになったそうですが、人事異動などで人が変わってもずっと引き継がれていたそうです。
そして私たちの引越しを済ませ、パロを迎えに行く日。
前回の失敗を踏まえ、2wayで開くハードキャリー、洗濯ネットを準備して夫とパロの元へ向かいました。
明らかにいつもと違う様子にパロは警戒して1度目は失敗。でも2回目、なんとかパロを抱き上げて洗濯ネットに入れることができました。
我に返ったパロは、近所中に響き渡るような叫び声を轟かせ、大騒ぎのなか、住み慣れた駐車場に別れを告げました。

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我が家に来てからのパロは、寝室のベッドの下に入り浸りでした。おそらく駐車場の車の下を思い出して安心できたのだと思います。

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家の中の色々な音、掃除機や水仕事の音などに戸惑っていたのでしょう。
少しずつ慣れて、毎晩私の脚の間で眠るようになりました。
冬は床暖の上やコタツの中でヘソ天で寝ている姿を見るたびに、幸せに胸が震えました。でも、コタツよりも好きだったのは私の膝の上でした。私が家事を終えるのをいつも待っていてくれ、ソファに座ると飛んできました。
家猫になってからパロは一度も外に出たがることはなく、テーブルの上にも決して登らない、イタズラも一切しない、賢く大人な猫でしたが、甘えんぼうな一面もある、本当に素晴らしい、魅力的な猫でした。
最初はおもちゃを見ても無反応だったパロが、だんだん一緒に遊んでくれるようになり、家中を2人で走り回って遊んだことは本当に幸せな思い出です。この時間がずっと続いたらいいのにと思っていました。
パロの身体に最初に異変が起きたのは2017年10月中旬でした。
血の混じった粘液のような便をするようになり、下旬には突然フードを食べなくなったのです。病院に行っても原因は分からず、トイレに何度も駆け込んで、血粘液を出していました。食欲もどんどん落ちて、当時の手帳を見ると、どうしてもっと早く精密検査を受けなかったのか、と自責の念に駆られます。
消化器官にリンパ腫ができているとわかったのは12月の末のことでした。
年明けに抗がん剤の治療を始めました。一度は食欲も回復しましたが、すぐに副作用に苦しむようになり、毎日点滴に通う日々が続きました。その年の冬はとても寒くて、一番暖かいリビングで過ごしてもらうように、私は毎晩ソファでパロをお腹に乗せて寝ていました。
でも、日増しにパロは弱っていって、2018年2月22日の夜、パロは私と夫に見守られながら旅立って行きました。出会ってから3年半、一緒に暮らして1年9ヶ月でした。

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パロは幸せだっただろうか、経験の浅い私たちの元に来たことでかえって苦しませたのでは?
そんな後悔はずっとありますが、今はっきりとわかることは、パロは本当に大きくて、深い「愛」の存在で、私たちに「命の責任を持つことの重さ」、「動物と共に生きることの素晴らしさ」といった沢山のことを教えに来てくれたのだと思います。
そして、「本当に動物を幸せにできる飼い主とはどんな人間なのか」という難しい宿題を残していきました。
パロから学んだことを生かして、動物を幸せにする飼い主を目指す。それこそが今の私ができる、パロへの恩返しなのだと思っています。
パロが亡くなってまだ日の浅いうちに、保護猫のミエルを家に迎えたのはそんな理由からでした。

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今、私はパロへの感謝を込めて「#天使パロ」というシリーズで、インスタに絵を描いています。
そしてご縁があって我が家に来てくれたミエルと、かけがえのない日々を過ごしています!


(パロ/亡くなった時は推定11〜12歳 ペンネーム: yuka +さんより)




スタッフより

みにゃさまからの、「保護猫しあわせ物語」を募集しています。

保護される前、または家に迎え入れる前のエピソード(Before)と、家に迎え入れた後しあわせに暮らしているエピソード(After)の2つを盛り込んでお送りください。
ご応募いただいた作品はリサイズや加筆修正等させていただく場合がありますのでご了承ください。

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みにゃさまのコメント

昼の休憩室で泣いてしまった。
その猫と出会えた事で自身が幸福を感じたならその猫もまた同じ幸福を感じていたでしょう。

by ぶうちゃん 2020-12-05 12:41

御縁があって出逢ったので、その出逢いには意味があります。パロちゃんは幸せだったと思います。今度はミエルちゃんに受け継がれてゆくのだと思います。涙腺崩壊でした、、。
猫と人間が共存して暮らせる。そんな優しい世の中になります様に、、。

by さくら 2020-12-05 14:33

読んでいて、涙が止まりませんでした。一匹の…野良とも言える仔に、こんなにも心を寄せてくださる方が居るのかと…。yuka さんとご主人さまに愛されたパロちゃんは、間違いなく幸せだったと確信します。

by ジハにゃん 2020-12-05 16:10

大丈夫、大丈夫♥
yuka+さんご夫婦の愛に包まれて
その優しい手で送られたパロちゃんは
とっても幸せな子です(^・^)
いずれ、その生ききることの
叶わなかった猫生を抱えて
大好きなyuka+さんの許に
その膝に、きっときっと
帰ってきますよ~(^^)

by にあ 2020-12-05 22:26

拝読して、とても暖かくそしてパロちゃんのことを思い、涙が止まりません
本当に本当に最後は幸せな時間を過ごせたと思います
ひとりで頑張ってきたパロちゃんを保護してくださってありがとうございます
そして野良さんだったパロちゃんに餌をあげていた皆さんにもありがとうございます
私も学ばせていただきました
ありがとうございます

by けいこ 2020-12-05 22:54

愛情が伝わって心が温かくなりました。
愛情を繋げてくださりありがとうございました。

by はぴこ 2020-12-05 23:06

読んで泣きました❗️こんなに猫🐱さんは幸せだったと思います‼️やさしい夫婦に、引き取られて、嬉しかったと思います❗️

by ばつ丸 2020-12-08 02:08