猫ねこ展開催中の10年前の6月。松山庭園美術館館主のコノキ画伯の立体作品を猫トンネルにして遊んでいる可愛い盛りの黄色い子猫がいました。
そのひと月前、都内下町で兄妹3匹で保護されたばかりのその子は、目もぐちゅぐちゅのまま、ここへやってきました。「猫ねこ展会期中に譲渡先を見つけましょう」と、館長さんが言ってくださったからです。
キジトラ姉妹は、近隣の町に住むかたの元へ一緒にもらわれていき、黄色い男の子は美術館のスタッフでもある画家の花澤さんのおうちの子になりました。
そして、カッコいい「虎之介」という名をもらい、週末の美術館通い猫となりました。
少年時代の虎之介くんは、美術館の広大な庭で松ぼっくりを集めたり、木の上から遠くを見渡すのに夢中になっていました。人見知りのところもあるけれど、ナイーブでやさしい彼は来館者の人気者に。
虎之介くんが8カ月くらいの時に、同じく美術館で譲渡先を探すためにやってきた子猫「チビ」との出会いと別れを当ブログに書いたときは、たくさんのコメントをいただきました。→〔
2015年11月10日『2週間のおとうと』〕
チビが行ってしまった10か月後、突然、虎之介くんのおうちに可愛い妹がやってきました。→(
2016年9月13日「ボクの妹」)
虎之介くんは、妹になった瀬奈ちゃんと一緒に週末の美術館に通うことになります。
短毛だった瀬奈ちゃんはいつしか長毛に。よくふたりで、雲を眺めていたね。
たくさんの子猫がやってきて、おうちを見つけて卒業していったり、そのまま美術館猫になったり。
オッドアイの白猫ミーちゃんも、行き場のなかった子猫。若くして出産。小さな体ながら、わが子を溺愛するゴッドマザーとして美術館の看板猫の地位にのぼりつめてきました。
そこで、もう遊び回る年齢でもなくなった虎之介・瀬奈コンビは、数年前、美術館の猫スタッフをミーちゃんファミリーに任せて卒業することに。
当ブログで、何度か美術館の通い猫として2匹をご紹介したので、今もよく聞かれるのが「美術館に行ったけれど、虎之介くんたちに会えませんでした」「あの虎之介くんは、元気でいますか」というお尋ね。
そこで先週、「すっかりおばあちゃん子の甘えん坊」になっていると噂の、虎之介くんに会いに行ってきました!
虎之介くんは10歳、瀬奈ちゃんは9歳の熟年になっているはず。
花澤さんに抱かれて現れた虎之介くん。お、おおきい!!
「美術館の広い庭を駆け回ることもなくなったので、ちょっとぽっちゃりになりましたが、瀬奈と仲良く元気に過ごしています」と花澤さん。
「かなり甘えん坊になって、子猫時代のように隙あらば膝に乗ってくるんですよ(笑)」
ここも、丹精の花が四季折々に咲く気持ちのいいお庭。虎之介くんも瀬奈ちゃんも、庭を一周してはおひさまの下でゴロンゴロンするのが、日課です。
瀬奈ちゃんも、一段とゴージャスに。
花澤家では、夕食後にいつもヨーグルトを食べるのですが、冷蔵庫からヨーグルトを出す時間になると、虎之介くんはお座りして待ちます。瀬奈ちゃんは呼ぶとやってきます。ふたりで仲良く健康にいい猫おやつを1本食べるのが習慣なんですって。
花澤さんの願いはただひとつ。
「揃って元気に長生きしてね」
花澤家の縁側にはときどき、歌手の天童よしみさんに似た、手術済みの通い猫「よしみちゃん」(オスだけど)がやってきてガラス越しに交流。のどかで幸せな2匹の今でした。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

『
寄りそう猫』
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

『
いつもそばにいる猫』
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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小さくてあどけなかった虎之介くんと瀬奈ちゃん、そんの成長を辿るのは楽しい。猫も大切にされると名前負けしない立派な大人に成長することが良くわかった。虎之介くんは運動不足に気を付けるとしても、二人とも引き続き上を向いて(見つめて)歩んで行かれますように。
by Y.M 2025-05-27 16:42
虎之介くん、凄い貫禄ですねー
幸せそうです!
瀬奈ちゃんとずっと仲良くね
それにしても、どうして美術館と猫は合うのでしょうか? 猫って芸術だから?
by ちぃ 2025-05-27 23:19
ああ、虎之介くん、瀬奈ちゃん懐かしい!
コロナ禍一年目の猫ねこ展の時、美術館で会いました。(ニンゲンも行き場がなくて...)
我が家の姫以外で指をクンクン嗅いでもらったのは初めてだったので、とても嬉しかった記憶があります。
これからも仲良く穏やかに過ごして下さい。
by ヤンヤン 2025-05-28 05:20
>Y.Mさん
こうして、忘れえぬ猫さんと再び会えて、幸せな今をご報告できるのは、ライター冥利につきます。
すっかり忘れられていたとしても(笑)。
by 道ばた猫 2025-06-04 14:42
>ちぃさん
館主のコノキ先生もいつかこうおっしゃっていましたよ。「猫のミステリアスな魅力と美しさは、どう描いても描ききれないので、絵描きたちは猫を描くことに夢中になる」と。
by 道ばた猫 2025-06-04 14:45
>ヤンヤンさん
美術館の庭を駆け回り、猫好きに可愛がられた日々は、ふたりの胸の奥にあると思います。
静かな家猫としての平穏が、今のしあわせですね~~。
by 道ばた猫 2025-06-04 14:49
おお~!虎之介くん立派になって~(^o^)
瀬奈ちゃんも相変わらずの美しさ♪
ふたりとも幸せそうで何よりです。
そして、4枚目の虎之介くんとチビくんとのツーショット、以前から大好きな写真です。
コノキ画伯の作品と緑の陰影に、可愛いふたりの姿が映えて、ほんとうに美しい…!
何度見ても見惚れてしまいます。
ほんとうに傑作だと思います!
by ぴっころ 2025-06-10 23:09