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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

保護猫しあわせ物語

2022年07月23日

「保護猫しあわせ物語」Vol.103 かやちゃん

みにゃさまと一緒につくる連載、「保護猫しあわせ物語」。
Vol.103は、人慣れしていないようでも本当は人にとっても優しい「かや」ちゃんのお話です。

後にうちの子になるサビ猫さんと出会ったのは、猫さんを家に迎えたいと思い訪れた、保護猫カフェの保護施設でした。
最近保護されたばかりで、まだ新しい環境に慣れていないためケージの中にいて、毛布の塊の中に潜り黒っぽい顔だけ出して、緊張した面持ちで外を窺っていました。

店長さんの話によると、その子はまだ1歳未満位の若猫で、集会所のような無人の建物に住んでいたそうです。
子猫を生んだのを機に捕獲され、子猫はすぐ里親がつき、親猫であるこの子は避妊手術後に元の場所に放されました。
しかし、それと前後して住み家の建物が取り壊されることになり、行き場がなくなってしまう、と餌やりさんから相談があり施設にくることになったそうです。
子猫と引き離されて間がないためか、毎晩夜鳴きしているとか。

気になったものの、猫さんの一生のことなので即断は控え、一度家に帰り数日考え、後日再訪した時には、ケージを出て施設内をフリーになっていました。

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かのサビ猫さんは人慣れしておらず、常に「全身隠れて、2方向以上に逃げ場がある、人間から一定以上離れた場所」にいて警戒姿勢を崩さず、プロの野良の技を見ました。

事前に保護猫のことを調べていた時、人なつこい子は里親がつきやすく、人慣れしてない子はその逆という話をよく目にしました。
外暮らしの過酷な状況を生き延びるために、頑張って警戒や逃げ方等生きる術を身に付けたのに、その力ゆえ安心安全の温かい家が得にくいということがやるせなく感じました。
「猫さんを迎えるなら、『君は強いから一人で生きていけるよね。でもこの子は僕がいないとダメなんだ』と振られてしまうような子を迎えて、デロデロに甘やかして幸せにするんだ......!」
と拳を握ったのでした。

そんな背景もあり、「この子を幸せにしたい」と思い、迎えることにしました。

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出会ったのが6月下旬で、夏越の大祓の時期だったので、病魔を祓う茅の輪にちなみ、ずっと病気と無縁で健やかでいますようにと願いを込めて、「かや(茅)さん」と名付けました。

家が決まればハッピーエンド......ではなく、その先があります。
うちに来て初めの一週間、かやさんはウォークインクローゼットの中に籠城しました。
猫さんが隠れ家として好みそうな狭くて暗くて柔らかい場所をいくつも用意しましたが、そんな子供だましの「安心した気分になれる」場所など見向きもしません。「安全が、命が確保できる場所」をシビアに選びます。ウォークインクローゼットはある程度広いので、人が捕まえようとしても手をかいくぐって逃げられる。家中で一番防御率の高い場所を見極め選びとりました。
そして夜行性になりました(施設では昼間活動していましたが)。
暗くなり人間が寝静まってから家を探検し、ご飯やトイレを済ませませ日の出と共にクローゼットへ戻ります。電気を点けると一瞬で消失するので、人間も電気を点けずに暮らしました。自分の黒と茶のステルス体色を熟知していて、暗闇で色の濃い場所で息を潜める隠行の技を使われると人間の知覚では感知できません。

猫さんは新しい環境では初めはご飯を食べなかったりお腹を壊したりすることが多いですが、かやさんは初日からご飯を食べトイレも健康。

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かやさんは、頭がよくサバイバル能力が極めて高い、叩き上げの戦士のような子でした。
人慣れない子を迎えて一番の心配だったのは、ストレスで体を壊させてしまうなど「うちに迎えたせいで不幸にしてしまう」ことでしたが、かやさんの自己管理能力の高さに大変助けられました。

明るい所で全身像を見ることができたのは5日後。
夜鳴きがほぼ収まったのは10日後。
クローゼットの籠城解除は3週間後。
触らせてくれたのは4ヵ月後。
そして、かやさんを迎えてそろそろ2年の今は、人間に挟まってお尻ポンポンしてもらうのが好きです。

今も膝乗りや抱っこはできず、あまり撫でさせてくれませんが、額ごつん挨拶は受け入れてくれます。
かやさんのペースで少しずつ近づいてくれています。

ジョブは歴戦の戦士ですが性格は気遣い屋さんで、ワクチンに連れていくためキャリーに入れられる等「命の危険を感じる」時は勇猛果敢なファイターと化しますが、人間が忙しい間はじっと待って切りがいい時に声をかけてくるような健気な子です。
私は悪夢を見ることが多く、夜中に目が覚め悪夢の名残を払うため家の中を歩くことがあるのですが、かやさんがすぐ現れて「起きましたね? さぁポンポンを!」と言うので、温かいもふもふな毛皮をポンポンしているうち悪夢の記憶は粉砕されます。大変有能な悪夢クラッシャーです。

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かやさんに猫語で「幸せですか」と訊くことはできません。でも、他の部屋にいる私を呼びに来てテリトリーであるリビングへ先導して連れていく時にピンと立てた尻尾や、私に背中をくっつけて日向ぼっこして満足げに寝ている姿に、今の暮らしを「まぁ、悪くないかな」と思ってくれているように感じられます。

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かやさんを迎えた時、保護猫カフェ店長さんは、この子は沢山ファンがいたんですよ、とおっしゃいました。
保護の検討をしていたら、周囲に住む方で、実は自分も餌をあげていたという方が何人もいたそうです。
餌やりさん、周辺住民の方、保護猫カフェの方と、沢山の方がかやさんが幸せになることを願ってくれました。この輪がどこかで切れていたら、かやさんの命はなかったかもしれません。
里親は命のバトンのアンカーです。最後の日まで、かやさんとずっと一緒に歩いていくこれからの日々を楽しみにしています。

(かや/2歳(3歳弱)ペンネーム: KANAさんより)




スタッフより

みにゃさまからの、「保護猫しあわせ物語」を募集しています。

保護される前、または家に迎え入れる前のエピソード(Before)と、家に迎え入れた後しあわせに暮らしているエピソード(After)の2つを盛り込んでお送りください。
ご応募いただいた作品はリサイズや加筆修正等させていただく場合がありますのでご了承ください。

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みにゃさまのコメント

「プロの野良の技」とか「頭がよくサバイバル能力が極めて高い、叩き上げの戦士のような子」とか「自分の黒と茶のステルス体色を熟知していて」とか「かやさんの自己管理能力の高さに大変助けられました」とか……上手い言い方するなぁ……と感心しました。
と同時に、かやちゃんにも魅せられました。

by nao 2022-07-23 21:30

かやちゃんはなんて素敵な主さんにお迎えしてもらったのでしょう!読んでいて感動しました。野良のプロ(笑)がおうちに慣れるまではさぞ大変だったろうと思いますが、それも楽しんでらっしゃるように感じてとても心があたたかくなりました。
これからもかやちゃんと幸せな時間を過ごしてくださいね。

by さおり 2022-08-14 14:58