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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫又トリップ

2019年07月24日

地域猫10年+家猫7年=推定17歳。猫エイズキャリア「さんきち」が掴(つか)んだ幸せ

「ポポ」という三毛猫を個人で保護活動をしている方から譲り受けた2ヶ月後、道ばたでグッタリした猫と出会ってしまったという本郷さん。その猫は両脇腹の皮膚が大きく裂け、黒い膿がビッシリ付き、赤く炎症した肉が見えていて、ひどく衰弱している状態でした。さぁ、みにゃさまならどうする?

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優しい顔をしておる。



家猫になるまでの生い立ち


突然の出会いにびっくりした本郷佐知子さん(東京都在住)はその場でポポの譲渡でお世話になったボランティアさんに電話をして相談しますが、保護することへの迷いもあり、その場を後にします。しかし、数日後、ボランティアさんの方から「あの子どうなったの?」と連絡があり、「保護しないと後悔するわよ」と本郷さんは背中を押され、発見から約1週間経ったある夜、アドバイスに従い捕獲器を持って人生初の捕獲に向かうのでした。その猫「さんきち」(茶白・男の子)はすぐに保護することができました。きっと、さんきちも助けてもらえるとわかっていたのでしょう(涙)。

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低い姿勢でカメラから離れるさんきち。

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連れ戻されるさんきち。

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そして、抱っこの刑です。


さんきちはすぐに入院。傷口を縫う手術は4回に渡りました。その間、さんきちがその地域でどう育ったのかを知るための情報提供と、手術費の寄付を募るチラシを作って貼ってまわり、発見した場所の周辺の家々にポスティング。その本郷さんの行動力といったら、「すごい」のひと言です。するとさっそく効果があったのか、ポツポツと情報が入って来ました。「この子知ってる!」「1ヶ月ぐらい前から怪我しているのを見た。」「保護されたんだ!」等々、さんきちが地域猫だったこと、ごはんをもらっていたこと、ケガを心配して抗生剤を与えていた人、そして、自腹でTNRをしている人など、その地域のさまざまな猫事情が可視化されていきました。手術費が賄(まかな)えるほどの寄付金も集まりました。中でもさんきちを「人懐こい子」と可愛がり、その他の猫事情にも詳しいおばあちゃんから、さんきちは10歳ぐらいではないかと教えられます。なので、家猫7年目のさんきちは現在、推定17歳となります。

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手術から帰ると3段ケージで生活。その期間約8ヶ月。

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当時のチラシ、いただいた寄付金の封筒は今も大事なお守りに。


保護した直後は、あくまで一時預かりの立場で新たに譲渡先募集のチラシを作って告知したのですが、やはり10歳という年齢に猫エイズキャリアがネックだったのでしょう。新しい飼い主はあらわれず、本郷さんは覚悟を決めます。「うちの子にしよう」と。幸い当時2歳のポポ(9歳・女の子)との関係もこれまで良好で、今は3人同じベッドで一緒に寝るのが至福の時と本郷さん。さんきちは本郷さんが命の恩人だとわかっているようで全幅の信頼を置いています。「ママ大好き。ボクがそばにいるよ」とそっとそばに寄り添ってくれると言います。あの時さんきちを助けて本当に良かったという思いを噛み締めながら。

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色々あったよねー。



譲渡をきっかけにこだわりのフードへ


実家で猫と暮らしていたときはフードのこだわりがなかったという本郷さんですが、ポポの譲渡の際にフードはなるべく良いものをと先方からアドバイスを受け、それが猫の食事を見直す機会に。さんきちが家にやって来てからは「特別療法食i/d(ヒルズ)」や「エイジングケアプラス ステージ2(ロイヤルカナン)」など、健康状態に合わせてフードを変えていきました。また保護してから約2年後の血液検査で「クレアチニン」の数値が高いとわかると「腎臓サポート(ロイヤルカナン)」のドライフードに切り替えるのでした。
食事は朝晩の2回で、1回の量はさんきち、ポポともにドライフード「18g」をキッチリ計量。それと同時におやつのカツオやささみの切り身も副食として与えています。あげればあげるほど食べるさんきちだとわかっているので、太らせ過ぎず痩せさせ過ぎず、体重管理に努めています。

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バラエティ豊かなウエットフード。本郷さんがお休みの日、お昼ごはんに登場。(1回約20gが目安)



気になる健康状態について


さんきちが12歳の時、健康診断で腎臓機能の低下がわかり、そこからフードを変えたことで高かったクレアチニンの数値も少し下がり、現在は他の内臓も含めて健康とのことです。ただ、気になるのは「関節」で、昨年末に後ろ足を痛そうにして不自然な歩き方をするようになり、年が明けてすぐに動物病院へ行くと骨の変形と軟骨がすり減っていることがわかりました。獣医師からは「前々から痛みはあったのでは?高いところには登らないはずだよ」と推察され、「そういえば最近高いところに登らなくなったなぁ。」と本郷さんは振り返ります。そして、家に戻るとステップを増設し、段差をなくす部屋づくりをするのでした。(ああ、なるほど。置いたままにしているアイロン台も、さんきちのためのステップだったんですね!)お薬は病院から処方された関節痛に効果のあるサプリメント「アンチノール(ベッツペッツ)」を朝に1粒、おやつのまぐろやささみをほぐしたものに混ぜて与えているので、さんきちはなんの違和感もなくガッつきます。厳しい外での生存競争を長年経験し、食い意地張るのは当然のことなのかもしれませんなぁ。ちなみにさんきちの骨の状態から獣医師も、年齢は17歳ぐらいが妥当という見立てのようです。

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でも猫は見栄を張る生き物。

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「まだまだやれんぞー!」

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ぴょーん!

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どう?見てくれた?




まとめ


健康診断の結果から早めに腎臓フードに切り替えたこと、食事管理(体重管理)に気を付けたこと、そして、家人が留守の間はいつも気の合う相棒(ポポ)がいることが、さんきちのご長寿の秘訣なのだろう。また、猫エイズキャリア(FIV)のさんきちはそれが多少なり影響すると考えられる「歯周病」で13歳の時に歯をすべて抜くことに。高齢猫で全身麻酔の手術は当然リスクもありましたが、さんきちの体力が勝り、さんきちのQOL(クオリティーオブライフ)、いわゆる猫生の質を考えた本郷さんの思いは届くのです。抜歯により歯周病から起因する内臓の病気のリスクが取り除かれたことも、その後の猫生に大きく寄与しているはず。しかし今思えば、地域猫として10年暮らし、猫同士のケンカで大怪我をしながら1ヶ月も過ごしたその「生命力」も忘れてはいけません。本郷さんとの偶然の出会いがなければ今頃どうしていたのかと思うと......。
本郷さん、さんきちさん、二人出会ってくれてありがとうございます。

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そして、(隠れてしまった)相棒のポポによろしくお伝えください。
「悪い人じゃなかったよ」と。




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猫又トリップライター紹介

ケニア・ドイ

1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。

http://kenyadoi.com

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カテゴリ: 猫又トリップ
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みにゃさまのコメント

さんちゃん、見つけてもらって良かった★
ホント!ご長寿猫たちは、みんな、お顔が穏やかで可愛いですねー。

by あけ 2019-07-24 13:22

本郷さんの行動力、頭が下がります。
できそうでなかなかできない。
そして、保護された子達は皆、お家の子になると入ると顔が変わりますね。

by 総総 2019-07-24 16:52

抱っこの刑、うちでも行われます。「○○ちゃんはなんでそんなにかわいいのかな~? なんでか答えられないなら、私と抱っこだよ~」って言って、むぎゅぅ、となります(笑)。いひひ。

by りえぴょん 2019-07-25 19:43

怪我をしてぐったりとした猫が目の前にいたら…すぐ動けるかどうか、正直わかりません。本郷さん、すごいと思います。保護した後の情報収集も。さんきちくん、助けを待っていたのですね。

棚から飛び降りた後の、どや顔が可愛いです(^o^)

by さび茶風 2019-07-27 09:29