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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2012年12月11日

碧(あお)い目の猫・緑の目の猫

 丹沢連峰の麓の町にあるМ寺は、江戸初期に造られた茅葺き山門のある由緒あるお寺です。小高い山を背景に、木々の手入れの行き届いた広い境内を走り回っている若い白猫がいます。振り向いたその目の碧いこと!
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 胸には「はち」という名札をぶらさげています。鳥の気配に、落葉に、人の足音に、真っ青な瞳をぴかぴか光らせて、まさに、好奇心真っ盛り。ちょうど1年前の年の暮れに捨てられて、、お寺の玄関先にちょこんと座っていたそうです。まだ1ヶ月くらいの小ささでした。
 
 このお寺は住職さまはじめ、一家全員が猫好き。無事お寺の5匹目の猫として保護され、「はち」という名をもらいました。いまは真っ白ですが、子猫のときは額にうっすら墨色に八の字があったからです。じつは、後日談があって、数日後、檀家の奥さんがお寺にきたとき、はちを見て、「ああ、よかった! やっぱりお寺にきたのね」と話しかけたそうです。なぜなら、捨てられたはちはお寺に来る前、バス通りの奥さんの家の玄関先を訪れていたのですが、奥さんは「ごめんね、うちは犬がいるから飼えないの。この先の山のほうのお寺にいきなさい。なんとかしてもらえるから」と、道を教えたのだとか。
 
 住職さんの娘さんの話では、お寺の近くで捨て猫に「ちょっと(にゃあ!)」と声をかけられるのはよくあることなのだそう。そのたびに猫好きの檀家さんなどに里親になってもらうのですが、はちを含む、いまいる5匹は猫エイズキャリアのために手元におくことにしたそうです。
 
 全員元気で、広い境内から裏山にかけて遊びまわり、夕方、お腹がすくまで帰ってきません。私が訪ねた日は寒かったので、4匹は室内で丸くなっていたものの、若い(1歳)はちくんだけがお外で走り回っていたのでした。
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 さて、これからご紹介するもう1匹、やはりこの町で知りあった「聖(ひじり)」くんは、深い緑色の瞳の持ち主です。山々を一望出来る小高い丘の上の円形の家に住んでいます。このおうちのご主人は、人々が集まることのできるようにと、丸い家を建てたそうですが、人間だけでなく、猫も集まってきたのでした。5年前に「ふらりと」やってきたのが、聖くんで、目がぐしゃぐしゃの貧相な猫だったそうです。そのあと、山猫のような気の強い「姫」がやってきて、「てん」と「くるる」の2匹の娘を産みました。母娘3匹は、日がな一日、丘を遊び回っていますが、聖くんはけっして外にはいきません。
 
 なぜなら、聖くんは、お寺のはちくんと同じく、猫エイズキャリアで、自分の体力を悟っているからです。はちくんは未発症ですが、聖くんの場合、病のステージは進行しているのでしょう。
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 ときどき、机に前足を揃えてかけて、お行儀よく座る姿は、とっても愛らしいのですが、それは、胸苦しいときにラクになるため、自分で考えた姿勢なのです。「えらいね、一生懸命生きてるね!」と、いとしさで胸がいっぱいになりました。
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 たとえ猫エイズのキャリアでも、飼い主の愛情を受け、ストレスのない生活をしていれば、健康な猫と変わらず命を光らせて、幸せに一生を送ることができます。
 
 碧い瞳と緑の瞳が、それを実証しています! 丸い家のご主人はおっしゃっていました。「聖たちにはいろいろなことを教わりましたよ・・・」と。

写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

この二匹の猫ちゃん達が健やかに育ちますように…

by ちゃき 2012-12-11 13:17

はちくんの姿に笑顔を頂き、聖くんの姿に涙してしまいました。
私の実家にもエイズキャリアの子がおります。
出来ることは何でもしてあげたいと思っております。
どうか聖くんの苦しみや痛みがひどくなりませんようにと祈るばかりです。

by ますきち 2012-12-11 17:39

うちにも生まれて2ヶ月の捨て猫から育ててる娘がいます。
生まれてから3ヶ月位に猫白血病を発症して今1歳5ヶ月を迎えることができました。動物達のけなげさにいつも涙がでます。
これからも寿命まっとうするまで一生懸命に愛情そそいでいきたいですね。

by まるちゃんママ 2012-12-12 09:29

病気をもっている猫のけなげさ、いとおしさは、また格別ですね。4年前に旅立った我が家のみゅうみゅうは、拾った仔猫のときにすでに白血病のキャリアで、獣医さんに短命といわれましたが、12年半を穏やかに生ききりました。まるちゃんママのおうちの猫さんも、ますきちさんのご実家の猫さんも、いのちの限り、愛情をそそがれますように!

by 道ばた猫 2012-12-16 16:52

私は三毛猫の雌、ピンクを飼っています。
ピンクは人通りの少ないお寺で拾いました。
臆病ですがとても大きな黄色い目をしてます。
少し似ていますね。多分。
これから長生きして下さい!!

by アイリ 2015-03-31 22:34

命を光らせて生きること…ネコでもニンゲンでもとても大切なことですね。

by ふう 2018-06-24 09:29