ページ内を移動するためのリンクです。
ここからメインコンテンツです

[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2019年10月01日

台風のあと

20191001-1.jpg

すっかり大きくなったシュウくんが、大あくびをしています。
すべて世はこともなし、みたいな。

でもね、シュウくんのくらす房総半島の里山には、先月9日未明に、それはそれは大きな台風が通過したのです。
シュウくんたちは、猫小屋で、みんなと身を寄せ合って一晩じゅう暴風雨の音におびえながら過ごしました。
さいわい、猫小屋は、長平父さんの頑丈な手作りなので、何一つ被害はありませんでした。

20191001-2.jpg

翌朝、裏庭に飛び出した猫たちは、目を丸くしました。
山から、20メートルはある大木が根こそぎ裏庭の方に倒れ込んでいたのです!
夜中に、一度、ドドドドドという大きな音が聞こえたのは、この音だったのでした。

猫たちは、さっそく倒木をアスレチックにしてフィーバー。
「猫たちが楽しそうだから、しばらくこの木は片づけないでおきましょう」と麻里子ママが言うので、長平パパは、もっと遊びやすくなるように、小枝を払ってやりました。

20191001-3.jpg

電気が来なくても、パパもママも、ちっともたじろぎません。
プロパンガスでご飯を炊いて、おにぎりをどっさり作り、「大丈夫か」と尋ねてきた近所のひとが「何も食べてない」というので、ふるまったりしました。
ふたりで里山を切り開いて長年暮らしてきたのですから、天変地異には慣れっこです。

20191001-4.jpg

あれ、ゆずちゃん、久しぶり。この頃、ピザ釜が使われないので、ゆずちゃん、すすだらけではありません。

20191001-5.jpg

「みんな元気ですから、安心してね」と、麻里子さんとちくわくん。
照れ隠しの、ちくわくんのブータレ顔です。
今を盛りのヒガンバナの赤が、房総の大地で生きる者たちの強さの象徴のように思えました。

20191001-6.jpg

館への正式ルートが倒れた電柱で塞がれてしまったために、電気や水の復旧がかなり遅れた松山庭園美術館。
房総では、水はタンクからモーターで吸い上げている家が多いので、電気が止まると水も止まってしまうのです。
でも、美術館も休館せず、裏道を通ってきてくださる客に入場料無しで開放という、心意気。
空き猫缶に立てたろうそくの明かりの中、サロンでは、いつも以上に熱く猫話に花が咲いていました。

20191001-7.jpg

さて、いちばん被害の大きかったのが南房総。
多くの家がブルーシートに覆われ、道ばたに瓦礫が積み上げられていました。
漁港暮らしの猫たちは、建物の軒下にでも潜りこんでいたのでしょうか、みんな無事。
夕方、ご飯を運んでくれるNPO「ドリームキャット」の千鶴子さんがやって来るのを、いつものように待っています。

20191001-8.jpg

界隈の大あねご、マリちゃんも、何事もなかったかのように海を見つめていて、何よりです。

20191001-9.jpg

猫たちのシェルターや病院を兼ねている千鶴子さんご夫婦のご自宅では、隣家からの飛来物でガラスが割れ、暴風で車庫がへしゃげました。
「でも、海辺にいる猫たちは全員元気。この辺の猫はやわじゃないよね。人間も負けてられない」と、千鶴子さん夫妻も、後片付けに精を出していました。

キュー太くんやポチちゃんたち10匹が暮らしているあおいちゃんのおうちも、被害甚大だった南房総です。
10匹の猫たちは、嵐の夜、一部屋に集まって、おっかあたちにずっと話しかけていたそうです。
おっかあの勤め先は不動産屋さんなので、台風の影響はとりわけ甚大。どんなに途方に暮れたことか。
それなのに・・・・。

20191001-10.jpg

台風のあと、、おっかあは、路頭に迷って目がぐじゅぐじゅにつぶれていた子猫を保護していました。
あおいちゃんに大事そうに抱かれた小さな黒猫さんの名前は、「つぶ」。
「猫どころじゃない状況なんだけど、猫が立ち上がる元気もくれているの」と、おっかあ。
粒のように小さないのちでも、見捨てることのできない一家なのでした。
あおいちゃんの小学校では、給食が今もストップで(3日前から、やっとご飯とゼリーのみ配布)、おっかあがおかずを毎日持たせていますが、あおいちゃんはこんなことを言っていたそうです。
「台風のおかげで、おっかあの作ってくれたお昼が食べられるなんて、シアワセ!」って。
停電の夜も、ミラーボールで楽しく過ごしたというおっかあ一家。なんてすてきなプラスシンキング。

20191001-11.jpg

日が暮れて飛び込んだ、岬の突端の喫茶店「岬」。
ここでは、数日電気も水も止まりましたが、裏に大きなタンクがあったので、節子さんはホットコーヒーのみでお店を休まず開いていたそうです。
遠方から駆け付けたバイクの若者が凍らせた水を何本もくれたり、以前番組ロケで来たタレントさんが「大丈夫でしたか」と立ち寄ってくれたり、なじみ客が猫ご飯を持ってきてくれたりと、いろいろな人情をかみしめた「台風のあと」だったと、節子さんは、しみじみ言うのでした。

20191001-12.jpg

夜の漁港の猫たちも、元気そうでした。
顔なじみに漁師さんに夜道で会ったので、「猫たち、台風、怖かったでしょうね」と言ったら、こんな答えが。
「いやあ、猫たちは、台風が来る前から察して、とっくに安全な場所に避難してたよ。外猫は、人間が考えるより、ずっとずっと賢いよ」

台風の2日あとから、水やパンや猫餌などを届けに通い出しましたが、1週間ほどたつ頃には東北から中国地方に至るまでさまざまなナンバーの「災害支援」の旗をつけた作業車と行き交うようになりました。
行政による支援体制が整ったのを実感し、先月29日にて個人の支援をいったん終えます。
房総の猫たちへと、猫餌や、毛布やタオルなどを私に託してくださった皆様、ありがとうございました。
「後かたずけの一休みに」と、段ボールいっぱいのドリップコーヒーを託してくださった、浦安市の「猫実(ねこざね)珈琲店」さん、いろんなかたに届けて喜んでいただけました! ありがとうございました。

20191001-13.jpg

農漁業被害、観光業被害が並大抵ではなかった房総は、少し貧しくなりましたが、もともと、いろいろな動物たちと共生しながら大地に立って、我慢強くつつましく逞しく生きてきた房総人です。
どんどん遊びに行くことが、私たちにできる最大の復興支援になるはずですので、近くの方は、足をのばしてくださいね。



「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

yorisoiatte.jpg
寄りそう猫
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

nekodatte200-290.jpg
猫だって......。
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

satoyamanoko.jpg
里山の子、さっちゃん
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

shiawaseni.jpg
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

Instagram

カテゴリ: 道ばた猫日記
  • ツイート
  • いいね!

みにゃさまのコメント

被害に遭われた全ての皆様に、心からお見舞い申し上げます。
こんな時、人の暖かさ、優しさが復興の大きな力になりますね。可愛い猫たちは癒しになります。私も千葉県民の一員として頑張ります。
ダムのみんなも美術館の子達も無事で良かったです。1日も早く元の生活に戻れますように。

by ふみちゃん 2019-10-01 16:07

心よりお見舞い申し上げます。

行きますよ!微力でも、それが皆さまの力になるなら。

by さくら 2019-10-01 17:23

ネコチェックって結構細かいんだよなあ。

ドラキーも台風の翌日、周辺の調査を
念入りに行ってたし(^_^;)


やっぱ里山近辺は停電くらったよね。
こういう時自然に近い暮らしをしていると
動じない。

おいらの実家は大分の山奥で
水道は山の水だし、エアコンないし
冷蔵庫もあんまり使わない。
停電きても、あんまり影響なかった記憶
あるだによ。


ちくわはブータレ顔というより


「腹」(^_^;)


また一回り詰まってきてるんでは
ないだにけ??


喫茶店「岬」はあの映画化になったとこだっけ?
昔、二度ほど行ったことあるだよ。


あの辺のおすすめは
磯根崎から東京湾観音の下あたりにある

通称
「チリ海岸」!

グーグル・マップで見るとわかるけど
めっちゃ狭い砂浜が数キロ続いてるのだ!

ここを歩き通すと、東京の近くにこんな秘境海岸が!
って思うだによ。

ちなみに台風の時とか行ったら、
砂浜まで波がぶっとんでくるので
命の保証はないだ!

by ドラ猫マスター 2019-10-01 17:28

私の住んでるところはあまり台風の影響は受けないので
深刻な状況になったことがない
ありがたいことです
被害を受けた皆様には
心からお見舞い申し上げます
里山の皆さんもお元気そうで何より

元気なちくわの姿を見たら
ドラ猫マスターさんも喜ぶでしょう(^_^;)

by ぽん子 2019-10-01 17:36

台風の後、私の頭の中は…(佐竹さん、きっと今頃あの地域をくるくると駆けずり回って普段以上に大忙しに違いない!)と…。やはり想像していた通りでした。
大変な状況の中、被災者の皆様がそれぞれの場所で逞しく日々の暮らしを守ってらっしゃる様子を伝えてくださり有り難うございました。
猫さん達の危機管理能力にも脱帽です!みんにゃ無事でにゃにより!

by マム 2019-10-01 20:04

被害が大きかったので、HPで調べました。
まりこさんの所が一番心配でしたが、大丈夫。
ワンニャンも無事で安堵しました。倒木を遊び場にするニャン達は、逞しいですね。
さっちゃんが守ってくれたんだな。と思っています。
館山も被害大きく、給食センターがダメージ受けて。いまだにお弁当持参(親戚がいます)
ニャンのパワーの底力を見せてくれましたね、
ネコ施設の支援物資は、送らせて頂いてます。
早い復旧を祈っています。
がんばろう千葉

by とら 2019-10-02 01:14

ちくわくんの照れてのぶーたれ顔。(≧▽≦)
最高の2ショットですね。この写真の中から温かい気持ちが伝わってきました。
台風被害、いまだ大変な地域もあると聞きます。
どうか一日も早く人も、動物も日常を取り戻してほしいですね。

※わかさまのところを先日のぞいたのですが不在でした。そのうちまりこさんへの手紙をお預けできたらと思います。^^

by みり 2019-10-02 08:20

まだまだ災難の真っ只中にある方も多いのと思われます。
どうか心折れることがあってもなんとか生きてください。
お願いします。


普段から自然に近いところで暮らしてる生きものは人も猫もたくましいですね。
知ってる猫たちが無事でよかった。
知らせてくださってありがとうございます。

台風が近づくと気圧が下がる影響か昔の傷後が疼くんでわかります。
猫たちも同じように何かを感じるんでしょうね。
さすがです!

普段から音に敏感で臆病な猫たちはどんなに怖かったことか。
東京の街中で暮らすウチの猫どもでさえ風の強さに怖がってましたから。
よくがんばったね。


by 才蔵 2019-10-02 08:42

>ふみちゃんさん

早くまた、道の駅で房総の新鮮で安いお花を買いたいです。
春先には路地花が満開になりますように。

by 道ばた猫 2019-10-02 10:13

里山のにゃんこ達も、美術館のにゃんこ達も、港のにゃんこ達も大変な被害の中、みんな無事で良かったです。ちくわ君の元気な姿も見られたし、茉莉子さん本当にお疲れ様でした。みんな頑張っている姿に、こちらが元気をもらいましたよ。ありがとうございます。それにしても、あおいちゃんのお母さんの猫助けには脱帽です!!

by ぺったんの母 2019-10-02 10:13

>さくらさん

「いきますよ!」…おお、たのもしい。
房総は山あり海あり人情ありおいしいものあり漁港猫あり…存分に楽しめます!

by 道ばた猫 2019-10-02 10:17

>ドラ猫マスターさん

おお、あの海岸線をご存知とは! 新舞子海岸は通い詰めた海辺ですし、カフェグローブから海辺へ出て磯根崎まで時たま歩きます。「誰もいない海・・」って歌いながら(笑)。

by 道ばた猫 2019-10-02 10:30

>ぽん子さん

ちくわ氏は、この頃猫小屋のは戻らず、夜もカフェに入りびたりだそうです。
やはり徒党を組まない自由猫気質なのかなあ。

by 道ばた猫 2019-10-02 10:34

>マムさん

はい、ご想像通り(笑)。なにしろ取材して仲良くなった猫さんが山ほど暮らしているので。
でも、彼らは、やはり、賢くたくましかった!

by 道ばた猫 2019-10-02 10:38

>とらさん

被災地の漁師さんたちおっしゃるには、「ここなんかより、奥に入った村がもっと被害がひどい。でも、助け合ってがんばってるよ」って。猫問題も、復興も、モノを言うのは、人間関係ですね!

by 道ばた猫 2019-10-02 10:42

>みりさん

わかくんのとこ、のぞいてこられたんですね! ご夫妻も介護現場に行っていることが多いので、また、のぞいてみてください。手紙、楽しみにしています!

by 道ばた猫 2019-10-02 10:45

>才蔵さん

3・11での津波で漁協内もひどい被害に遭った房総の漁村でも、猫たちは津波の数分前にいっせいに高台の方へ駆けて行ったそうです。外猫の危機管理能力、おそるべしです。

by 道ばた猫 2019-10-02 10:50

>ペッたんのお母さま

そうなんです。日々の「たいへんなこと」をよく知っているひとこそ、よりたいへんな者へ手を差し伸べる、というのが、猫日記を続けてきての実感です。おっかあ、あっぱれ。

by 道ばた猫 2019-10-02 10:54

私もかつて千葉県佐倉市に住んでいました。今回の台風被害はとても心配しながらニュースを見ていました。
エネルギーインフラも電力一本に頼るのは危険ですね。我が家は電気のほかプロパンガス、灯油とリスクの分散を図っています。次は薪ストーブをと考えています。今日聞いた話ではプロパンガスを燃料にした発電機もあるそうです。今回久しぶりに私の大好きなちくわ君に会えてうれしかったです。照れ屋でシャイなちくわ君が無事でいてくれてよかった。

by ムヨク 2019-10-02 19:25

>ムヨクさん

オール電化が進んでいる都心だったら、どんなパニックになっていたかと思います。
リスクの分散は、各家庭で考えておくべきでしょうね。七輪飼っておこうかなあと、思案中です。

by 道ばた猫 2019-10-03 01:33

佐竹さん、台風後の様子をたくさん、ありがとうございます!!花はなの里のみんな、麻里子ママさん!!あらぁお久しぶりゆずちゃん!!ちくわも!!頑丈な猫部屋、長平パパさんさすがです、みんな倒れた大木でアスレチックだなんてたくましい!!すごいね、元気な姿が一番うれしいです!!ヒガンバナもきれいですね。松山美術館、休館せずだなんてすごいですね。ずーっと訪れたいと思っていますのでこの秋に行きたいな。房総の猫たち、なんとたくましいのでしょう。マリちゃん、良いお顔と姿。どんなことがあっても平常心、動じない猫たちを私も見習おう。
つぶちゃん……また可愛いお名前ですね。あおいちゃん、つぶちゃんと可愛いづくし。ご自身たちも大変でいらっしゃるのにあおいちゃんのおかあさんもあおいちゃんもすごいです。あおいちゃんの言葉も素敵!!
早く早くいつもの生活に戻りますように願っています。
佐竹さん、今回も力の涌き出るお話をありがとうございました。私も頑張ろう。

by とも 2019-10-04 07:26

>ともさん

はい、励ましに行って、逆に元気をいっぱい貰って帰ってきたのですよ~
やっぱり、房総の底力って、すごい! 大自然と共に生きてる人はつよい!

by 道ばた猫 2019-10-04 21:31

台風による停電3日目の午後佐竹さんが飲み物、ゴハン、おやつ、ニャンズのゴハン等々
たくさんの荷物を抱えて心配そうに花はなを訪ねて下さいました。
いつも佐竹さんの声がすると花はなのワンズ、ニャンズは大喜びで大歓迎です。
先日も立ち寄って頂き「猫実コーヒー店」のドリップコーヒーをプレゼントしていただきました。なんと優しい紙のパッケージ!
どこか懐かしさを感じる紙のパッケージが嬉しくなって直ぐに開けたらなんといい香り!
その深く濃い香りに感動しました。
お湯を注いで至福の一杯・・台風での疲れを一瞬忘れさせてくれました。
ありがとうございました。
いろいろな人達の暖かさに触れ「また頑張ろう!」と決意を新たにした台風の後でした。

by 麻里子 2019-10-04 23:21

すべての方に、少しでも早く安心出来る生活が戻りますよう、願わずにはいられません。

by さび茶風 2019-10-05 12:30

茉莉子さん、ご報告ありがとうございます!みなさん、たくましいな。むしろ、こちらが元気をいただけるくらいです。つぶちゃん、良かったね。そして、あらためて、茉莉子さんの行動力にもすごいな、と。自分ももっとがんばらねば!台風の被害に遭われたみなさまが、1日も早く日常の生活が取り戻せますように!

by あべんぬ 2019-10-05 21:40

>麻里子さん

猫実珈琲店さんのお見舞いドリップが疲れを癒してくれてよかったです!
いろいろな方が「花はなの里は大丈夫だったかしら」と心配なさっていたので、ブログで報告でき一安心です。

by 道ばた猫 2019-10-07 16:24

>さび茶風さん

温暖化で、これからはどの地域も脅威にさらされるでしょう。国の支援体制作りが何よりすぐに望まれますけど、立ち直りには助け合いあってこそとあらためて思いました。

by 道ばた猫 2019-10-07 16:29

>あべんぬさん

はい、房総の秋も冬も、魅力的ですから、たくさんの人に訪ねてもらって、お互いに笑顔を交わし合って元気になればいいなあ~  

by 道ばた猫 2019-10-07 16:35