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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2025年06月10日

るうぷたうんの猫たち

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梅雨入り前の晴れた日。
古民家の広い庭先で、毛づくろいし合っている仲良し兄妹がいます。
キジ白の「こかげ」くんと、三毛の「ひなた」ちゃんです。

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ここは、茨城県常総市。
見渡す限りの田んぼに囲まれた疎水べりの道を進み、「るうぷたうん」と書かれた錆色の看板そばの小さな石橋を渡った先が、2匹のおうちです。

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門のわきに大きな欅のある古民家の敷地内にあるるうぷたうんでは、古道具や古着などのほか、創作作家で音楽家でもある店主古渡勇氣さんの創作物も扱っています。弟さんの鉄工ブランド工房「+てつ(とてつ)」も別棟にあり、正面の母屋はお母様がなさるカフェ「FURU」です。
古渡ファミリーがそうであるように、猫たちも自然体のオープンマインドで、とってもフレンドリー。
では、こかげくんに、るうぷたうん店内を案内してもらいましょう。

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「この人が、僕たちの飼い主勇氣さん」
現在のつくばみらい市で育った勇氣さんは、上京後、グラフィックデザインや音楽を仕事として、渋谷カルチャーにとっぷり浸かって暮らしを満喫していました。
そんなとき、お父様がこの古民家を購入。大正時代には結城紬の織物工場だった広い敷地と建物でしたが、10年前の大水害で、ゴミだらけ。その再生を手伝うためにしぶしぶやってきて、少年時代に遊び回った光や風や土の心地よさが体内に甦り、ここに住むことを決めたのでした。
「るうぷたうん」は、2018年にオープン。ご近所さんが織物工場の思い出を話し込んでいったり、親子が庭で遊んでいったり、遠くから若者たちが訪れたり。お母様が「来てくださる方のために」とカフェを始めると、さらに訪れる人は、老若男女さまざまに。

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「で、ぼくたちがここにやってきた日のことは、すごーくドラマチックなんだよ!」
初代看板猫のにゃーも2代目みゃーも、おとな猫で迎えた保護猫なので長くは一緒に暮せませんでした。2代目みゃーはウイルス性白血病を発症し、具合が悪くなってあっという間に旅立ってしまいました。勇氣さんにとっては、いつも心の支えとなってくれて店番を共にしたかけがえのない同志みゃー。大号泣しながら庭に埋葬した1~2時間後。そんなこととはつゆ知らぬ友人が「預かってくれないか」と連れてきた子猫たちは、手のひらに2匹が載ってしまうほどの小ささでした。

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「みゃーを失った喪失感と悲しみと、ただただ生きようとする子猫の生命力と、授乳して育てなきゃいけない忙しさとで、わけのわからない1日でしたね」と、勇氣さん。

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陰陽のごとく重なって寝ている姿から、付けた名前が「こかげ」と「ひなた」
そう、この地にたっぷりとある2つでした。
その日から、1年半。
いまや、立派な看板猫を務める2匹です。

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るうぷたうんの店内には、大きな机の読書コーナーもあります。
勇氣さんの作った猫の陶作品も窓辺に。「これまで猫のカタチってなぜか創れなかったんですが、2匹を子猫から育てて初めて創れるようになりました。フォルムとか柔らかさとか、手で実感できたからでしょうね」

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店内は、ときどき、様々な趣向のライブ会場にもなります。

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薄暗い店内だからこそわかる、差し込む光の心地よさ。影の美しさ。

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ときを経たものだけが持つ、質感や変色や歪みが、物語をはらみます。
猫が気持ちよさそうにくつろぐ場所は、人も同じこと。
「るうぷたうん」は「巡り巡る町」という意味ですが、まさに、人も時間も物も、ここで心地よく巡っています。

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こかげくん、みゃーのあとを継いで、立派にレジ番してますね。

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ひなたちゃんだって、納屋でお客さんの接待にいそしんでいました。

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「古道具を眺めるだけでも、猫に会いに来てくれるだけでもうれしいなあ」と、勇氣さん。
まるで夏休みに親せきの家に遊びに来たような、あまりの居心地の良さに、長居をしました。

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帰り際には、納屋の2階の窓から見送ってくれたこかげくん。

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夕陽に照らされた欅の幹が、オレンジ色に輝いていました。
梅雨が明けたら、夏の日向と木陰を愉しむ2匹に会いに行くのが楽しみです。

※るうぷたうん
茨城県常総市沖新田町532
13:00~19:00 月曜・火曜定休(「FURU」も同じ)



「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

夏の日向と木陰を愉しむ・・・何と素晴らしい締め‼ それにしても"気”の入ったご主人の名前を含め、全てが自然の上に、芸術的で工芸的で美しい。こんな日本的環境の中にいるからか、こかげくんもひなたちゃんも、その柄とピッタリに自然の柔らか味を帯びているように感じるから不思議。

by Y.M 2025-06-10 17:13

なんて素敵なお名前なんでしょう! 2番目の写真がまさに木陰と日向。美しい写真ですね。 
亡くなる命を見送ることと生きようとする命を育むことを同時期に経験されたんですね。
こかげくんもひなたちゃんも、立派な看板猫さん! 

by ちぃ 2025-06-10 20:18

うちの兄弟ねこも「ひなた」と「こかげ」です。
同じネーミングの子がいるなんてビックリ。

by いぬまき 2025-06-10 22:02

るうぷたうん、素敵なところですね♪
光と影のコントラストが、またまた素敵!
何とも癒やされます。
そして赤ちゃんネコを抱く勇氣さんの温かい笑顔♪
ぜひとも看板猫のおふたりに会いに行きたいです!
佐竹さん、今回の記事も疲れ気味の心に沁みました♪

by ぴっころ 2025-06-10 22:46

こんなに素敵な楽園で暮らすこかげくんとひなたちゃん。
悲しい別れからのまさかの展開は本当にドラマチックでしたね。
旧織物工場で猫たちと古道具を眺め、珈琲を頂くことができるなんて、最高の休日になりそうです。

by ヤンヤン 2025-06-12 05:28

>Y.Mさん
日本の原風に日本猫。なんとも和みますよね~~。
兄妹共に育ててもらったのもラッキーな子たちです!

by 道ばた猫 2025-06-18 17:17

>ちぃさん

終わる命と新しい命。
二つが隣あわせにあることを、理屈じゃなく動物たちってわかっていそうですね。

by 道ばた猫 2025-06-18 17:21

>いぬまきさん

ひなたとこかげ。なんてすてきな名前でしょうと感激しましたが、いぬまきさんちの猫さんもそうだとは!
きょうだいなのかな?

by 道ばた猫 2025-06-18 17:23

>ぴっころさん

ぜひぜひ、訪問してみてください!
春夏秋冬、どの季節もよさそうです。

by 道ばた猫 2025-06-18 17:24

>ヤンヤンさん

カフェがまた、とっても趣のある母屋なんです。
敷地内で、のんびり数時間長居をしてしまいます。

by 道ばた猫 2025-06-18 17:26