※本記事には、事故当時の描写が含まれます。外猫を取り巻く状況の一つとして、なるべくありのままにお伝えしています。そういった描写が苦手な方はご注意ください。
大理石のような毛色に、賢そうなうす黄緑の瞳。
さっちゃんこと幸生(さちお)くんは、3歳の若猫さん。
春の陽光が、清潔で広いお部屋に差し込んで、ひなたぼっこにもってこいの一日。
あっちで転がっているのは、同室の小太郎先輩です。
9歳になる小太郎くんは、近くの路上で車に轢かれ、動けなくなっているところを助けられた子。事故の後遺症で、下肢は曲がり、麻痺しています。
ここは、虐待から生還したいっちゃんやFIP寛解のココくんの記事でもご紹介した、あの玲子さんち。いっちゃんやココくん、子猫組は2階暮らしですが、今回は1階で暮らすおとな猫組の1匹、幸生くんのこれまでをご紹介します。
幸生くんは、生後3か月くらいの仔猫のとき、埼玉県内でおそらくお腹から下を車に轢かれたのでしょう、下半身がつぶれて動けないところを、見つけた人が保健所に通報しました。
すでに事故から3日くらいたっていたそうです。
保健所から連絡が入り、駆けつけたのが一般社団法人「彩の猫」の代表堀口さん。堀口さんは保健所から連絡が入ると絶対に断りません。「すべての命を救うことは不可能でも、目にし耳にした命は救う!」を信条としているからです。そして、苦しみしか残されていない場合でない限り、希望の中で生かしたいと、全力で守ります。
病院へ運ぶ車の中は血の匂いで満ち、子猫は悲鳴を上げていました。この数日、灰色のこの子はどれほどの激痛と恐怖と喉の渇きと飢えに苦しんだことでしょう。
強度の貧血だったので、命を救うための断脚手術がすぐにはできず、毎日自宅や仲間の家から、供血可能な重量級猫さんたちの協力を得て3匹連れて病院へ通いました。術中も術後も供血が必要でしたが、保護猫仲間の血を分けてもらって無事手術終了。
入院中に、貧血は解消し自力でご飯を食べるようになって、ひと月後に「彩の猫」の県外預かりボランティア玲子さんの家に迎えられたのでした。
「彩の猫」で付けた名は「サラ」でしたが、看護婦さんたちがしあわせになってほしいと「幸生」と呼んでいたので、そのまま「幸生」となりました。
やってきたときは4~5か月の月齢。走り回りたい年ごろに後ろ両脚を失った幸生くん。でも、「足は失ったけれど、失った以上の幸せをあげよう」という「彩の猫」のバトンを、玲子さんはしっかり引き継ぎました。
しばらくの間は2階で、虐待を受けて後遺症が残るいっちゃんとの同居生活でした。が、いっちゃんが大好きなのは仔猫ちゃん。いっちゃんのストレスも考えて、幸生くんはやがて1階の大人組にお引越し。
前脚を使って、床を移動したり、ソファに上がったり下りたりもできますが、動き回りすぎると、断脚面からまだ出血してしまうのが悩みどころ。
同室は同じく事故で下半身に障害の残る小太郎くんと、全盲の福ちゃん。2階のいっちゃん含め、障害が重い子は、預かり猫卒業で、玲子さんちの猫となっています。
行き来自由の隣室には、ちょっと気の強い白猫ミルクちゃんと、優しすぎて外猫時代は顔に生傷が絶えなかった白猫玉三郎くん。
ミルクちゃんは隣からよくちょっかいを出しにやってきます。
「ボクたちみんな、玲子母さんが大好きなんだ。2階にはまた仔猫がやってきたみたい。母さんの手がもっといっぱいあったらいいな」
玲子さんが、いつもたくさんの保護猫や預かり猫を抱えているいきさつはこの記事をお読みください。→ 2025年5月13日記事「
虐待から生還したいっちゃん」
埼玉県の「彩の猫」と千葉県の玲子さん。県を越え、その思いはしっかりバトンタッチされています。
「どんな猫も幸せにその一生を全うさせたい」
「彩の猫」により保健所から引き出され、玲子さんちにやってきた交通事故による傷病猫は、現在、幸生くん、茶トラのトラえもん、サビ猫のエマちゃんの3匹です。
外暮らしは危険がいっぱい。
救えど救えど、事故や多頭飼育崩壊など次から次に保護案件が噴出する日々。それでも、堀口さんや玲子さん、志を同じくする仲間たちは、傷ついた猫も年老いた猫も最後の日まで見守ることを誓い、活動を続けています。
春の日差しの中での幸生くんたちのまどろみも、それぞれのつらい体験を乗り越えて、いま生きてこそ。
彩の猫の懸命の活動は、ぜひインスタで。
inc.sainoneko
たくさんの保護猫たちの終の棲家となる新シェルター維持のためのクラウドファンディングは、残すところ3日です。
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「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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