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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2016年03月08日

猫好きの輪

南房総館山市の「サルビア」は、45年続いている、町の喫茶店です。
カウンター席で注文したコーヒーができるまで、店内を見渡していると、こんな写真が目に飛び込んできました。

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思いきりあくびをしている愛らしい白猫さん。いかにも飼い主が撮った感じの、愛情がこもった一枚です。思わず、マスターに「おたくの猫さんですか、あの写真の子。可愛いですね~」と話しかけてしまいました。(猫好きの御多分に漏れず人見知りな私は、人に話しかけるのが苦手なのですが、猫が絡むと気軽に話しかけてしまうのは、不思議)

マスターは、にっこりして言いました。
「そう、うちの子。もういないんですけどね。ずいぶん前の写真だから。この店は45年やってますが、保護猫は35年、きらしたことがないんです。子どもがちっちゃい時から、いつも4~5匹いました」
それはすごい! というわけで、猫話が弾みました。マスター夫婦と長男ご夫婦とでなさっている家族経営の店だそうです。祖父母、両親、娘、孫・・と続くおなじみさんもいるくらい、居心地のよい店です。

よく「毎週、猫日記の猫の話を見つけるのは大変でしょう」と言われますが、こんな感じで、どこかへ出かければたいていその土地の猫好きと巡りあうのです。
「いまは4匹、自宅の猫小屋で面倒を見ていますよ」という話を聞き、会わせてもらうことになりました。

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玄関先に建てられた頑丈な猫小屋です。電気もつくし、雨よけのシャッターも閉まるし、冬季は暖房タイマー付きです。
昔は、家と外、自由出入りにしていたそうですが、あくび写真の白猫「若」くんが、よその猫との抗争で大けがをして以来、猫小屋を建てて、室内飼いを始めたのだそう。駐車場でさまよっていた猫、別荘に置き去りにされた猫、ビニール袋に入れられてゴミ箱に捨てられていた猫、孫が拾ってきた猫・・・。いろんな猫がいました。

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現在、一番の古株で、猫小屋寄せ集めファミリーの「家長」を務めているのは、黒猫の「ヒロシ」。もう12~3歳とのことですが、味のあるいいオトコですね。

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サバ白の「ユウ」くんは、なかなかのイケメンです。

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紅一点、サビ猫の「モモ」ちゃんは、はにかみ屋さん。ふっくら体型がキュートです。

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いちばん新入りの黒白猫「クロ」くんは、ちょびひげが立派です。
それぞれ、床暖房完備(毛布とあんか)の個室をもち、仲良く共同生活を送っています。

サルビア店内には、マスターの旅先で集めた猫の招き猫などの置物もいっぱいあり、お客さんがもってきてくれたものも。
「猫好きのお客さんは多いですね~ 自分ちの猫の話などでカウンターでは猫話によく花が咲きます」とのこと。
小さい時から猫がいつもそばにいた、マスターご夫婦のお子さんたちも当然動物好きで、次男の方は犬猫病院を開いているそうです。
そこで飼っている犬と猫の写真を見せていただきました。

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犬の「アミ」と、白猫「ニャ二ィ」と、茶トラの「もん吉」が、仲良く寝そべっています。
3匹とも、保護されてやってきたワケアリの子たちです。

犬のアミは、虐待を受けていた子で、保護された後もなかなか脅えがとれず、数年かけてやっと落ち着いてきたとのこと。
ニャ二ィは、実家の玄関先に捨てられていた猫ですが、てんかんの持病があったため、発作の対応がすぐにできるよう、息子さんの動物病院で引き受けたそうです。
目が開かないうちに病院に持ち込まれたもん吉は、アミお母さんが我が子のように育てました。

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「自分が苦労した動物は、あとからやってきた子の気持ちがわかるんだねえ」と、マスター。
「もう飼わない、と言いつつ、飼い続けてます。やっぱり、可哀そうな子を見るとほっとけないんだよね。うちの家族、孫に至るまでみんなそう(笑)。まあ、巡りあい、縁ですよね・・・」

親から子供、その子どもたちへ、猫好きの輪。
町の喫茶店のカウンターで、猫好きの輪。

猫ブームが、こんな風に広がっていくのはうれしいものです。


さて、東日本大震災から5年が経とうとしています。被災地では、いまも救いを待つ犬猫たちがたくさんいて、ボランティアの方たちが、給餌や保護活動に懸命に取り組んでいらっしゃいます。
その一つ、福島被災動物レスキュー「RAIF」では、保護した猫たちの譲渡会を、12日土曜日に、渋谷区千駄ヶ谷「レンタルスペースさくら千駄ヶ谷」で開きます。
猫と暮らしたい、と思っていらっしゃる東京近辺の方は、ぜひお立ち寄りください。ここでもたくさんの巡りあいがうまれ、温かな猫の輪が広がりますように。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

動物看護師をしている娘の話によると、最近は猫の受診率がかなり増えて来てるそうです。猫ブームは病院にも到来しているようです。同時に春は特に保護猫も増えるそうです。芸能人の誰それが飼っているだとか、まだ日本では珍しいとかそんな理由で高額で輸入してまで飼い始めて、飽きただの看取るのがつらいだの身勝手な理由で保健所へ持ち込んだり、捨てる。そんな輪は拡がって欲しくないです。世の中の人が全て猫好きになれとは言えないけど、せめて自分の足元に懸命に生きている小さな命の事を見失わないで欲しいです。

by ふみちゃん 2016-03-08 15:46

うちの近所にも猫好きさんの集まる喫茶店があればいいのにな…素敵な空間なんでしょうね♪

今日は運転中に首輪をした猫が飛び出してきてびっくりしました。
もしこの子が事故にあったら飼い主さんは運転手を責めるでしょうか…
道路近くで猫を見かけると気をつけてねと呟かずにはいられません。

by さりゅ 2016-03-08 20:28

>ふみちゃんさん

ほんとうにそうですね。安易に猫ブームを促して、猫たちが受難しないよう、記事を書く者も心しないといけないと思っています。

by 道ばた猫 2016-03-09 01:08

>さりゅさん

猫好きな店主のお店は、さりげなく猫の写真や置物が飾ってありますね。
「カワイイですね」って話しかけて猫話が弾むこと、何度も経験しています~

by 道ばた猫 2016-03-09 01:14

にゃんとも素敵な猫の輪ですね♡
こんなお店があったら常連になってしまいますね。猫好きさん同士見知らぬ人でもするっと話せるのはわかります!私もおなじですから!!
世の中のねこにゃんずがみんな幸せになりますように。

by あずにゃん 2016-03-09 11:44

いつも思います
難しい事を言わなくても、黙ってても、動物にも優しい社会になってほしいと…
こうして
ほっとくことなんて出来ないから…
という人の善意と苦労を嘲笑ってる人の為に、人も動物もバリアを張らなければならない。。
変わることはないのでしょうか?
幸せな動物の姿だけを見ていたいものですね

by 毛玉 2016-03-09 12:21

>あずにゃんさん

ほんと、猫好きってわかると、スッと仲良くなれちゃいますよね! 猫ブームが、平和共生のキーワードとして静かに根付いてほしいな。

by 道ばた猫 2016-03-10 03:30

>毛玉さん

「ほっとけない」派が、仲良く手をつなげば、少しずつでも世の流れを変えられるのでは、とねがっているのですが。人間って、自分たちだけ地球にのさばって、恥ずかしいですね・・・。

by 道ばた猫 2016-03-10 03:41