[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

　クララちゃんだけは、テレビより、食い気で、エビをちゃっかりおねだりしています。

 


　チャーくんやタンちゃんたちもせっせと、店と、となりのおうちを行ったりきたり。

　さて、きょうは、前のブログに　「7匹のうち、１匹だけお店に来ない猫」と書いたケンちゃんのお話です。

　ケンちゃんは、２ヶ月くらいの仔猫のとき、２日間、公園で悲痛に啼き続けているのを女子中学生2人が保護しました。9年前の寒い師走でした。仔猫は、極度に怯えていましたが、動けないため、啼き続けていたのでした。自宅で飼う事のできない女子中学生たちは、思い余って獣医さんに連れて行きました。「一所懸命里親を探しますから、1週間だけ預かってください」と、獣医さんと約束しました。

　あと一日で期限というとき、飼い猫の風邪を診てもらうため、やってきたのが、おかかの店主、ヨーコさん。「おっ、ちょうどいいとこへ来た。他の人には任せられない猫がいるんだ。飼ってもらえないと、あした保健所行きになっちゃうんだなあ」と、獣医さん。当時すでに７匹いたので、８匹は無理と思ったヨーコさんでしたが、「保健所」と聞いては聞き過ごせませんでした。

　仔猫は、腰が砕けていたため、なき続けていたのでした。獣医さんの見立てでは、蹴られたか、投げつけられたため。　公園で虐待を受けたのか、虐待の果てに捨てられたのかは不明です。そのため、仔猫はニンゲンを恐れきっていて、いま、あえて手術はせず、自然治癒にして、心のケアをすることになりました。

　ヨーコさんに連れ帰られて、ケンと名づけられた仔猫は、さっそくベッドのしたに這っていって隠れてしまいました。ヨーコさんは、ご飯とお水とトイレを置いてやって、知らんぷりをしてやって、無理に覗いたりしないように過ごしました。ベッドの下にひそんで1ヶ月半。未明にふとヨーコさんが目を覚ますと、ケンちゃんが、ヨーコさんの顔にくっついて寝ているではありませんか！

　初めてニンゲンに心を開いたケンちゃん。ボス、ジャイアンの庇護のもと、他の猫とも仲良くなっていきました。ジャンプはできず、フラダンスのような歩き方ですが、生活に支障はありません。年に１回くらい、他の猫たちにつられて店に入ってくることがあるそうですが、お客を見て、慌ててUターン。「彼なりに努力してるみたいだけど、やっぱりニンゲンが怖いのはどうしようもないみたいよ」と、ヨーコさん。9年も前のことなのに、ケンちゃんの心には、決して消えない恐怖が残っているのです。

　「私のベッドで寝てるから、ケンに会ってきていいよ」とヨーコさんが言ってくれたので、ケンちゃんに会いにいきました。目が合うなり、物陰に隠れてしまいました。




　それでも、「ケンちゃん、ケンちゃん」と呼びかけて撫でているうちに、固まっていた体がふっと柔らかくなりました。この綺麗な水色の瞳がこれから出会う人間たちは、もうやさしい人しかいないはず。安心してね、ケンちゃん。

　ある晩、おかかのカウンターで飲んでいて、ふっと隣をみたら、ケンちゃんが座ってた・・・・そんな日がきますように！