[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

「いらっしゃいませ。きょうはどの豆にいたしましょう」



「おかあさーん、ペルーティアラ２００ｇローストご注文でーす！」

「生豆のローストには２０分少々かかりますので、サービスの珈琲を飲みながらおまちください」

　フレンドリーながらもきりっと接待してくれたのは、３０種以上ある珈琲の生豆をその場で焙煎して小売りしてくれる店「yagi₋coya」の小太郎くんです。まだ２歳とは思えないほどの思慮深さをもったふるまい。光の加減によって緑になったり、ブルーの濃淡になったりする美しい瞳の持ち主です。いつも店内にいるわけではなく、気が向いたときに２階から下りてきたり、猫好きのお客さん来店時に「コタロー、おりといでー」と呼ばれたときに下りてきます。

　小太郎くんは元ノラ。yagi₋coyaの店主ヒロコさんにとっては、はじめて一緒に暮らす猫でした。元ノラと心通わせていく日々を描いた「ジュルのしっぽ」というブログ（現在は終了）の愛読者で、猫を飼おうかなあ・・・と思い始めたころに、小太郎と出会ったそうです。交通事故に遭ったのか、後ろ左足が骨折したまま固まって伸びたままになってしまい、うろついていたノラちびでした。
「主人にも左足に障害があるんです。それで、この子に遭ったとき、うちに来る運命の子なのかなあ、と思って」と、ヒロコさん。
「小太郎は小さい時からききわけがよくて落ち着いた子でした。じつは、もう１匹２階にいるんです。これがやんちゃでやんちゃで、店内に放すと何をしでかすか・・・。よかったら連れてきましょうか？」
　もちろん、もちろん！！と答えたのはいうまでもありません。

　抱っこされて下りてきたのは、くりくりおめめがキュートな茶トラのチャイくん、６か月のやんちゃ盛りです。
　ヒロコさんのご主人の職場（他県の産廃処分場）に住み着いているノラ母さんに去年の夏に育児放棄されて、熱中症になって弱っていた仔猫でした（母さんも生きるのに必死だったのでしょう）。日ごろから、きょうだいの中でその子だけご主人に懐いてあとをついてきていたそうなので、やはりこの子もヒロコさんご夫妻のうちの子になる運命だったのでしょうね。



店内に放されたチャイくん、さっそく、クルミでサッカー遊びです。小太郎くんはお兄ちゃんらしく、自分も転がしたいのにまずチャイくんに遊ばせてやります。いってみれば、チャイくんはまだ初々しい生豆。いずれ小太郎くんのように味わい深い個性的な焙煎豆に成長していくのでしょう。ここに通って成長を見るのが楽しみです。

　さて、香ばしい匂いが店内にたちこめて、ガスで丁寧にローストされた焙煎豆の仕上がり。「ロースト具合はよろしいでしょうか？」と、小太郎くん。おや、並べてみると、小太郎くんと珈琲豆は色合いがそっくり。
　小太郎くん、ずっしりと立派な体格なので、ただ今ダイエット中なのだとか。おやつをもらうときは、ヒロコさんにハイタッチしてからもらうのが、子猫時代からの習慣です。

　yagi₋coyaの店名は、「ヤギに似てるね～」と子どものときに友達に言われたことのある、ヤギ好きのヒロコさんが考えたそうです。３年前の開店ですが、そのころ猫が２匹やってきて猫好きになっていたら、もしかしたら店名は「neko₋coya」になっていたのかな～（笑）。

　珈琲はそばに猫がいると倍おいしい、というのが、私の持論ですが（まあ、ケーキでも、お酒でも、おにぎりでも同じなんですが...笑）、猫を愛する珈琲豆店の珈琲の味は、味わい深くすっきりと、文句なし！のおいしさでした。

　ヤギと珈琲豆と猫。童話の世界のように、ほっとさせてくれる空間です。

　（豆工房yagi₋coya 　　木更津市請西（じょうざい）東１－１－１　　水・日休み）