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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2018年06月12日

猫だすけ料理店

東京の山すそともいうべきあきる野市。武蔵五日市駅近く、檜原(ひのはら)村に向かう街道沿いに、お寿司と自然食の店「魚治(うおじ)」はあります。
檜原村を歩いた後、ふらりと寄るのですが、いつも野の花がどっさり活けてある気持ちのいい店。。「からだにやさしくておいしいごはん」をモットーに、両親と兄妹の4人で店を切り盛りなさっています。店の内外に猫の手造りオブジェがあるので、「猫好き」バレバレのお店です。

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これは、1年前の写真。通い猫エリーおじいちゃんが店頭にいました。
エリーちゃんが乗っているのは何でしょう。気になりますね。

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エリーちゃんの乗っているのは、大将が山の木で作った楽しい猫オブジェ。遊び心満載です。

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この前行ったとき、エリーちゃんにはもう会えませんでした。かなりのお歳だったそうです。可愛がられてしあわせな一生だったと思います。

さて、この魚治さんのご自宅には、いわくつきの保護猫が2匹。
この上ないビビリさんということで、会うことはかないませんでしたが、七海(ななみ)さんと風生(ふき)さん兄妹から、すてきな写真もお借りできましたので、2匹のストーリーをご紹介したいと思います。

16年前の2002年春のこと。店内にいたお客さんが「子猫の声がする」と言い出しました。
屋根裏かどこかに迷い込んでしまったらしく、そのうち母猫が迎えに来るだろうと、魚治さんではあまり気に留めませんでした。このあたりは、けっこうノラがいて、あちこちでご飯をもらっているのです。
その1週間後。「やっぱり子猫の声がする」とお客さん。
か細い声をたどれば、その声は、どうやらトイレの壁から!!
屋根裏から狭いすき間に落下してしまったのでしょうか。
「助けなきゃ!」というお客さんたちに、大将は肚をくくります。子猫を傷つけないよう気をつけながら、斧やナタで、壁を壊しました。みんなかたずをのんで見守っていたそうです。
風生さんは、その時のことをこう言います。
「出てきたときは、さぞ弱ってぐったりしてると思ったら、意外と元気で、猫用ミルクを買ってきて飲ませた時も飲んだので、ホッとしました」

子猫騒ぎは、その10日くらい後にも。今度は店内板場の天井から、子猫の声がするのです。
天井裏から保護された子は、先に壁から保護された子としばらく一緒に育てられ、「子猫の声がする」と言い出したお客さんにもらわれていきました。
母猫は、その後、屋根伝いに子猫を呼びに来ましたが、それきり姿を見せなくなりました。子離れの時期だったのでしょうか。

魚治さん宅に残ったのが、壁からでてきたキジトラの雌「ぴっぴ」ちゃんです。

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おお、いい貫禄になりましたね。
こうしてぴっぴちゃんが、家族の寵愛をひとり占めしていた9年前の7月7日。またまた、事件が......。

大将が外出するため、駐車場の車を発進させたその瞬間、黒い子猫が車から降って落ちた!
前の日から、どこからともなく子猫の鳴き声が聞こえていて、だんだん声が弱ってくるので、家族みんなで探し回ったものの、見つからないままだったのです。まさか、車のボンネットの中にいたとは。(ボンネット猫は、冬だけとは限らないのです。暑さをよけたのでしょうか)

子猫は血まみれのまま、転がって、店脇のコンクリートブロックの穴の中へ。救い出すと、下半身の肉が丸見え状態で息も絶え絶え。
病院に運びこみ、1か月毎日の通院で、なんとか命が助かり、断脚や骨髄炎にならずに済みましたが、この先手術が必要になるかも、ということでした。

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エリザベスをして、殊勝な顔をしていますが、これがなかなかの「悪ガキ」坊やだったのです。だからこその、生還だったのかもしれません。
「知らないで車を発進させてしまった罪滅ぼしに」と大将は言い、子猫は家猫に。「月餅(げっぺい)」と名づけられました。
3か月後。つぶれた後ろ足先の手術をすることに。

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店内で「黒猫募金」箱を置いたところ、思いのほか、猫好きが多くて、「げっぺいちゃん、早くよくなるといいね」と温かい言葉をたくさんもらったそうです。
手術は成功。つま先を失って左後ろ足が短くなりましたが、退院したその日から、悪ガキ街道まっしぐら。

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ぴっぴちゃんに、「何よ、アンタ」とにらまれても、大好きな姐さんのそばになんとか行きたいげっぺいくん。
ぴっぴちゃんは、げっぺいくんに最初は拒否反応がすさまじかったのですが、それまでなかった「食欲」に、げっぺいちゃんが来てから目覚め、この体格に。
「大嫌い!」が、徐々に「うっとうしい」にかわり、げっぺいくんが病院に行ったあいだは、うろうろ探し回っていたそうな。

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どんどんたくましく大きくなったげっぺいくん。精悍な黒猫さんですね。
「はい、見かけはそうなんですが・・・もうノミの心臓で」と、風生さん。来客の気配だけで、ベッドの下の奥に逃げ込み、ブルブルしているそうです。

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ぴっぴちゃん16歳。げっぺいくん9歳。
今の二人の距離は、こんな感じ。

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相変わらずげっぺいはぴっぴが大好き。ぴっぴはげっぺいがウザい。
でも、同じお部屋で一緒にくつろぎ、おいしいもの食べて、まったり山々を眺めて、「いのち救われたもの同士」のしみじみした連帯感がふたりにはきっとあるではある
はず。

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風生さんは言います。
「不思議な縁でわが家にやってきた2匹。ぴっぴは気が強くて、ちょっと性格が悪くて,、でも可愛くて。げっぺいは、何にでもビクついて怖がりで、でもボヤ~とした抜けたところが可愛くて。どっちも変な個性的な猫ですが、大事な家族。出逢えてよかった。毎日が楽しいです」

風生さんの、もう一つの顔は、縫いぐるみ作家。

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げっぺいくんがモデルの小さな縫いぐるみです。
ちいさいけれど、命の輝きが詰まっているようです。


★・... 魚治(うおじ)・・・東京都あきる野市五日市68
 定休日:月・火・水曜日
★・... 風生さんのHP・・・「fukiの小さな縫いぐるみ

★・... 本日発売の「猫びより」は、創刊100号記念!
執筆・カメラ陣からのプレゼント(応募)がたくさん。私は、手作り写真ミニブック
3冊セットをプレゼント。ぜひご応募ください。
榎木孝明さんのインタビューも担当。お茶目な榎木さん、必見です。



「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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猫だって......。
ふつうの猫たちが語る、22の愛情物語。

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動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『里山の子、さっちゃん』『猫だって……。』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」を連載中。

カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

どちらも凄い経歴の持ち主ですね。そして凄く可愛い。微妙な関係もまたいいですね。この先もずっとこのままなのか、または一緒にくっついて寝るようになるか、どうなるか楽しみですね。

by ふみちゃん 2018-06-12 16:38

>ふみちゃんさん

どっちもすごくかわいいですよね! 猫の 関係や相性って、いったいどうなってるのか、ニンゲンにはよくわからないけど、一番快適な距離を選んでいるのは間違いなさそう(笑)。

by 道ばた猫 2018-06-12 23:27

ぴっぴちゃんもげっぺい君(お菓子の名前みたいでかわいい!)もすごい強運の持ち主ですね。昔、私の知人も近所の空き家の壁の中から子猫の声が聞こえるといって、オーナーの許可をもらって壁をこわして黒猫を助けたことがあったのを思い出しました。助けてもらってラッキーだったので、ラッキーと名ずけて大事に育てられましたよ。

by ぺったんの母 2018-06-13 09:55

アーティスティックな感性をお持ちの御兄妹が撮られたお写真、どれもこれもステキです!大切にされてる感がストレートに伝わってきました。そして、風生さんの小さなぬいぐるみ!!その他にも繊細な作品の数々…愛がギュッと詰まってますネ♪

by マム 2018-06-13 10:37

>ぺったんのお母さま

魚治さんのご主人は、壁を壊したり、車を修理に出したりと、大変だったのに、「罪滅ぼし」とは、本当にいい人です。ラッキーちゃんもよかったですね!

by 道ばた猫 2018-06-13 22:44

>マムさん

はい、とってもいい写真なので、(猫日記ではお借りした写真は多用しないようにしてるのですが)ご紹介することに。それにしても「七海」「風生」の名前からして、ご両親、センスいいなあ・・・。

by 道ばた猫 2018-06-13 22:49