はなびちゃんは、推定3~4歳。
金色の瞳の持ち主で、「マロン、グレー、白」の柔らかい配色の三毛さんです。
はなびちゃんが暮らしているのは、利根川に近い町。おばあちゃん、おじいちゃん、お父さん、お母さん、お姉ちゃん、お兄ちゃんの3世帯家族といっしょに、大きな母屋に住んでいます。
お客さんも大好きで、ごろんごろん。
「はなびは、利根川の河川敷にいたんです」と、お母さん。
えっ、河川敷出身で名前が「はなび」ときたら、花火大会の時にでも拾われたのでしょうか。そう思ってしまいましたが、聞けば、「華日」と書いてはなびと読むとのこと。その名前には、保護した母娘の思いがこもっていました。
2年前の10月。気分の落ち込む日が続いていた娘さんを誘い、お母さんは利根川土手まで散歩に出かけました。
家から1キロちょっと。堤防に上がると、河川敷に痩せた若い三毛猫がいて、二人をめがけて鳴きながら土手をかけ上ってきました。
何とも人懐こいので、最初は、この辺りの家猫が土手に遊びに来ているだけかなと思ったそうです。
しばらく遊んであげて、じゃあねと言うと、猫は「行かないで、行かないで!」とばかりに必死で足にまといつきました。
ウォーキングで通りかかった女性が「この子、3カ月くらい前からここにいるんですよ」と言います。どうやら捨てられて、暑い夏をここで過ごしてきたようです。
ご飯をあげようとした近所の方もいたそうですが、猫は近寄ろうとしなかったそうです。
バッタやカエルでも食べていたのか、川の水で喉の渇きをいやしていたのか。誰にでもなつく猫というわけでもなく、定期的にご飯をもらっていた様子はありませんでした。
そのうち、近所の方が何人か集まってきて、口々に言います。
「猫に選ばれちゃったね」
「連れて帰るしかないね」
大家族ゆえ、おじいちゃんおばあちゃんが「うん」と言わなければ、猫は飼えません。家に連絡を入れたところ、返事はあっさり「いいよ」
帰り道1キロちょっとを、猫は喜んでついてきたそうです。
そうして、河川敷で暮らしていた三毛は、大家族のうちの子になりました。
「外でさんざんつらい思いをしただろうから、これからの日々は楽しく幸せな日々でありますように」との思いから「華やかな日々」という意味の「はなび」という名をつけたのは娘さんです。
自らこの家を選んだだけあって、すぐさま一家に溶け込んで、体型もふっくらし、毎日を生き生きと過ごしているはなびちゃん。
はなびちゃんが来てから、三毛猫グッズがどんどん増えていき、玄関にズラリ。
好物は、カツオ節。
違うご飯をもらったときは知らんふりのはなびちゃんを、おばあちゃんは「コラ」と叱ります。この家ではなびちゃんを叱るのはおばあちゃんだけですが、その愛情をはなびちゃんはしっかりわかっているのです。
「家ん中に閉じ込められて退屈だろうから、部屋の戸は全部開け放して走り回れるようにしといてやるの。馬みたいに走ってるよ」と、笑うおばあちゃん。
この日は親族のりんちゃんが遊びに来ていて、美味しいおやつをもらいました。
はなびちゃんのいるところ、しあわせな光に満ちています。
おじいちゃんは食後に座敷でちょっと横になるのが習慣ですが、はなびちゃんもすかさずそばで転がって「遊んで」と甘えるそうです。
「この子は、なつこくて賢くて、障子やふすまで爪を研ぐこともなく、なんにも手がかかりません。何よりうれしいのは、この子が来てから、長女が元気になってくれたこと」と、お母さん。
そうそう、大事なはなびちゃん、完全室内飼いを徹底されていますが、こんな事件も!
あるとき、2階の窓をお兄ちゃんが閉め忘れ、そこからはなびちゃんが屋根に下りてしまいました。下りたものの、急傾斜の屋根に怖さで足がすくみ、「わお~~ん! わお~~ん!」と叫ぶはなびちゃん。その声を聞きつけるや、おばあちゃんは靴下を脱ぎ捨て、片手はテラスの淵をしっかりつかんで、片手を思いきり伸ばし、はなびちゃんをガシッとつかみました。
「もう無我夢中。落ちたら私死んじゃうかなと思ったけどね。とにかくはなびを助けなきゃ、と手を離さなかったの」
はなびちゃん、おとなしく救出されました! おばあちゃん、あっぱれ!
そのあと、お兄ちゃんがおばあちゃんにこっぴどく叱られたのは言うまでもありません。
このおうちの福猫として末永く可愛がられること。家族を元気にすること。それがはなびちゃんの何よりの恩返しに違いありません。
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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はなびちゃん、アイシャドーが綺麗で表情も豊か、まるで歌舞伎役者のよう。1キロもついて歩くなんて普通のネコでは考えられない。お母さんとお嬢さんとにテレパシーで結ばれたのだろう。はなびちゃんを入れて4世代家族、ますます賑やかで明るい毎日でありますように。
by Y,M 2026-10-13 17:40