利根川の近く、田畑が広がるのどかな農村にコロンくんは住んでいます。
お客さんが大の苦手というのですが、果たして姿を見せてくれるでしょうか。
あっ、いましたいました! 若き日のキアヌリーブスのようなイケメンが、こたつの中でムスッとしています。
それもそのはず。取材のためにお母さんにこの部屋に閉じ込められて、こたつの中しか隠れ場所がなかったようです。
「絶対、ここから出ないもんね」
「出なくてもいいけど、写真撮らせてね。そうだ、コロンくんにおみやげ持ってきた」
えっ、何、これ。
コロンくんの目が輝きます。
こういう時にもってこいのおみやげ。それは、ぽん子堂さんの手作りおもちゃです。
ぽん子さんは、鎌倉で保護猫の預かりボランティアをしながら、猫たちが喜ぶ安全なおもちゃやグッズを作っています。
今日もってきたのは、マタタビの小枝を、裂き布でしっかりくるんだ「またたび
カミカミ」なのだ!
夢中になって遊ぶコロンくんの写真を撮りながら、お母さんにお話を聞きました。
コロンくんは、8年前に、このおうちにやってきました。
少し前から、コロンくんにそっくりの長毛ノラ母さんが、庭を横ぎることがあったそうです。この辺りは、餌場もあり、ノラは生きていける土地柄ですが、手術が追い付いていません。
このおうちのお父さんとお母さんが4日間、京都へ行っていて、帰ってきた晩のこと。
お父さんは大工をしていて、その作業場が車置き場でもあるのですが、作業場の中二階から子猫の鳴き声がします。でも夜なので探しようがなく、翌朝探してみると、中二階に生まれて間もない子猫が1匹!
どうやら、ノラ母さんがよそで産んだ子を、無人の仕事場に運んできたようでした。でも、休暇終わりの仕事場は人の出入りも車の出入りも激しくなり、ノラ母さんは寄り付くことができなくなって、子猫は置いていかれた状態に。そこで、子猫保護を決め、隣に住む小学生の孫息子君が魚獲り網を使って保護。
「そうなの。ボク、魚獲り網で捕まっちゃった子なの」
お母さんは、お湯を入れたペットボトルをタオルで包んだものをケージに入れて子猫を温め、スポイトでミルクを与えました。
この家では、いつも猫がいて、そのときは長いこと暮らした兄妹猫を続けて見送ったばかり。
「でも、こんなちっちゃな子を育てるのは初めてで、無我夢中でした」
かかりつけの獣医さんに電話すると、帰ってきた返事は「そんなちっちゃな猫、育てるの無理だよ。一週間もしないで死んじゃうよ」
それを聞いたお母さん、発奮します。どうにか生かしたい、と。
1週間後「生きてます」と連絡すると、獣医さんは「栄養剤をとりにおいで」と言ってくれました。
「そうなの。母さんは懸命にボクを育ててくれたの」
ノラ母さんは何度か、わが子を探しに来ましたが、遠くから人の姿を見るだけでピュッと逃げていき、そのうち来なくなりました。後ろ姿に「ごめんね」と心の中で謝ったお母さんでした。
「このおもちゃ、気に入った。もらっていいよね」
そして8年。コロンくんは、こんなに立派に大きくなりました。
甘々のお母さんにはべったり。しつけにちょっとうるさいお父さんは敬遠。
保護してくれたお兄ちゃんは高校生になって、大好きなおやつ持参でしょっちゅう遊びに来てくれます。
「この子、ちょっとどんくさいところがあるんです。高いところにぴょんと乗って、よく滑り落ちてます」と、それも可愛くてたまらない様子のお母さん。
完全室内飼いのコロンくん。最初の頃、サッシも網戸も自分で開けてしまって外に出てしまったことが何回か。でも、外にびっくりしてすぐにUターン。
それでも、万が一の事故予防のため、夏は網戸の外に柵を取り付けます。大工さんだから、お手のもの。玄関もカギ閉め必須という、大事な箱入り息子ならぬこたつ入り息子のコロンくんでした。
母さんが差し出すおやつにつられ、こたつからつかの間出てきたコロンくん。この時ばかりはかなり野性的ですねえ。
「今日はおみやげをありがとう」と、最初の一瞥と打って変わってまあるい目で見送ってくれたコロンくんでした。初のこたつ内取材でしたが、おみやげのおかげで和やかに終えることができました。
※ねこもの屋ぽん子堂さんは、鎌倉小町通りに小さな楽しい実店舗があります。開店日は、ぽん子堂さんのインスタ
@ponkodo_catで。
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「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫は奇跡』
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

『
猫との約束』
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『
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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