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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2025年02月11日

珈琲豆店の猫たち

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寒い日、ふらりと入った珈琲豆店。
豆を注文して待っている間、ふと店内の棚を見ると、ふくよかな猫さんが寝ていました。
「あら、猫!」
思わず小さな声をあげてしまったら、それを聞き逃さず、猫さんは棚から出てきて伸びをしながら「いらっしゃい」をしてくれました。

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「ごめんなさい、起こしてしまいました」
そう言うと、女店主は、笑って言いました。
「いいんですよ、この子はお客さんが大好きだから。ママちゃんっていうの。猫はね、あと3匹います。この辺りはちょっと前までは農地だらけで、開拓で家を売ってよそに引っ越した人たちが置いてった猫たちなんです」
ここは、印旛沼に近い印西市の草深(そうふけ)という珍しい地名の地域。
文字通り、昔は「草深い原っぱ」だった土地ですが、戦時中は飛行場ともなり、40年ほど前に着工した千葉ニュータウン鉄道が通ってからは開発著しい町となっています。整備された賑やかな駅前から離れると、伝説民話や史跡が眠る牧歌的な原風景がたくさん残っていて、行くたびに面白い風景に出会い、私はしょっちゅう出かけていきます。
この日も、冬の印旛沼を見に来た帰りに通りかかった道でした。

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この看板が目に飛び込んできたのです!
ニワトリと猫と珈琲豆!

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奥に、暖かな感じのログハウスのお店がありました。

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店内には、「インド・モンスーン」とか「ブラジル・ハチドリ」とか飲んだことのない珈琲豆がいろいろ揃っていました。
棚から出てきてあいさつしたハチワレ白黒のママちゃんは、通りを挟んだ養鶏場の敷地内に住み着いていた猫でしたが、自分の子ではない、白黒の若い猫を連れてここにやってきました。その「すみれ」ちゃんは、ちょっと人見知りで、夕方にならないとお店に出てきません。

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美人さんのすみれちゃん。

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人見知りだけれど、甘えん坊で、目の前を行ったり来たり。時間が経てば寄ってきてくれるそう。
同じく白黒の「オブ」くんは、開拓で潰された森のほうからやってきた子です。

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武将のような堂々とした風貌ですが、まだ弱冠5歳。

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店裏の物置でくつろいでいることもあります。

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のこる1匹も、人見知りさん。
チャー君、3歳です。

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店の裏手には原っぱが広がっているので、チャーくんとオブくんは、天気のいい日はよく連れ立って探検とひなたぼっこに出かけていきます。

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お店で面倒を見ている4匹とは別に、ご自宅でも2匹の保護猫がいるというパムの女主人。(おなじみさんたちには「パムのおばちゃん」で親しまれているので、ご本人の希望もあり、以下、パムのおばちゃんと呼ばせていただきます)
自宅組は、ハサミによる虐待に遇っていたキキちゃんと、ガリガリで店にたどり着いたさくらちゃんです。
沖縄ご出身というパムのおばちゃんは、どうしてこの地で珈琲豆店を開いたのでしょう。
上京して就職。開発途上の印西市に住み始めたとき、あたりに喫茶店は一つもなく、子どもの頃からコーヒー好きだったおばちゃんは「つまらない町にきてしまった」と思ったそうです。やがて新しい駅「印西牧の原」ができて一念発起。退職して、駅前ビルに「パム」という名の喫茶店を開いたのは2001年の1月。職人気質の焙煎士「パムのおじちゃん」との2人3脚で、美味しい珈琲が飲める店としてにぎわいます。
10年経って、家主の第3セクターの都合で、突然の立ち退き通達が。
前の店から少し離れたこの場所に、手づくりのログハウスを建て、今度は珈琲豆焙煎店としてリスタート。(農地のため、珈琲を提供することはできません)

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一緒にがんばったパムのおじちゃんも、おじちゃんと一緒に車で通勤してきていた看板犬のカールも病で旅立った今、おばちゃんは一人でお店をがんばっています。
ケガをして16日間入院しなければならなかったとき、おなじみ客たちが猫たちの面倒を見てくれました。
珈琲豆店を立ち上げた頃、HPの「パムのおばちゃんの紹介」で、おばちゃんはこんなことを書きました。
「楽しむことを忘れず、80歳まで現役でいられるよう、続けていきたい」
珈琲修業は今年で25年目。80歳まで、まだまだ。そして80歳になったら、次は85歳をめざしてください!
いのちを救ってもらった4日の店猫たちは、四天王のようにおばちゃんのそばで「珈琲人生」を見守っていくことでしょう。

※「我が家のコーヒー屋さん」パム
 千葉県印西市草深2385-4 木曜定休



「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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猫は奇跡
"ふつうの猫"たちが起こした奇跡の実話17選

P9210072-2.jpg
猫との約束
猫は人生にドラマを運んでくる。ささやかでも、至福のドラマを

yorisoiatte.jpg
寄りそう猫
しあわせは猫の隣り。心温まる17の実話。

nekodatte200-290.jpg
猫だって......。
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

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里山の子、さっちゃん
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

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しあわせになった猫 しあわせをくれた猫
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!

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いつもそばにいる猫
描き下ろし猫スタンプが登場。猫たちがあなたのトークルームに寄り添います!

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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

パムのおばちゃん、頑張れ!! 心から応援したくなります。
お散歩する2匹の後姿 とてもいい写真ですね。安心して、過ごしているのですね。
ご自宅の猫さんにも会ってみたいですね。
優しい、パムのおばちゃん お元気で。

by ちぃ 2025-02-11 12:14

白黒に茶色のネコは、皆の色を混ぜたらコーヒー色になる。正にコーヒー豆屋さんにぴったり。ふくよかな姿形を見ると、ネコ達にもうれしい環境なのだろう。自分の思い通りに生きてゆくことは本当に難しいが、それをやり遂げているパムのおばちゃんは素晴らしい。

by Y.M 2025-02-11 16:12

白黒猫さんがいっぱいで楽しそうなお店ですね。(茶トラのチャーくんも可愛い)
パムのおばちゃん、喫茶店の閉店、パムのおじちゃんと愛犬の見送り、大変だったと思います。
看板猫さんと一緒のスロー珈琲ライフ、これからも末永く!

by ヤンヤン 2025-02-13 04:53

>ちぃさん

2匹の後ろ姿、お揃いに尻尾をピンと立てて、私もとっても好きな一枚です。
みんな仲良しで、うれしくなりました!

by 道ばた猫 2025-02-14 13:32

>Y・Mさん

白黒に茶色を混ぜたら、コーヒー色! なんとおっしゃる通り。
パムのおばちゃんに、わたしも元気をもらいました!

by 道ばた猫 2025-02-14 13:34

>ヤンヤンさん

珈琲豆もとってもおいしいので、猫に会いがてら通うことになりそうです~。
ちょっと遠めで、程よい遠足(笑)。

by 道ばた猫 2025-02-19 13:52