幸(こう)君は、ロシアンブルーの男の子。8か月になります。
このおうちに、妹の福ちゃんとともにもらわれてきて、半年。
きょうだい合わせて「幸福」という名の通り、お父さんとお母さんに愛され、平和そのものの毎日を送っています。

だけど、今夜は、いつもと様子が違います。
お客さん、というか、闖入者がいっぱい!

妹の福ちゃんも、キャットタワーの上から、警戒モード。
青い首輪がお兄ちゃんの幸くんで、赤い首輪が妹の福ちゃんです。首輪をしていなければ、見分けのつかないそっくり兄妹。

今宵、やってきたのは、田畑さん一家。
田畑家のお父さんと、このおうちのお父さんは、以前同じ職場だった美容師さん同士。
田畑さん一家は、幸くん福ちゃん兄妹とそっくりのロシアンブルーの子猫を連れてやってきました。
おまけに、2匹が初めて見る「犬」という生き物も!
田畑さんが連れてきたロシアンブルーは、「ルナちゃん」という名で、鈴付きの首輪をしていて、自分にそっくりの2匹を見て「シャアッ」と、かわいい威嚇をあいさつ代わりに。

「驚いた! ルナがシャアッなんていうの、初めてみた!」と、田畑さん一家。
それもそのはず。ロシアンブルーは、「サイレント・キャット」「ボイスレス・キャット」の別名もあるほど、静かな猫なのです。
それでも警戒心は強いので、思わず「シャアッ」と言ってしまったようです。

最初のうちこそ、ルナちゃんが物陰に隠れちゃったり、ルナちゃんと幸くんがキッチンで鉢合わせして無言の応酬というシーンもありましたが、そのうち、だんだん「あれ? なんだかむかーし会ったことある?」みたいな雰囲気に。
そうなんです!
幸くん、福ちゃん、ルナちゃんは、同じロシアンブルー母さんから生まれた4兄弟のうちの3匹。
半年ぶりの再会なのでした。

幸くんたちのお母さんは、悪質ブリーダーの劣悪な環境から、身重の体で救出された直後、保護主さんのもとで4匹を産みました。
母さん猫は、8歳。寿命が短めのロシアンブルーにとっては、8歳はすでに老いにさしかかる年齢といえます。
その年まで繁殖を繰り返させられてきたため、体はボロボロでした。
そのブリーダーで飼育されていた猫たちは、病気になっても医者に連れて行ってもらえませんでした。病気の猫や、病気でなくても「形が悪くて」売り物にならない猫たちは、餌もストップされ、放置のまま死を待つだけでした。
もし、母猫がそのブリーダーから救出されなかったら、幸くんたちは、この世にもういなかったでしょう。(現在、保護主はブリーダーを告発中)
母猫は、4匹に初乳をやっと与えただけで、あとは我が子を育てる体力がありませんでした。
そのため、生まれた翌日から、都内のミルクボランティア墨田さんが4匹を預かり、ミルクを飲ませて育てました。
1匹は、生まれて3日で、天国へ。
残った3匹も、やってきてひと月め、次々と高アンモニア血症を起こし、意識混濁となって生死のふちをさまよいました。
幸い先天性の疾患ではなく、必死の手当てで命をとりとめました。
そんな修羅場を潜り抜けた3匹。
いま、2匹と1匹、それぞれに素敵な家族に愛を注がれて暮らしています。
田畑さんが、墨田さんの担当美容師さんだったという素敵なご縁がつないだ猫の縁でした。

田畑家では、7年前、上のお嬢さんが中2の反抗期にさしかかり、犬を飼うことで「家族に平和を」と願い、迎えた犬に「ピース」と名付けたそうです。
下のお嬢さんも同じ年齢になったので、今度は猫を飼ってやろうかなと思っていたところ、墨田さんにタイミングよく「こんな猫がいる」と勧められたのでした。
写真を見せられた田畑さんは、すらっとした肢体を大いに気に入ったのですが、「僕以外のみんなは、別にどんな猫でもよかったみたい」と、笑います。
迎えたルナちゃんは、犬のピースくんとも、すぐに遊び友達になりました。
「田舎の母が猫が大嫌いで、猫なんて飼ったらもう東京には行かない、なんて言うもんで、それまで猫は飼えなかったんです。ところが、上京してきたとき、初めてルナに対面した母は、ルナを猫とは思わなかったみたいなんです。今では、大の猫好きに(笑)。

田畑さんの紹介で仔猫をもらうことになった幸くんたちのお父さんお母さんも、最初は1匹の予定だったそうです。
が、会ってみれば、「1匹も2匹も同じこと」と兄妹で引き受けてくださいました。

「兄妹でもらって、ほんとうによかったですね。二人で遊んで留守番して全く手がかからないし、、寝るときもくっついて、すごくかわいいです」と、揃って目を細めます。

幸くん、福ちゃん、ルナちゃんが手にした、今のしあわせは、
そんな境遇に置かれた猫がいることを知って身を賭して救ってくれた人、寝る間もなく母猫代わりに育ててくれた人、家族に迎えてくれた人・・・どれ一つ欠けても、ありませんでした。

力を振り絞って生んでくれたお母さん猫は、今は、保護主さんのもとで、穏やかに養生の日々を送っているそうです。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

『
猫だって......。』
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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劣悪非道な繁殖屋が存在するのは、血統と容姿のみを追求する買い手がいるから。
命を金で買い、アクセサリーにしか思わない人間に、手に入れた命の見えない闇を見て欲しい。
そして、懸命に保護活動されてる人々の思いを知って欲しい。
こうして書くことで発信されている佐竹さんに感謝しつつ、私は、どうやって伝える?と日々模索しています。
by さくら 2019-02-26 16:34
悪質ブリーダーは、本当に最低ですね。命を商品としか見ていないから、どんなにひどい扱いも平気で行います。子犬や子猫を、宅急便でペット・ショップ・ショップヘ送る者もいるそうで、小さい箱に何匹も押し込めて、到着した時には当然死んでしまっている子もいても、平気な顔で、気にもしていないそうです。こんなひどいブリーダーが居なくなることを、願わずにいられません。
by ふみちゃん 2019-02-26 17:05
幸福(^_^;)
二匹同時飼いだとこの手があったか!
ルナちゃん、めっちゃ怒りまくり(^_^;)
「シャアッ」
は
「謀ったなシャアッ」
くらいのレベルなのか(^_^;)
しっかし粗悪なブリーダーって
なんの為に存在してるんだ?
金か?
金ならもっとほかで稼げよ。
己の汗水垂らして働く
これが一番だに!
ドラキーも生活保護のおじいさん
から、もうこれ以上はムリ!
との要請で保護団体に引き取られたんだよ。
三兄弟
海老蔵
楓
愛之助
その楓が正式名「みこ」
俗称ドラキー
として我が家にいるのだが
ドラキーはもう
海老蔵と愛之助のことは
忘れちゃってるのかなあ。。。
しっかし
未だに!
ポンポコの
ロシアンブルー
と
ブリティッシュショートヘア
の区別がつかないぞ(^_^;)
by ドラ猫マスター 2019-02-26 17:14
命のバトンタッチ、命のリレー、バトンを渡せる相手との信頼関係があったからこそ実現した愛情ものがたりですね♪ほっこり温かい気持ちにさせていただきました。
それにしても悪徳ブリーダーが蔓延る生体販売に辟易します。悲しい…
by マム 2019-02-26 19:58
気持ち温まる命のリレー、本当に素敵なご縁に巡り会えましたね。
母猫さんには余生をゆったり過ごして欲しいですね〜
悪質ブリーダーには怒り心頭ですが、命をお金で買う人間がいなくならない限り、
ブリーダーの存在は続くのでしょうね。
しかし、この悪循環の時代は少しず変化を感じます、
近い将来ブリーダーが廃業に追いやられる日が来るでしょう。
今年も動物愛護法改定の署名運動があちこちで受付始めました。
安全で安心できる環境の中で小さな命と共に生きたいものです。
小さな命を守れるのは人間です。
素敵なお話でほっこりしました、ありがと〜❤️
by イクラ 2019-02-26 22:49
私はペットショップで初めての猫を「買い」ました。けれど、日中は家に誰もいなくなりますので、譲渡会などでは譲ってもらえないのだろうな、とネットの情報をみて「買い」ました。
次に迎える猫は保護猫をと考えています。それでも、日中は家に誰もいないから、譲ってもらえないかもしれない、と考えています。
悪質ブリーダー、虐待するために保護猫を譲り受ける。そんな人達が取り締まわれて、いなくなればいいのに。そうすれば、本当に迎えたい人と、猫が出会えて幸せになれるのに、と思います。
愚かな人間で、ごめんなさい、と賢く強い猫と佐竹さんの記事を読むたび、うちの子は本当に幸せなのかな?と思う次第です。
by 友子 2019-02-27 01:37
>さくらさん
いのちに「ブランド」とか「高価」とか「不用」とか言った言葉がふさわしくない、という当たり前のことが、浸透していきますように。
by 道ばた猫 2019-02-27 03:28
>ふみちゃんさん
今回は、元スタッフの方の告発だそうです。
外部からの摘発、内部からの告発、繁殖業の闇をどんどん表に出してほしいものです。
by 道ばた猫 2019-02-27 03:32
>どら猫マスターさん
おお、ドラキーのこれまでが、いよいよあきらかに。
「幸・福」・・・いいですよね。「あん・ぽん・たん」という漁港3兄弟もいたなあ…(笑)。
by 道ばた猫 2019-02-27 03:39
>マムさん
法整備が緩すぎて、繁殖無法の闇が深いですよね、日本は。
助かった子猫たちが無邪気に愛らしいのが救いです。
by 道ばた猫 2019-02-27 03:44
>イクラさん
そうですね、少しずつ、少しずつ、動いて変わっていきますね。
生まれてきた命はすべて等しく愛らしく、皆幸せになってほしいです。
by 道ばた猫 2019-02-27 03:52
>友子さん
猫を愛する人と猫が寄り添う風景。100あれば、100通りのしあわせの形があると思います。
悪質繁殖業者や虐待者が根絶して、様々な組み合わせで様々なしあわせの形を猫たちが満喫しますように。友子さんちの猫さんも、しあわせですよ!
by 道ばた猫 2019-02-27 03:58
ああ、良かった。お母さんも兄妹みんな幸福いっぱいで暮らしているのですね。今回もまたなんと可愛い猫なんでしょう!!と思いました。こんな可愛い猫のお顔で見られたらもうこちらが幸せいっぱいになりますね♪
by とも 2019-02-27 07:21
おにょれ~
命をオモチャにする痴れ者めが~(`△´)
だーけーどー、いい気になって
目の前の小さな命を雑に扱ってると、
自分も周りから、そーゆー扱いを
受けるってコト、わかっていると
イイにゃからねッ
にゃのに、あれまァ
自らゴミ箱になっちゃってェ。。。
知~らにゃいっと(・∀・)
by にあ 2019-02-27 17:26
身内の話で恐縮ですが…
私の叔母の娘(私の従姉妹)家族が、ペットショップから猫を迎えたとき、叔母は「信じられない!その辺にたくさん猫がいるのに、お金を出して買うなんて…」と怒りました。
血統書付きの動物に魅力を感じる人の気持ちはわかりませんが、家族にすると決めて迎えたのなら、最期まで可愛がってほしいです。捨てるとか、保健所に持っていくなんて問題外です!
ちなみに叔母の家には、中に4匹、外に4匹、すべて手術済みの猫がいます。近所で猫屋敷と言われているでしょうねー。
by さび茶風 2019-02-27 17:46
>ともさん
ロシアンブルーって、なんかネズミっぽいというか、オットセイっぽいというか(笑)、
とってもかわいかったです!
by 道ばた猫 2019-02-28 10:50
>にあさん
可愛い啖呵をありがとうございます。
猫たちがいっせいに「おーにょ~れー!」って言ったら、ちょっとはビビるかな。」
by 道ばた猫 2019-02-28 10:55
>さび茶風さん
母子間でも、価値観はなかなか伝わりにくいのですね。
ともあれ、迎えた猫さんは、終生可愛がられますように。そして、お子さんたちが、お金で買われる猫もいれば、おばあちゃんの家の外で暮らす猫もいるという現実に、何か感じて大きくなればいいんなあと思います。
by 道ばた猫 2019-02-28 11:04
ほんとに(*^_^*)ロシアンブルー、ねずみにもオットセイにもみえてきますね♪可愛い可愛い!!猫はどの子もみんな違ってみんな可愛いですけどね~(笑)
先週の雪ちゃん猫切子グラスは毎日アイスティーを飲んでいます♪アイスティーでも夕焼け猫が透けて見えてノスタルジック♪素敵なんです~!
by とも 2019-03-01 18:16
>ともさん
猫切り絵グラスで、アイスティータイム。毎日、ほっとする時間が持ててすてき。
ともさんは、フットワークも軽く、楽しみ上手ですね~
by 道ばた猫 2019-03-03 03:02
はじめまして。
実は我が家も神戸のブリーダーさんとトラブルを抱えており、控訴の準備中です。
もしかして同じブリーダーかもと思い、コメントをさせていただきました。
ロシアンちゃん、幸せなご家庭に恵まれて良かったですね!
by かなん 2019-03-21 15:32
海外の猫は、育成をするのに本当に温度差があるから複雑ですよね。一歩間違えればあの世へ逝ってしまいますよね。因みに、ロシアンブルーという類は、ろうそくの様に8年という寿命だから、痛ましい限りですよね。それなりに、きちんと育てて下さい。不幸な話題ばかりで申し訳ありません。
by 田中チョロ 2019-04-03 20:46
>かなんさん
コメントに気づくのが遅れました。
幸ちゃんたちのブリーダーは、関東と聞いています。各地に似たような悪質繁殖屋がいるということですね。訴訟は大変と思いますが、どうぞ猫たちの未来のためにお力添えください!
by 道ばた猫 2019-05-15 22:55
>田中チョロさん
ノラにも、ロシアンブルーやスコティッシュが増えていると聞きました。
きちんとその種にあった飼い方で、終生どんな猫も愛されますように。
by 道ばた猫 2019-05-15 22:59