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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫のまもりびと

2022年10月08日

第17回 初めての猫ボランティア その2


前回のお話(『猫のまもりびと』第16回)はこちら

ガリガリに痩せた外猫チャッピーを気にかけつつ、猫の保護活動をしているNPO団体に連絡をしたというケイさん。

撫でることすらできないチャッピーの捕獲は無理でも、せめて他の猫たちを助けることならできるかもしれないと、預かりボランティアをはじめようと思ったのだそう。けれど、そこで知り合った猫ボランティア墨田さんの言葉は、とても力強いものでした。

「『チャッピーを捕獲しましょう』そうおっしゃって、墨田さんご自身もすぐに来て下さったんです。私は、捕獲器を見たのもその時がはじめてでしたし、なにより、面識もない猫のために、そこまで献身的になってくれる人ともはじめて会ったので、驚きました」

墨田さんは、慣れた様子でテキパキと捕獲作業を進めて下さったのだそう。

「いつもごはんをあげている時間、お昼の11時くらいからはじめました。人の目がたくさんある場所で、大丈夫かなと不安もあったのですが......墨田さんはとにかく行動が早く、猫のことはなんでも知ってるんです。あちこちの動物病院に電話をしたりと、顔もとても広くて、私の目にはヒーローみたいに映りました」

そんな墨田さんの的確な助けもあり、チャッピーは無事、捕獲器に入ってくれたそうです。

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(写真:ケイさんご提供)

そして、ケイさんを驚かせたのは、捕獲後のチャッピーの様子。

「実は、外でごはんをあげているときは、一度もチャッピーに触れたことがなかったんです。それなのに、捕獲してケージに入れたとたん、触らせてくれるようになって。捕獲後は引っかくことも一度もなく、ああこの子は賢い、自分の身に起きていることをちゃんと理解してるんだ、そう思いました」

お話を伺いながら、その感じわかる、と思いました。猫は一見ポーカーフェイスで、こちらの思いが伝わっているか実感できないことも多い。けれど、実は私たちのことをとてもよく観察していて、心を許すと、知らなかった一面をどんどん見せてくれるようになるし、本当はいろいろなことを察しているんだと、私自身も驚いたことがあったからです。

だから余計に、猫を捨てたり、無責任に外に出したりしないでほしいと、願わずにはいられないのです。

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(写真:ケイさんご提供)

「チャッピーは地元では有名な猫だったので、保護したことを知って喜んでくれる人や、おやつを持ってお店まで見に来て下さる方がたくさんいました。保護直後はボロボロ、全身ひどい毛玉だらけで足も引きずっていたんですが、少しずつ回復していって、同時に、甘えん坊なかわいい一面を、見せてくれるようになったんです」

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(写真:ケイさんご提供)

そんなチャッピーの姿に、「この子にずっとのおうちを見つけよう」と思ったケイさん。ご自宅に猫がいるということもあり、チャッピーは事務所で保護していたので、おうちの中でたっぷり甘えさせてくれる里親さんがいたら、と考えるようになったのだそうです。

「インスタを通じて里親さんを募集したら、こんないい人いない! というくらい優しい方が手をあげて下さって。高齢の猫を看護し、看取った経験のある方で、チャッピーもその方に本当によく懐いて。今も頻繁に連絡下さるんですが、チャッピーは、里親さんの腕枕で一緒に寝るようになったそうですよ」

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里親さんの腕枕で寝るチャッピー。ケイさんを通じて、里親さんが写真を提供して下さった。

うわあ、それはすごい! チャッピーがたくさんの愛情を感じている様子は、なんだか私まで嬉しいです。ケイさんは、生まれて初めて猫を保護し、譲渡したわけですが、今はどんなお気持ちでいますか。

「保護、人馴れ、譲渡を経験して、自分にもできることがあるんだとわかりました。あのとき、チャッピーを保護せず、万が一亡くなってしまっていたら、きっととても後悔したと思うんです。だから、そうならなくてよかった、保護できて本当によかったと、チャッピーと出会った緑道を通るたびに今でも思います」

私も、しっぽを保護した公園の前を通るたびに、今でも、生垣の中でしっぽが震えている気がして、つい足を止めてしまいます。そして「しっぽは今、里親さんのおうちで幸せに暮らしているんだ。もう大丈夫なんだ」と、改めてホッとしています。

「チャッピーを通じて、猫のボランティアや保護活動をしている人たちと繋がりができ、活動そのものについても知ることができました。これから先も、自分にできる範囲ではありますが、やれることをやっていこうと思っています」

そうおっしゃるケイさんの隣には、奄美からやってきたルナちゃんの姿が。預かり当初よりだいぶ距離が近くなったというルナちゃん。我が家で預かっている奄美の猫ユルも、少しずつですが甘えてくれるようになってきました。ルナちゃんにもユルにも、いずれ素敵な里親さんとのご縁があるといいですね。

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この取材のときよりも、現在はさらに甘えるようになったというルナちゃん。

猫ボランティアをはじめたばかりの者同士、ケイさんの一言ひとことに強く共感しながら、私も自分なりに尽力していこうと、改めて思ったのでした。


※第18回の更新は11月5日(土)予定です。


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猫のまもりびとライター紹介

あさのますみ

声優、作家。さまざまな経緯で出会った保護猫4匹と暮らしている。2019年、生まれて初めて野良猫を保護したことをきっかけに、地域猫活動や、TNRに興味をもつ。猫に関する著書に、「日々猫だらけ ときどき小鳥」(ポプラ社)、「ねがいごと」(学研)。趣味はカメラ。

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カテゴリ: 猫のまもりびと
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みにゃさまのコメント

チャッピーとケイさんのお話は、以前読んで知っていました。

チャッピーの幸せな写真を見れて、嬉しかったです。
チャッピー、子供たちの分まで幸せになってね。

あさのさん、記事にしてくれてありがとうございました。
しっぽの話も、読ませて頂きました。
通勤時のJRの中で読んでしまい、涙が止まらなくなりました。家で読めば良かったと、後悔しました。

これからも、素敵な記事を書いて下さいね。

by かおりん 2022-10-08 11:15