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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年03月25日

ハヤシさんちの困ったちゃん その①仕返し猫ルナ

「まりやのハート」でご紹介したことのあるルイさんのおうちには、いま、まりやのほかに、ルナ、ルカ、カムイという猫がいます。この3匹がじつは、世間的に言えば、まあ、ちょっとした「困ったちゃん」猫。思い当る愛猫家も多いと思いますが、捨て猫に手を差し伸べるひとのうちでは、お利口で器量よしはよそにもらってもらうので、手元には困ったちゃんや残念ちゃんがえてして残るものです。そして、その困ったちゃんや残念ちゃんこそ、愛しさは格別なのです。

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 ルナは、キジトラの雌で15歳。2.3キロという子猫並みの軽量小型猫です。けれども、けっして子猫のように抱かせてはくれません。ハヤシ家に遊びに行くと、まずどこかに雲隠れし、いつの間にか高いところから「フン!」といった顔で見下ろしています。

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 ルナがハヤシ家にやってきたのは、ルイさんがまだ捨て猫たちの保護活動を始めていなかった15年前。当時飼っていたキジトラのケンタを旅行の間預けるために、動物病院に行ったとき、「子猫の里親募集」の貼り紙を目にしたのでした。キジトラが3匹で、黒が2匹。ルイさんは帰宅後旦那さまと相談して、黒猫の女の子をもらうことにしました。

 黒猫の女の子をもらうために、再び動物病院を訪れると、「女の子は、このコとこのコ」と言って、黒猫とキジトラを2匹つれてきてくれました。黒猫のほうは、つやつやの毛並みで人懐っこく元気いっぱい、申し分のない愛らしさでした。一方、キジトラのほうはまったく愛想がなくてすごく小さくてさみしげでみすぼらしくて・・・・つまり可愛げがなかったのです。
「わあ~、このコは貰い手がみつからないだろうなあ~」と、情がうつってしまったルイさん。気がつくと、「このキジトラのほうをもらいます」と言っていました。

 弱々しくて食も細く、ちゃんと育つかどうかも危ぶまれたので、「叱らないで、大事に大事に育てようね」と、旦那さまと約束しました。

 そして、ルナはお姫様のように可愛がられて育ち・・・・事件は数年前に起こりました。旦那さまがお仕事を終えて帰宅した時、テーブルの上に乗っているルナを見つけ、思わず、叱ってしまったのです。
「こらあ、ルナ、ダメでしょ、テーブルの上に乗っちゃあ!」
 そのとたん、ルナはテーブルの上でジャーッとおしっこ。「信じらんない! アタシのこと、怒ったあっ」とばかり、心外そうに逃げ去りました。

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 その夜のことです。お酒を飲んでぐっすり寝入っている旦那さまの布団の上から、ちょうど胸に当たる部分に、ルナは、こんもりウンチとおしっこの仕返しをしたのでした。(ルイさんが気づき、そっと布団を取り替えました。旦那さまは、あとで知らされたそうです)

 以来、ルナは、何か気に入らないことや納得できないことがあると(新しい猫を連れてきたとか、よその猫の匂いをつけて帰ってきたとか、キャットフードがお気に入りのじゃなかったりとか)、旦那さまに起因することではないのに、玄関の旦那さまの靴やサンダルにおしっこをするようになりました。

 困った姫の仕返しを恐れた旦那さま、靴もサンダルもすぐに靴箱にしまうようになり、二度とルナを叱ることはなく、「猫もニンゲンも、なんで『ル』がつく女は怖いんだ・・・」と呟いているのだとか。「さわらぬルナにたたりなし。けっこう二人でルナの顔色うかがって暮らしてます(笑)」と、ルイさん。

 でも、ルイさんがルナのことを話すとき、本当に愛おしそう。
「私の中では、ルナは、15年前に動物病院で初めて会った時の子猫のまま。燃えるゴミの日に、『燃えるゴミ』の袋にきょうだい5匹でへその緒のついたまま入れられて、袋の口を縛られて捨てられ、すんでのところを救われ、、母猫の温もりを求めていた仔猫のときのままなの」

 ルナは、いまでも旦那さまに「フンっ」ですが、ルイさんは大好き。といっても、自分の気が向いた時に自分から甘えるのはいいのですが、ルイさんのほうから抱こうとしたりすると怒ります。
 眠くなると、ルイさんの左肩に飛び乗ってきます。ルイさんが洗い物をしていようが歯を磨いていようがおかまいなし。左肩にちょこんと乗って、ゴロゴロ喉を鳴らし、自分の右手の肉球をチュパチュパ吸いながら眠ります。

「ルナの魅力は、自己主張をちゃんとするところ。媚びないし、気に入らないことがあったら態度であらわす。彼女にはちゃんと理由があり、こっちも思い当たるので叱れない。けなげで、いじらしいの・・・。」

 ルナは、ルカやカムイには「フンッ」ですが、まりやには心を許しているそうです。まりやと一緒に眠るときのルナの寝顔、穏やかで、とてもあんなそらおそろしくも痛快な仕返しをする猫とは思えません。

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 ルナはたしかにちょっぴり困ったちゃんだけど、、自分への愛情にとても敏感で、プライドの高い、個性的で愛らしい猫なのです。
 ルナちゃん、ハヤシさんちの猫になってよかったね!

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

ルナちゃん良いおうちに貰われてよかったね!(*^^*)

by はっちゃん 2014-03-25 17:54

わかるわかると、うなずきながら読ませてもらいました。困ったちゃんや、残念ちゃんほど、我が家に来た運命を感じるんですよね~。
私は、賢いメス猫と一緒に暮らすと、いつもこちらばかり気を使って、嫌われないようにしようと必死になってしまいます(笑)。ルナちゃんも、とっても頭がいいんでしょうね。ルイさんの旦那さまには申し訳ないですが、ルナちゃんの復讐の仕方には笑ってしまいました^^。ルナちゃん、その調子で長生きしてね~。

by ちぃこ 2014-03-25 21:28

道ばた猫さん、こんにちは。
ちょっと上目遣いのルナちゃんのお顔がたまりません。
自分がしたこと、相手に与えたショック、でもすべて許されるだろうなってこと
みーんな知ってるルナちゃんなんでしょうね。
飼い主さんの懐が深ければこそ。
ねこばんざい。にゃんげんばんざい。
いつも素敵なストーリーと写真をありがとございます。②以降も楽しみです。

by azumi 2014-03-27 14:25

今まさに、るいさんとこまったちゃんを拝見しました^_^
ありがとうございます

by 風草 2014-03-28 17:05

うちで飼っているルナ(7歳メス)と同じなので、思わず微笑んでしまいました。
とてもプライドが高いけど、人の言うことが分かるお利口さんです。
ルナという名前の猫はみんなそうなのかもしれませんね。
ルイさんちのルナさんも元気で長生きしますように。
続きが楽しみです。

by ルナママ 2014-03-31 16:09

ルナの写真をきれいに撮ってくださってありがとうございます ~☆

困ったちゃんだけれど かわいいちゃんです >^_^<

by ruineko 2014-04-02 10:48

ルナちゃんと我が家の龍太は兄妹です。龍太はフレンドリーな猫ですが、兄妹でも性格が違いますね。
でも三日月のように凛としたルナちゃんは、とても魅力的です
いつも雲隠れをするルナちゃんが、素敵に写真に撮れていてさすが良い仕事をしていますね。
二人(二匹?)ともずっと長生きをして欲しいと願っています。

by ryuumama 2014-04-02 11:24

>みなさま

 むかし、我が家にも「モモ」という怒りんぼうのキジトラがいましたが、まったく人に媚びず、都合のいい時だけ甘える猫でした。八つ当たりばかり(自分でカーテンに爪をひっかけといて人にシャ~と怒ったり)されていました(笑)。ああ、また生まれ変わって戻ってきてくれないかな~と恋しい猫です。

by 道ばた猫 2014-04-03 13:06

ルナちゃん、どの写真もかわいい。
写真からは、困ったちゃんに見えないです。

うちのチョーお甘えん坊の黒白猫3キロちょっと、
眠くなると肩に乗るか、腿の上にきます。
ゴロゴロ喉を鳴らしながら、
納得するまで体の向きを変えるなど動き回り、時に怒って爪をだす・・
最近特に、私の肩は傷だらけ・・
でも、
夜、私のベッドの近くで眠ってる、名前を呼べばやってくる、かわいいコなんですよ。
花の近くに黒いハナクソみたいな模様があっても、美人なんです。って自慢しちゃいました。

次は、どんな猫と人間の話かな、毎回とても楽しみです。

by イリス 2014-04-07 17:09

訂正です。
花 と 鼻 変換を間違えてしまいました。

by イリス 2014-04-07 17:12

うちのニャンコも気に入らないことがあると同じような仕返しと思われるようなことをします。とっても困っていますよ〜

by 磯姫 2019-07-07 09:27