[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2012年09月04日

猫たちが入り浸る居酒屋

　夏の夕べ、初めて訪れた町、板橋区の成増で、こんな貼り紙を目にしました。

　居酒屋おかかとありますが、ラーメンなどの軽食だけでも気楽に食べていけそうな店です。おなかはすいてないけれど、お酒もつよくないけれど、連れもいないけれど・・・こんな貼り紙をみたら、猫好きだったら素通りなんてできませんよね？　で、もちろん、入りましたとも(笑）。

　開店直後とあって、まだ客はいませんでしたが、さばさばっとした断髪のママさんと、猫二匹が迎えてくれました。

　手前の猫は、ジャイアンといって、最年長のここのボス。おくの黄色い猫は、気のいいチャーくんです。貼り紙には８匹とありましたが、このまえ、１匹が天国に旅立って、現在７匹とのこと。隣接する自宅で飼っている猫たちがお店に顔を出すのだそうです。「そのうちいれかわりたちかわりやってきますよ」と、ママのヨーコさん。わくわくするではありませんか！

　つまり、猫たちが出入り自由な店！！「猫がいる」ことを売りにしているわけでもなく、自然体で猫と隣りあわせで飲める店。気に入りました。

　店に入りびたりのジャイアンは、美形の、一見クールなボスですが、ヨーコさんに言わせると、「やることがけっこうマヌケで、他の猫がいないときは豹変して甘えん坊」とのこと。子どもの頃から動物好きだったヨーコさんの、にわとりやらカエルやら犬やらとの交友話をきいているうちに、店はなじみ客でにぎやかに。猫たちも出たり入ったり、客に甘えたり、膝に手をかけて寝てしまったり。

　紅１点の三毛猫クララちゃんは、必ず男性客の隣に座るのだそうで、その日も、恰幅のいいおにいさんの隣をキープ、膝に軽く爪をたてて甘えまくるので、おにいさん、「トイレにもいけないよ～」とうれしそうでした。

　２時間もいれば、ジャイアン、クララ、チャー、タロー、タン、タマといろんな猫に会えますが、１匹だけ、ゼッタイに店にこない猫がいます。ケンちゃんといって、公園の虐待から中学生２人が保護し、ヨーコさんが引き受けた猫。少しずつ人間にうちとけてきているところだそうです。ケンちゃんが写真を撮らせてくれるようになったら、ぜひこのブログで紹介しますね。

　おかかという店名は、猫の好物からとった名だと思ったら、東北の方言で「お母さん」という意味だそう。ヨーコさんの作るおふくろ料理目当てに通う人も多そうです。

　楽しく心地よい夏の酔い、おっと、宵でした。

写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹茉莉子（さたけまりこ）

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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