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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫又トリップ

2015年09月30日

大地からの贈りもの

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「この子たちは掘り出しものよ。」
ははは、確かに。かわいいですものねぇ!と笑っていられたのも束の間、この子たち、本当に土の中から掘り出された猫だったのです。
こわいこわーいはじまりの猫又トリップ、スタートです。

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高台に建てられた家。

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毎日こんな景色を見られて羨ましいなぁ。

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だい(16歳・男の子)と飼い主のまつうら ともこさん。

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ちぃ(16歳・男の子)



掘り出しもの


きょうだいの名まえは「だい」と「ちぃ」(ともに16歳の男の子)、合わせて「だいちぃ=大地」。名まえの由来は出会いにありました。それは1999年ちょうど梅雨が明けた7月20日のこと。
その日、ともこさんは歩いてご実家へ向かっていました。が途中、足をとめます。荒れ果てた空き地の方から子猫、それも複数の泣き声が聞こえてきたからです。声の出どころはどこ? 草をかき分け中へ入ってみると、雑草だらけの中に"ぽつん"と不自然に地植えされている「ベゴニア」の花を見つけるのです。おそるおそる花の元へ近づいてみると信じられないことが!なんと土の中からその声が聞こえるではありませんか!

ともこさんはすぐに実家へ走り、移植ごてを借りて戻ってきます。慎重に土を掘りおこし、5cmほど進んだところで「カツン」と音に変化が?!それから素手で土をよけると厚さ2〜3cmの石が姿を表しました。子猫の声は大きくなるばかり。「この石の下に絶対いる!」と石を取り除くと、土にまみれもがき苦しむ子猫の姿が......。

子猫は合計3匹いました。それらは生後1〜2週間ほど。「ひどい。なぜこんなことを?」これが同じ人間のすることなのかと怒りと悲しみが同時に押し寄せてきます。しかし、ともこさんに感情を整理する時間はありませんでした。すぐに動物病院へ走り、世話のための道具を買いそろえ、2〜3時間おきの授乳が待っているのですから。

あまりにも突飛な状況に「しゃあないわなぁ」と旦那さんも飼う予定のなかった猫たちを受け入れ、離乳して体が少し大きくなったころには、ともこさんの職場の同僚が「先住猫の弟がほしい」と白黒猫の里親を名乗り出てくれました。
そして、いまともこさんの家には大きく大きく育った2匹の茶トラ猫がいます。だいとちぃ、2匹はまさに掘り出しもの。まつうら家の生活をより豊かにしたのは言うまでもありません。

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臆病なちぃはこちらの出方を伺っていました。

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隠れてみたり。

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ちぃはだいを楯にしたり。

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おおらかなだい。

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アクティブなだいは散歩が大好き。

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「ついて来にゃ!」とお庭を案内してくれました。



食事に愉しみを持たせる


16歳の誕生日を迎えたあとの定期検診で、腎臓機能に低下がみられるようになっただい。そこから2匹のフードは「腎臓サポート」に。とばっちりを受けることになったちぃですが、「同じ畑の猫だから」仕方がない。早めの予防を仕掛ける。ふむふむ、重要なことだな。

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え?連帯責任?聞いてにゃいよーとちぃはフテ寝。

最初に見た時から「大きい猫だなぁ」と感じていました。ともこさんに体重を聞くと、だいは7.4kg、ちぃは6.5kgとのこと。それでもだいはもうすぐ9kgになる手前からダイエットをはじめて現体重に。毎日ごはんの総量の5%を減らすダイエット法は猫に気づかれないのでおすすめのこと。
それでも最近のだいは階段の上り下りもキツそうということなので、さらにダイエットを進めているようです。
食事は朝4回、夜4回とこまめに与えるのがまつうら家流。食事に愉しみを持たせる工夫、消化にも良さそうですね。

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え!また食事の量を減らされるの!?

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しょぼーん。



猫のことは猫にまかせる


じつはまつうら家にはもう1匹の猫がいます。「ソラ」という6歳の男の子です。こちらは「超」がつくほどの臆病さんなので、写真に収めることはできませんでした。(まだまだ修行がたりません......。)ソラを近くの公園で保護したのもともこさんで、それは旦那さんの出張を狙っての犯行でした(笑)。「旦那さんが留守のとき猫はやってくる」、私は前にもこういう話しを聞いたことがあります。よってこの事例「猫あるある」に登録します。

ソラを迎えいれたとき、面倒をかってでたのはだいでした。それに対してちぃは「いやだなぁー」と少し遠ざける感じ。新たな性格の発見は多頭飼いならではで、飼い主さんにとっては新鮮で楽しいもの。当初、心配だったちぃは刺激を受けながらも6年間猫なりにうまくやってきたようです。

「猫のことは猫に任せる」、「安心料=気になったときはすぐに動物病院へ」これが16歳まで育ててきたともこさんの猫育て術。ひいてはご長寿猫育て術。
元々死の淵から這い上がった「強運」と、ともこさんの猫育て術でだいとちぃは生きています。

あの日咲いていたベゴニアの花言葉は「幸福な日々」。
笑顔をたやさないともこさんにぴったりな言葉です。

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幸福な日々だにゃー。



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ケニア・ドイ ファースト写真集『 ぽちゃ猫ワンダー 』(河出書房新社)好評 発売中


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猫又トリップライター紹介

ケニア・ドイ

1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。

http://kenyadoi.com

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カテゴリ: 猫又トリップ
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みにゃさまのコメント

どうしても育てられない時てあるとは思います。でも生きている子達を埋めるなんて。鳴き声に気付かれてその場所に行ってなければて考えるだけで恐いです。そんな事出来る方達悲しいけど居てるんですよね。でも一方ではこの素敵なご夫婦のように大事に育ててくれる方もいて、でも出来れば捨てるという行為はなくなって欲しいです。16歳大事にしてもらって良かったね。まだまだ長生きしてね。家の子も育児放棄の子保護して7歳になりかけがえのない家族です。ともこさんご夫婦に頭が下がります。これからもご夫婦のお身体も大事にお過ごしください。

by ひとみ 2015-09-30 16:23

ひどい捨て方…。そう思うと同時に、土を直接ネコにかけることなく石を置き、花を植える。そこにその人に少しあった「躊躇」「申し訳ない思い」がそうさせたのか。そのおかげで鳴き声をあげれた。そして、まつうらさんに見つけてもらったネコ達は強運だったと思います。
その人は、16年前にしてしまったことを忘れられたのか。助けられたことを知っているのか。子供だったのか。大人なのか…。と、いろいろ考えてしまう。
腹立ちとやるせない、悲しい気持ちになります。
出来れば後悔し、その後同じようなことをしていないことを祈ります。
そして、物のように捨てられる猫や犬達がいなくなる、何より人が、人間の命だけが尊い訳ではないことを解ること。上手く書けませんが、悲しい話です。
でも、縁があり出会った子達と暮らす人達(私を含め)は、沢山の幸せをもらえるんですよね。
ちょっとしたご褒美でしょうか。

by rin 2015-09-30 22:35

出会った状況からは想像も出来ない今のだいちゃんとちぃちゃんの幸せそうな姿に涙が出ました。
捨てた人はあとで現場の様子を見に行ってホッとしたかも知れませんね。
素敵なおうちの子になれて良かったね、だいちゃんちぃちゃん。

by lucykina 2015-10-01 14:13

以前住んでいた所のすぐご近所に親子共々同年代である事や 同じく猫を飼っていると言うこともあり仲良くさせていただいていたお宅がありました。
そちらは避妊手術をしないままのメス猫を放し飼いしてありました。
当然何度も多数の仔猫を出産するのですが、ある日その方が
産まれる度に袋に詰めて山に捨ててきただの 川に、、、だの
身の毛のよだつ内容を夫婦揃って自慢げに話されました。
それ以来お付き合いはやめました。
そういう人が現実にいます。
私が出会ったこういう人間は『ごく稀』であると思いたいです。
我が家には今 いろいろないきさつで保護した3匹の猫がおります。
どの子もきっと私にかわいがってもらいたくて 私の前に現れたんだと思い
毎日なでまわしてますが(笑)実は逆に私を癒してくれる天使たちです♪
私にはその夫婦が捨てた仔猫ちゃん達は救うことはできませんでしたが
まつうらさんに見つけてもらえた3匹の猫ちゃん、本当に本当によかった!!

by にゃあみ 2015-10-01 14:44

ひとみさん
土に埋めるという選択肢しかなかったのか。里親を探すとか、相談する相手がいなかったのか、他にもアイデアがある!ということをもっと猫好き以外の方にわかってもらわないといけないなぁと改めて考えさせられました。ひとみさんは育児放棄の猫を保護されたんですね。尊敬します。こちらこそ良い話をありがとうございます。

by ケニア・ドイ 2015-10-23 13:21

rinさん
そこを通ったのがまつうらさんだったから救われた。私はそう思います。悲しい気持ち、恐ろしい気持ちが沸き上がるのも当然ですが、いま幸せに生きていることをこうしてお知らせできて良かったです。ちょっとどころじゃおさまらないご褒美を猫はわれわれに与えてくれますよね。ね、rinさん。

by ケニア・ドイ 2015-10-23 13:31

にゃあみさん
そんな身近に…、恐ろしいことです。そういう人間がいるのは残念で仕方がありませんが、
いくら法律で縛ったところでいなくならない、どうしようもなく憔悴する気持ちわかります。
私たちにできることからはじめましょう。より多くの人に関心を集めるよう、猫の素晴らしさを伝えて行ければ。

by ケニア・ドイ 2015-10-26 18:33

lucykinaさん
高齢猫さんなのに「どっしり」とした体格。いまは食事の量を少々抑えぎみのだいちゃんです。
ともこさんの健康管理でまだまだ幸せは続きます。

by ケニア・ドイ 2015-10-29 10:26