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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2018年06月19日

新しい居場所

昨日の大阪地震で、大切な家族やおうちを失った方々に、心よりお悔やみを申し上げ
ます。
きょうの道ばた猫日記は、ある日突然、飼い主と住処を失った猫たちの、再出発の物語です。

新婚の泰祐さんと真理子さんご夫婦が暮らすマンションは、さいたま新都心に近い町にあります。
1年前に結婚する時に、探しに探してやっと見つけた、猫OKのマイホームでした。
泰祐さんには、2匹の「連れ子」がいたからです。

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りんちゃんは、胸と足先が白いキジ白さん。5歳のメス猫です。
知らない人にもすぐ興味しんしんで寄ってきます。

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真理子さんいわく「自由気ままな性格で、けっこうやんちゃ娘」とのこと。

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もう1匹のももくんは、額とシッポの先が黒い黒白さん。7歳です。

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「ビビリなので、馴れるまで時間がかかりますが、懐くとベタベタ甘えん坊」とのこと。
残念ながら、取材の日はカーテンの陰から出てきてくれませんでした。
2匹はとても仲がいいそうです。

やさしいお父さんとお母さんに甘え、のんびり暮らすりんちゃんとももくんですが......じつは、つらい経験をした末に、泰祐さんに引き取られた子たちなのです。
2匹がどういう生まれなのか、血縁関係にあるのか、今となっては知ることができません。
りんちゃんたちの飼い主さんは、2年前、突発的に窓から飛び降り、自ら命を絶ってしまったからです。アパートには5匹の猫が遺されました。

遺族の方たちは、あまりのショックに、猫の世話をする余裕が持てませんでした。
猫たちは、1週間、アパートの部屋で鳴き続けていたそうです。

その話を耳にしたのが、テレビ番組制作の仕事をしている泰祐さん。出演者のひとりから「こんな状況の猫たちがいる」と聞き、心を痛めました。このままでは保健所送りになってしまうでしょう。
「ひとまず引き取って、5匹の里親を見つけよう」と、泰祐さんは決心しました。
その時まで犬派で、猫と暮らしたことなどなかったそうですから、「猫が好き」というより、「ほっとけない」という気持ちだったのでしょう。

5匹のうち、3匹はまだ幼く、「この子たちなら里親が見つかる」と、保護団体のシェルターが引き取ってくれました。
残ったのはオトナ猫2匹。りんちゃんとももくんには、なかなか里親がみつかりませんでした。

「2匹をうちの子にしようと思う」と泰祐さんから相談されたのが、結婚前の真理子さん。
「うん、ぜひそうして!」と二つ返事ですすめました。
りんちゃんは1週間で、ももくんは2週間で、泰祐さんとの新しい暮らしになじんだそうです。
そして、1年前に結婚してから、ふたりと2匹、この猫マンションで仲良く暮らしています。

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「りんは、ビニール袋とかお菓子袋とかくわえて『とったど~』って得意顔で見せに来ます。猫フードの袋も爪や歯で開けちゃうので、米びつに保管しているんですよ」と、真理子さん。
ももくんは泰祐さんのおなかの上が一番好きな場所なんだとか。でも泰祐さんが出かけちゃうと、真理子さんのもとへ。
「2匹とも、人間のそばが大好きで、甘えん坊なんです。きっと、前の飼い主さんにとても可愛がられていたのだと思います。そんな子たちが、突然甘える人を失って、どんなに悲しかっただろうなあ......。」

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「りんは、袋や箱があると、入らずにはいられないんですよ。箱を置いてみましょうか」と、真理子さん。

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やっぱり、すぐ入りました。そして、大あくび。

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安心しきってくつろいでいます。

犬派だった泰祐さんは、今では猫派。
帰宅すると、「帰ったじょー」「何、やってんの」と、猫に話しかけっぱなしなんだとか。

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真理子さんは、作家志望。
お勤めのある平日は、夜に2時間、おやすみの土日もパソコンに向かいます。
書くのは、不思議なシチュエーションの奇譚もの。
あれ、りんちゃんがやってきました。

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真理子さんの膝の上で収まりました。
「これまで、猫がチラッと登場する短編は書いたことがありますが、りんとももは未登場。りんとももが登場するおもしろい話を書くのもいいですね」
りんちゃんの尻尾はみごとなかぎ尻尾ですから、文学賞新人賞なんて持ってきてくれるかも!

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ところで、姿を現さなかったももくんの写真を、真理子さんが後で送ってくれました。

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りんちゃんといっしょに、のんびりまったり。
「2匹が両脇にピタ―ッとくっついているときがいちばんしあわせ。安心しきった顔を見ると、2匹一緒にひきとって、ほんとうによかったです。」
2匹が人間のそばにくっつきたがるのは、もしかしたら、飼い主との「分離不安」のトラウマがまだ少し残っているのかもしれません。
りんちゃん、ももくん、新しいすてきな居場所がみつかってよかったね。
ずっとずっとの家族、ずっとずっとのおうちだよ!



「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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猫だって......。
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

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里山の子、さっちゃん
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

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しあわせになった猫 しあわせをくれた猫
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

不謹慎ですが、私は自殺するような人に同情はしません。まして、こんな可愛い子達につらい思いをさせるなんて、いくら生前可愛がっていてもあまりに無責任です。自殺するなら動物は飼わないか行き先を決めてからにして欲しいです。それにしてもりんちゃんも、ももくんも可愛いですね。いつか真理子さんが書いたこの子たちの物語、読んでみたいです。
娘がめでたく婚約しました。ちゃちゃ子とぽんずにパパができます。とっても優しいパパです

by ふみちゃん 2018-06-19 16:11

りんちゃん、ももくん、ずっとずっとのおうちがみつかって良かったね。もう大丈夫だよ!!うちのぺったんもつらい過去を持つ身、寝ている時以外はストーカーのように私や夫のあとをついてまわるチョーひっつき虫ですよ。ますます愛おしくなります。それを見て他の子が焼きもちをやくのでとても気を使う身なのですが・・・。二度と不幸にならにように、もしもの時は・・・といろいろ思慮しています。

by ぺったんの母 2018-06-19 16:20

どんな事情が主さんにあったのか・・・一緒にいたねこたちがきっとなんとかしようとしていたけど、どうにもならなかったのかもしれませんね。
残されて子たちがみんな幸せになってくれたのは、本当にめぐりあわせですね。幸せになっていてくれてよかったです。
ほんとに毛ツヤがいい、大事にされているのがわかります、そしてカメラ目線のりんちゃん!
うちの自慢のママなのよ!とでもいいたげな表情です♪
いつまでもしあわせに♪

by あずにゃん 2018-06-19 17:00

キャ~りんちゃんべっぴんぴ~ンヽ(≧▽≦)/
ももくんのお顔、もっと見たいニャ~♥

by にあ 2018-06-19 21:28

人間は、弱いですね~
なんとなく命を絶ってしまう。
だから猫に癒されるんでしょうね・・・

by ミンディー 2018-06-20 01:09

>ふみちゃんさん

お嬢さんのご婚約、おめでとうございます!
ちゃちゃ子ちゃん、ぽんずちゃん、パパにいっぱい甘えるんだよ~~。

by 道ばた猫 2018-06-20 20:03

>ぺったんのお母さま

つらい過去のある子は、いっそういじらしさがありますね。
人の心を読むチカラもあるような……。うちの子も「ここにいるよ」っていつも訴えています。

by 道ばた猫 2018-06-20 20:12

>あずにゃんさん

りんちゃん、ももくんは、前の飼い主さんがつけた名前です。可愛い名前を付けてもらっていました。
「混乱しないように」という新しい飼い主さんの気持ちがあたたかくて!うれしかったです。

by 道ばた猫 2018-06-20 20:16

>にあさん

りんちゃん、きりっとしたべっぴんさんですよね~。
ももくんんも、お顔だけしか見られなかったけど、シュッとしたイケメンでした! 

by 道ばた猫 2018-06-20 20:21

>ミンディーさん

たしかに、ニンゲンは、猫の愛らしさだけでなく、しなやかさ、したたかさ、自由さ、「今を生きている」姿に、憧れ、少しでも近づきたいと思うのかもしれません・・・。

by 道ばた猫 2018-06-20 20:25