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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2017年09月05日

「めぐりあい」その1・・・すがってきた子猫

秋晴れの土曜日。
白猫モコちゃんは、大好きなマサキお兄ちゃんと、おうちの周りのお散歩に。

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モコちゃんは、2歳のメス猫。葉っぱの匂いを嗅ぐのが大好きです。
マサキお兄ちゃんが、お仕事の休みの日は、こうしてよく一緒に散歩をします。

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道行く人に「可愛い猫さんですね」とか、「よくおとなしく散歩できますね~」などと声をかけられるのも、しょっちゅうです。
おしゃべりが好きなモコちゃん、散歩の間も「ニャ、ニャ、ニャッ」とマサキさんに話しかけてばかり。

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「ニャ、ニャッ」
これは、どうやら「あっちの道に行こうよ~」」といっているようです。
ぴったり息の合ったおふたりさんですが、それもそのはず。
マサキさんは、ひとりぼっちでヨレヨレになって道ばたでうづくまっていた幼いモコちゃんに「どうしたの」と声をかけてくれた人。
「このひと!」と、モコちゃんがすがりついた運命の人だったのですから。

ふたりのめぐり会いは、2年前の10月。
マサキさんは、仕事の研修で、栃木県の工場の宿泊施設に泊まりこんでいました。
週末で、明日の朝は、千葉県の自宅に帰るという金曜の深夜。コンビニまで買い物にと、外に出ました。
宿泊施設は町から離れ、田んぼの広がる田舎。コンビニまで1キロはあります。
工場の敷地から出たところの道ばたの、湿った落ち葉の上に、まだ生後2か月くらいの子猫がうずくまって寝ていました。そばには、アルミの配管があり、車が通る昼間はそこに潜んでいたのかもしれません。

夜目に、白く浮き上がって見えたのですが、よく見ると、何日も放浪した果てのような、うす汚れた痩せた子でした。
「どうしたの」
声をかけると、子猫は足元にスリスリして甘えてきました。そして、肩まですがるように登ってきて、下りようとしませんでした。下腹はげっそりしています。
とにかく何か食べさせようと、マサキさんは、子猫を肩に乗せたまま歩いて、1キロ先のコンビニへ。
店の外でおろすと、子猫は停めてあった車の下に潜っておとなしく待っていました。
猫缶を開けてやると、わき目もふらずガツガツ食べ続けます。

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マサキさんは、母親のアヤコさんに携帯で「子猫を保護したい」と相談すると、「連れて帰ってもいいよ」との返事。
これまではアパート暮らしだったので、動物を飼うことはできなかったのですが、ちょうど一軒家に引っ越したばかりだったのです。

宿泊施設に連れ帰り、管理の人に頼みましたが、猫は敷地内に入れてはダメとのこと。
しかたなく、またもとの配管のそばに子猫を置き、「明日の朝までここにいるんだよ」と言い聞かせました。
朝、子猫がいなくなっていたら、仕方がないと思うしかなかったといいます。なにしろ研修宿泊中の身なのですから。

翌朝。子猫は同じ場所の、湿った落ち葉の上で寝ていました!

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目を覚まし、マサキさんを見ると、「ニャアン」と甘えて肩までよじ登ってきました。
最寄りの駅までは段ボールで運び、駅前でキャリーバッグを買って入れ替え、電車ではるばる千葉県のおうちへ。
ちょうど隣り合わせたおばさんが猫好きで、猫を飼うのは初めてのマサキさんに、猫の育て方をあれこれ教えてくれました。

子猫を迎えた、マサキさんの母アヤコさんは、子猫の異変に気づきます。
下腹がぺちゃんこなのは、空腹だったためとだけ思っていたのですが、呼吸のたびにペコペコと下腹が音を立てるのです。
医者に直行すると・・・なんと、子猫はあばら骨が折れていて、肺に穴があき、呼吸のたびに肺から漏れた空気がお腹に入っていたのでした。
どんなに苦しかったことか・・・。
誰かに蹴られたか、木から落ちたかしたためと思われます。
入院治療して退院後も、またまた血便が出て、ひと騒動。カエルにしか寄生しない寄生虫のためでした。幼いモコちゃんは空腹に耐えかね、カエルを食べてしまったようです。

あの夜、マサキさんに声をかけてもらわなかったら、確実にモコちゃんは道ばたで息絶えていたでしょう。
その後、モコちゃんはすくすくと育ちました。

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これは、まだ幼な顔の頃。キッチンの窓辺がすっかりお気に入りになったので、アヤコさんは、ここにシクラメンの鉢植えもお鍋も置けなくなってしまいました。

そして、大きくなった今はも相変わらずここがお気に入り。

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バードウォッチングを楽しんだり、

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うとうとしたりします。

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そうそう、こんな場所も好き。

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神棚です!
純白のモコちゃん、神の使いみたい。
「初めて猫と暮らしてみて、思いがけなかったことってありますか?」とマサキさんに尋ねたら、こんなエピソードを話してくれました。

ある時、玄関先の廊下で、マサキさんとお兄ちゃんが口げんか。居間にいたモコちゃんは、戸越しに口争いを聞きつけ、廊下に向かって「ニャッ、ニャッ(どうしたの、どうしたの)」と鳴き続けました。
けんかのあと、気分がへたって廊下でしゃがみこんでいるマサキさんを見るや、「ニャ、ニャッ(大丈夫?大丈夫?)」と鳴きながら周りをウロウロ。マサキさんの手や腕を懸命になめ続けて慰めてくれたそうです。
「猫がなぐさめようとしてくれるなんて、びっくりしました」と、マサキさん。

今年5月、マサキさんは、またもや通りかかった道で子猫を保護。里親を探すまで、家で面倒を見ましたが、モコちゃんは、ストレスで、吐いたり下痢をしたり、高熱まで出してしまいました。「アタシだけのマサキお兄ちゃん」の思いが強かったのかもしれません。さいわい、愛猫を亡くしたばかりの近所の方が里親になってくださり、一件落着しました。

アヤコさんは言います。
「モコは、私にとって、娘のような、孫のような・・・もう家族そのものですね。モコが来てから、息子たちとのの間に明るい話題や笑顔がふえました。モコは、最近、どんどんおしゃべりになって・・・いったい何を言っているんでしょう」

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きっといろんなことを、聞いてほしいのでしょうね。
「お帰り~」「お腹すいた~」「散歩行こうよ~」「遊んで~」
それだけじゃなくて、
「アタシの家族、みんな大好き!」「あのとき助けてくれてありがとう」「ここのおうちの子になってしあわせ」
そんなことも、毎日毎日、伝えたいのかな。

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人と猫のめぐりあいの物語、来週も続きます。


「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

モコちゃん、マサキお兄ちゃんに出会えて本当に良かったね。子猫のときの写真に胸が締め付けられました。お腹すいてカエル食べてたなんて・・・救ってくれてありがとう。最近猫を虐待する事件が明るみになって、そういった非道な行為を平気で出来る人間がたくさんいることを知り、絶望を感じてましたが、やはり暖かい心を持った人がまだまだたくさんいることが分かり涙が出ました。1匹でも多くの外猫が暖かいおうちでごはんの心配がなく幸せに暮らせることを祈ります。

by みゅうねこ 2017-09-05 13:59

モコちゃん、きっとマサキさんに見つけてもらうのを待っていたのですね。よくがんばりましたね。幸せいっぱいのモコちゃんの表情、本当に良かったです。もっといっぱい、いっぱいわがままいって可愛がってもらってね♡ いいお話有難うございます。

by ぺったんの母 2017-09-05 14:55

マサキさんに会えるまでのモコちゃんが、どんな目にあっていたのかが、想像すると本当に悲しいです。これからはつらい目にあった何倍も幸せになって欲しいです。私の従弟の体験とそっくりで驚きました。彼が大学時代、バイト帰りに駅から自宅までの帰り道に必死に鳴きながら、転びながらついてきた小さな白い子猫。(たま)と名付けられ、17才で虹の橋を渡るまでそれは幸せに過ごしました。

by ふみちゃん 2017-09-05 15:59

モコちゃん、マサキさんに出会えて本当によかった。そして、モコちゃんに選ばれたマサキさんもきっと幸せ。
わたしもニャンコさんに選ばれるような人間になりたい。

by はらちーまん 2017-09-05 17:07

マサキおにいさん、そしてご家族のみなさんが救ってくれたモコちゃん。本当によかったですね(T_T)
私の実家、栃木なのですが、我が家の納屋付近に子猫を捨てていかれたことがありました。
そして、その子は捨てられるまで可愛がられていたのでしょう。見つけた父に甘えてきて、出会う人みんなにスリスリ甘えん坊で、一旦は里親を探しましたが、結局実家で一緒に暮すことになりました。
そうやって、甘えて来てくれる子は、まだいいのですが、捨てられる猫ちゃんは後にも続き、
警戒心が強くなってる子は、のらちゃんの様になり、交通事故などで悲しい最後になる子もいました。
このお話を読んで、涙が止まらなく、マサキおにいさんには本当にありがとうございます、と感謝を伝えたい位です。
身勝手な飼い方をする人間がいなくなりますように。

by クランベリー 2017-09-06 04:39

>みゅうねこさん

私も、虐待のニュースには怒りと同時に、胸がつぶれました。絶対に許すまじ。
あんな輩に仲間を作らせてはいけません。優しい人たちで手をつなぎましょう!

by 道ばた猫 2017-09-06 07:02

>ぺったんのお母さま

本当に、モコちゃん、よく頑張りました!
神棚のモコちゃん、神々しくて、ほんとに神様のお使いみたいだったです~

by 道ばた猫 2017-09-06 07:09

>ふみちゃんさん

いとこさんも、たまちゃんが「このひと!」と決めた人だったのですね。
しあわせな17年を、ありがとうございます!!

by 道ばた猫 2017-09-06 07:12

>はらちーまんさん

ほんとうに。猫に選挙権を与えたら、きっと鋭い直感で、争い事のない平和な国をめざす政治家を選んでくれるだろうなあ~と思います。

by 道ばた猫 2017-09-06 07:16

>クランベリーさん

モコちゃんはどこから来たのでしょうね。人なつこさから見ると捨てられたのかもしれませんが、当時、あの辺りは大水の後だったそうで、もしかしたらノラ母さんとはぐれたのかもしれません。小さい体でよく生きのびました。

by 道ばた猫 2017-09-06 07:20

一枚目の写真のモコちゃん、なんと素敵な表情!そして青空と紅い葉っぱと白いモコちゃん……なんてきれいなんでしょう(*^_^*)
正面からのお顔もきれいでとっても幸せそう♪
モコちゃん、マサキさんに出会えて良かったね!
モコちゃんとマサキさんの出会いと保護されてからは本当にモコちゃん頑張ったね、良かったね、そしてマサキさんとご家族にありがとうございますと何度も思いながら読んでいました。
これからもたくさんの幸せがモコちゃんとマサキさんに訪れますように。

by とも 2017-09-06 07:29

合宿免許に行っている息子に「そこはどぉ?」と電話すると・・・「普通」と返事
「ご飯はどぉ?」ときくと・・・「普通」
ほとんどの質問には「普通」しか返ってきません
会話になりません(=_=)
そんな息子ですが、猫のかわいい動画やおもしろい動画をよくみせてくれたりして、つかの間ですか楽しい会話ができます。
外の猫たち!!どんどん息子たちについて行って、家庭に楽しい話題を提供して~
っと、さびしい母の会は思います( ^ω^ )

by にゃにゃ 2017-09-06 10:30

猫を迎える時って何か運命的なものを感じますね もうこれは決まっていた事なのでは?とか
自分が「よし、うちで飼う」と決めた時 一番怖かったのが明日もここに来てくれるだろうか
ということです もしかしたら明日はもう来ないのでは? 車にひかれていたらどうしよう?
もっと早く決めていれば良かったのに 等々負の妄想しか出来なくて次の日がとても怖かった
のを覚えてます
まあ結局ちゃんとのほほんと現れたので連れて帰ってきたんですがね その後も初めて来た
はずの家でミラクルを起こし あんたこの家の間取り知ってるの?と思える事までやってのけ
こいつ実はここに来るの決まっていたな と思わせてくれました

by FIGARO 2017-09-06 17:44

>ともさん

モコちゃん、きれいな顔立ちですよね。子猫のときは拭いても落ちない灰色部分があったそうで、純白の猫になってアヤコさんもびっくり。ニンゲンは長じてうす汚れていくのに、羨ましいこと(笑)。

by 道ばた猫 2017-09-06 20:54

>にゃにゃさん

あはは、そこに猫がいるだけで、息子との話題ができるだけでなく、私のようないい年した人見知りでも初対面の人とすんなり仲良くなれます。まことに、猫様のおかげ(笑)。

by 道ばた猫 2017-09-06 20:59

>FIGAROさん

少なくとも「また来るよ」という言葉を猫は信じてる。それが私の実感です。
それから「うちの子になる?」っていうのも、通じますよね~

by 道ばた猫 2017-09-06 21:03

モコちゃん、マサキさんとの出会いは運命だったのでしょうね…。寒空の下、どんなに心細かったことでしょう…優しいマサキさんとご家族の元で幸せいっぱいなニャン生を歩んでいってくださいね♩
先日、実話に基づいた映画を観てきました。『 ボブという名の猫 幸福のハイタッチ 』という作品です。
このお話も、モコちゃんとマサキさんのように、固い絆で結ばれた人と猫さんの心温まるお話でした。
余韻に浸って幸せな気持ちだったところ、また心があったかくなりました(^ ^) ありがとうございました♪

by ねこたま 2017-09-07 01:57

>ねこたまさん

はい、私も観ましたよ! ボブくんも肩乗り猫でしたね。1匹の猫との出会いによって、主人公の人生は変わっちゃいましたね~。まさに運命の出あい。そして築いたきずな。

by 道ばた猫 2017-09-07 06:44