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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫又トリップ

2022年02月02日

川に流された猫がたどり着いた先でつかんだ幸せな未来

_K7A1257.jpg なんて神々しい

 保護して2〜3ヶ月経っても歩かない子猫がいました。心配になったこの家の姉妹が動物病院へ連れて行くと「もしかしたら一生歩けないかも」と獣医から宣告されたのです。それでも自分たちにできる事はなにかあるのではないかと思い、姉妹は獣医にたずねました。すると、「日光浴ぐらいだね」という答えが。そして、その教えを忠実に守ること数ヶ月――。やがて子猫は歩き出し、走れるようにもなりました。猫の名は「アシュラン」、阿修羅像のように強く美しく育ち、現在17歳になるといいます。

_K7A1285.jpg シニア期に入り、来客も平気に。どんな心境の変化が?


アシュランの将来と姉妹の覚悟


 サビ猫のアシュラン(メス)は石田恵美さん・里香さん姉妹の親戚が拾って来た猫です。親戚から聞いた話は、台風の日に猫の鳴き声とともに川から段ボール箱がどんぶらこと流れて来て、それをキャッチしたら中に子猫が2匹いたという衝撃的な内容でした。状況からして、多分、人間に捨てられたのでしょう。最初は、のちに譲渡先を探す予定で預かったのですが、小さかったアシュランの世話を優先していると、もう一方の元気だった猫は、わずか1週間でなんの予兆もなく虹の橋を渡ってしまいました。そんな出来事もあって、より懸命にアシュランを育て、歩けなくなるかもという獣医師の判断が下ってからは「家の子にする」と覚悟を決め、その名前を授けたのでした。

_K7A1267.jpg 家では「神様」と呼ばれ、崇められているという

_K7A1271.jpg 今にも喋りそう


大き過ぎた母親役みーちゃんの存在


 また虚弱だったアシュランの成長過程に先住猫「みーちゃん」(メス)の存在は外せません。アシュランを自分の子のように可愛がり、もう1匹の先住猫(オス)が近寄ろうものなら「シャー(あっち行け!)」と威嚇して遠ざける。しかし、そんな母娘の生活は長くは続きませんでした。アシュランが2歳の時にみーちゃんは虹の橋を渡ったのです。(享年8歳)

_K7A1227.jpg ほんとは抱っこ嫌い。でも今日は許す

 それからアシュランはメンタルが崩壊してしまい、自分の毛を引きちぎり「抜毛症」になりました。その時の様子は、飼い主曰く、半袖半ズボンになるほどだったと。人間だけでは寂しさが埋めきれないほど、みーちゃんの存在が大きかったことがわかる逸話です。ほんの少し前まで毛が生え揃ってなかったといいますが、昨年、引っ越したときに思い出をうまく一緒に置いてくることができたのか、今はストレスなく過ごせているようです。

_K7A1314.jpg カイカイ

_K7A1335.jpg フサフサ

_K7A1212.jpg マルマル


シニア期の健康問題と注意点


 病院では良い子にしているというアシュラン。首からの採血やエコー検査もおとなしく応じてくれています。現在、気にかけているところは以下の3点。

・便秘
・股関節
・トムとジェリー症候群

【便秘】
 3〜4日かけて1回。5〜6時間かけて排泄。対策として獣医から勧められた「サイリウム粉末430g(自然健康社)」をドライフードに振りかけると出るようになったとのこと。食事は「サイエンスダイエット シニアプラス(ヒルズ)」一本。食べているうちは極力いじらない方針。

【関節炎】
 ガニ股歩きが気になり、東洋医学の鍼灸(針)を試し、良き感触あり。(痛みを緩和させて生活の質を上げたいと姉妹ともに勉強中)

【トムとジェリー症候群=特定の音に反応して発作が起きる症状】
 アシュランはお菓子の袋のカサカサ音やキッチンの蛇口から流れる水道音に過敏に反応する。このてんかん発作のような症状はアシュラン15歳の時から。今は体がビクンビクンとなり、発作の前兆がわかるらしく、すぐに駆けつけ体をマッサージして落ち着かせる対策をとっている。この日もカメラバッグを開けるチャック音に一瞬ビクンと反応があったよう。(何事もなくて良かったが、初めての猫取材では事前確認が必要だと教訓になった)

_K7A1367.jpg 昔はシンクの蛇口から直飲みが大好きだったと。今はこれで十分

_K7A1280.jpg 近づいたり、遠ざけたり

_K7A1380.jpg 猫は気まぐれだ


やがて姉妹は動物のプロフェッショナルに


 姉の恵美さんの職業はドッグトレーナーでアシュランと暮らす空間とは別に2頭のシニア犬とも暮らしています。一方、妹の里香さんは動物看護師として動物病院に勤務しており、自分の部屋でも別の猫(12歳)と暮らしているそうです。一般家庭の猫として、保護されたアシュラン。それが時を経て、まさか動物のプロの道を選んだ姉妹に、見守られることになるとはアシュランも想定外だったでしょう。すぐ獣医に相談できる環境なんて羨ましいかぎりです。なんて心強い! でも、アシュラン、それ以上に君は強運な猫だったんだね。

_K7A1386.jpg 冬はホカペが欠かせない

_K7A1398.jpg ホカペ+ブランケットが最高です

_K7A1409.jpg いいポジションを探しホリホリします

_K7A1420.jpg 完成形! 寝るー!


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猫又トリップライター紹介

ケニア・ドイ

1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。

http://kenyadoi.com

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カテゴリ: 猫又トリップ
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