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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫又トリップ

2018年09月19日

猫のための本屋で暮らす幻の猫店長のお話

祝!連載100回!2015年1月にスタートした小生の「猫又トリップ」が大台を突破しましたのも、ひとえにみにゃさまのご支援、ご協力のおかげと厚く御礼を申し上げます。また近いうちにこれまでの取材記事を振り返り、まとめたいと思います。しかし、100回はまだまだ通過点、まだ見ぬ猫又候補を探すべく私の旅はこれからも続きます。
今後とも変わらぬご贔屓(ひいき)のほどよろしくお願い申し上げます。
全ての猫又さんに感謝!

さて、記念すべき100回目に登場のご長寿猫は、猫がいる本屋さん「Cat's Meow Books 」(キャッツミャウブックス)の幻の看板猫「三郎」さん。なぜ「幻」なのかは追々お話するとして、こちらのお店もちょうど1周年を迎えられたそうで、100回記念と合わせてにゃんともおめでたいことに!
それでは三郎さん、本日はよろしくお願いいたします!

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キジトラの三郎

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16歳5ヶ月の男の子

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ちょっぴりビビリ、慎重な性格なのです




一郎、二郎を忘れない


今回ご紹介する猫さんの名前が「三郎」と聞いて、「もしかして、一郎と二郎がいた?」という私の問いに飼い主の安村正也さんは顔を曇らせました。「じつは......」の後に続く話は、安村さんが本屋さんを始めたきっかけに繋がる思いがけない内容だったのです。これまでの後悔とこれから猫助けしたいという思いから生まれた猫の本屋さん。そこは必ず猫が登場する本だけが並ぶ素敵な空間。まさか何気なく聞いた猫の名前の話から、このお店が誕生するに至った壮大なスケールの話にまで発展しようとは!

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幻の猫店長。1Fへ降り立つ

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ギュっ、奥様の真澄さんと

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お外見る?


今から16年前、安村夫妻はペット飼育不可のマンションの1階に住んでいました。道から奥まった場所に住人の共有スペースがあり、そこは野良猫にとって静かで最適な安全地帯になっていました。猫たちは出産シーズンが来ると必ずここを訪れ、子猫を産み、成長すると一緒に巣立っていくという光景をこれまで何度も目にしてきた安村夫妻。ある時、母猫が戻ってこないという予想外の事態に遭遇したのです。

育児放棄された3匹の乳飲み子たちは、一匹、また一匹......と、安村夫妻の決断を待たずして、あっという間に2匹が息を引き取っていきました。そして覚悟を決めて最後の1匹を保護した安村さん。それが「三郎」という名前の由来。
亡くなったきょうだい猫、一郎と二郎のことを忘れないためにと――。

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ご主人の安村さんと



猫生活の始まり


全く予期せぬ猫生活だったので、安村さん夫妻はペット飼育可の住居を探し出し、慌ただしく引越しをすることになりました。大変でしたが、生活はより楽しく華やかになったそうです。
実は、過去に実家で暮らしていた愛猫を看取れなかったという悲しい出来事を経験した安村さん。猫を保護し、命に対する責任を負うことを決断したのは、そのことに対するせめてもの償いだと感じたからなのかもしれません。

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そうだったの?



猫の本屋が生まれるまで


小学2年生だった安村少年は、ある日の学校帰りにガキ大将からこんな無理難題を押し付けられました。
「お前、この野良猫を連れて帰れ!」
そんな事情を知らないご両親でしたが、突然やってきたその猫を優しく受け入れ家族の一員にしてくれたのです。名前は「エバ」。三毛猫エバとの暮らしはとても新鮮でそれは楽しいものでした。しかし、実家を離れ大学生活を送る安村青年の元に突然エバの訃報が届きます。それはとても辛い経験でした。大切な猫を看取れなかったという後悔の念に加え、この先いつか動物を飼った時に自分が死に目に合うことに果たして耐えられるのだろうか?という複雑な思いが入り混じり、それ以降は積極的に動物と暮らすことを避けていた節もありました。しかし、目の前にいまにも消えそうな命があったとなれば考えている暇もないというのが正直なところ。動物と暮らす予定のなかった人が、突然の出会いから暮らすようになったという経緯は決して珍しくありません。人間の心のずっと奥には慈善があり、人生経験によって責任感も増すものだと思います。そして、安村さんの「猫を救いたい!」という思いは歳を重ねる毎に盛り上がり、「猫と本屋が助け合う」をコンセプトにしたカフェも併設。ビールも飲める!猫の本屋さん「Cat's Meow Books」の誕生(2017年8月8日オープン)へと繋がるのです。
お店を始めるにあたり保護猫カフェのネコリパブリック中野店より4匹の猫を譲り受け、猫による自由過ぎる店員を配備。また本の売上の一部を動物保護団体へ寄付するなど、安村夫妻の猫を救いたいという気持ちはこんなカタチで発展していきました。取材をしていて思うのですが、猫と出会った人生っていつも不思議で面白いものですね。

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オープンして間もなくやって来た元保護猫店員たちの紹介
格子戸からのぞくのはかまってちゃんの読太(よんた・2歳)

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格子戸の上にはツンデレのチョボ六(3歳)

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格子戸を開けて奥に進むとテーブル席が。主に古本コーナー

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お姫様タイプの鈴(すず・2歳)

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写真右下、天然少女の黒猫さつき(3歳)が。4匹全員女の子!




三郎の成長記


三郎を保護したのは、まだ生後1週間も経たない頃。さすがにそんな乳飲み子の世話は経験のない安村さんでしたが、動物病院とインターネットの助けを借り、ミルクから三郎を見事に育て上げました。
しかし2ヶ月後に三郎の口から突然の出血!最初の危機が訪れました。その時、奥様の真澄さんは「死ぬんじゃないか」と思ったほどびっくりしたそうです。一体どのような症状だったのでしょうか?慌てる安村夫妻に獣医はこう話しました。「歯が生え始めて自分で自分の口を切ったようだ」と。出血という事態に驚きましたが、幸い命に別状はありませんでした。
何も知らないご夫婦だからこそ、何かちょっとしたことでも焦って動物病院へ連れて行くというのも三郎にとって良かったのかもしれません。それに母猫は外で暮らしていた猫です。三郎自身もどんな病気を持っているのかわかりませんでした。実際、安村さんは育て始めた頃は、心配な気持ちと同時に「2〜3年生きれば十分かなぁ」という考えを持っていたのですが、10歳を越えたあたりから「これは20歳まで生きるのでは?」と、ようやく楽観的な気持ちで見守ることができるようになったのでした。

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首を傾げて可愛さアピール

しかし、そんな穏やかな気持ちも束の間、安定した幸せに暗雲が立ち込めるような出来事が起こります。三郎が14歳の頃のことです。いつものように三郎を抱っこしていると肛門辺りの異変を発見!びっくりしてすぐに動物病院へ駆け込むと、なんと肛門腺破裂を引き起こしていたのです。原因は、どうやら歯周病により毒素が体内に回ってしまったことにあるようでした。しかもこの時に行った血液検査で、全く予期していなかった腎臓機能の低下、腎不全の症状も見られました。ここから三郎の体調が著しく低下したようで体重も1年で1kg減。(現在の体重3kg弱)それから嘔吐を繰り返し入院することもあったと言います。



食事と健康管理について


食事は腎臓フードが口に合わないようで「i/d消化ケア」(ヒルズ)に切り替え現在に至ります。病院に通うのも三郎の負担になるということで自宅での補液(50ml)を朝晩2回、そんな生活も気がつけば1年以上が経過していました。最近は点滴で暴れることもなく、されると調子が良くなることを実感しているようでおとなしくされるがままだそうです。

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こちらの様子が気になる読太。

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絡みたくない三郎

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ささーっと

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2階へ逃げるにゃー。




安村家での三郎の暮らし


2017年より5匹体制になった安村家。三郎と4匹の猫たちを徐々に慣らしていく考えでしたが、いまだ三郎は頑なに拒否!「幻の猫店長」というのもそういった事情があるからなのです。しかし、そんな三郎の姿勢にも安村さんは理解を示します。だって15年間きょうだい猫以外と接したことがないのですから。
現在、三郎は安村さんの寝室のロフトでほかの猫とは完全隔離で過ごしています。仲良くして欲しい反面、無理してストレスを与えてしまっては本末転倒。安村さんは16歳の三郎の暮らしを最優先に考えているのです。 昔はおもちゃを投げると持ってくるほど遊びが大好きな三郎でしたが、歳を重ね、いまはすっかり省エネ生活なのか興味も示しません。関節も少し衰えたようなので、三郎に無理をさせたくないと安村さんはジャンプする必要のないステップを作って、極力負担が掛からない部屋づくりを心掛けました。そのかいあってこの住居に引っ越してから、三郎は日々元気を取り戻しているように感じられるそうです。あとはトイレや食事などで毎日変わったことはないかを観察します。そして、何より大切なのはストレスのないようにすること。たとえ三郎が認知症になって大声で叫び出しても、落ち着いて対応したいなぁと安村さんは優しく答えてくれました。

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取材終わったー?はーい、終わりましたよー。

Cat's Meow BooksのTwitter|@CatsMeowBooks



「猫又トリップ」が書籍になりました。

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ご長寿猫がくれた、しあわせな日々

15歳以上のご長寿猫と、その家族が奏でる28の物語をお届けします。

試し読みはこちら (ΦωΦ)


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猫又トリップライター紹介

ケニア・ドイ

1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。

http://kenyadoi.com

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カテゴリ: 猫又トリップ
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みにゃさまのコメント

なんて素敵な本屋さん!
人生のターニングポイントには必ず猫が・・・そんな本屋の成り立ちにも物語を感じます。
世田谷・・・今度上京した時にはいってみたいお店の候補に入れておきます。

by あずにゃん 2018-09-21 14:13

あずにゃんさん
きっと気にいる猫の本が見つかると思います。しかも猫店員を愛でながらw
ビールも飲めますよー

by ケニア・ドイ 2018-09-30 07:34

10月4日の、NHKもふモフで保護ネコ達が紹介されていましたね!三郎さんはざんねんながら、お顔見れませんでしたが…。
素敵な本屋さんですね。

by さび茶風 2018-10-04 23:46