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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2017年01月10日

共生の町・その1・・・「ちよだニャンとなる会」事務局猫

新しい年が人と猫の共生の進む年になりますように。その願いを込めて、1月は、「ちよだニャンとなる会」ゆかりの猫たちをご紹介していきます。

1回目は、会の事務局となっている香取さんのお宅へ。さっそく出迎えてくれたのは、フレンドリーなモモちゃんです。

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モモちゃんの姉妹なのに、ちょっと人見知りなのは、メイちゃん。

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「そのうち他の子も出てくるでしょう」と、香取さん。事務局猫は総勢5匹。いずれもいろいろな事情で保護され、香取家に預かり猫としてやってきて、譲渡しそこなったり、情が移ってしまった「わけあり」猫たちです。
ご存じの通り、千代田区では2011年から、猫の殺処分ゼロを維持していて、「千代田モデル」として、注目を集めています。
ニャンとなる会は、動物愛護団体として発足したのではありません。2000年に区の事業として、地域環境の改善・向上と動物愛護の推進という2つの見地から、「飼い主のいない猫の去勢・不妊手術費助成制度」が始まったときに、区民ボランティアの募集に参加した人たちの連絡会として、2001年に作られました。現在は、一般社団法人として区との協働がより円滑にいくよう、さまざまな発信も行っています。

さて、事務所に今いる5匹のうち、最初にやってきたのは耳カットも済ませた地域猫だったあんずちゃん。2011年2月のこと。まだ4か月くらいの男の子でした。界隈の猫たちに餌をやっていたおじいさんにとって、シャム系顔のあんずちゃんは可愛げがなかったらしく、「あっち行け」と、プチ虐待状態だったため、保護されました。
その後、東日本大震災が起き、里子に出しそびれ、香取家の猫に。
いまだに、頭の上に人の手が伸びると怖がるので、食事は机の下というあんずちゃんです。

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あんずちゃんのすぐ後にやってきたのが、当時1~2歳の男の子ユニちゃん。内堀通りで車に轢かれ、足をズルズルひきずっていて、周囲の大きなビルを管理している人たちが千代田保健所にSOS.ユニちゃん、猫小屋も作ってもらい、いろんな人にご飯をもらっていたのに、人に触らせない猫だったのです。
保健所に入った猫の情報は、休日でも夜間でもすぐさまニャンとなる会と共有されます。ユニちゃんは2日がかりで、保健所職員とニャンとなる会のメンバーとで、無事保護しました。が、大腿骨骨折と骨盤損傷という大けが。緊急手術の後、香取家へ。人馴れしてなく、後遺症で排泄に問題ありだったので、香取家の猫となりました。いまだに触らせない、人前に出てこないというつわものですが、ソファーでのびのびしているさまはとても幸せそうに見えると、香取さんは言います。

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翌年、神保町のビルの管理人から、ぐったりしている子猫2匹がいると、保健所に通報が。生き残った方がくるみちゃん(♂)。猫風邪(猫ウィルス性鼻器炎)から肺炎を併発。日に10回も点眼しなければならなかったので、自宅兼仕事場の自由業(ジャーナリスト)の香取さん預かりとなり、そのまま香取家に。

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2015年5月にやってきたのは、モモとメイの姉妹。大規模解体工事現場の仮設トイレの下で、泥まみれになっている生まれたての仔猫5匹がいるという通報が。1匹はもう冷たく、運びこんだ病院で4匹は命を助けてもらい、2匹は香取さんが人工哺乳で育て、そのまま香取家に。

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このように香取家にやってきて事務所猫となった5匹の保護例はほんの一例。目の行き届いている千代田区でさえ、じつにさまざまな事情の中で、危険と隣り合わせに町の猫たちは生きぬいていることを実感させられます。
お話を伺っている最中(正月4日)も、ひっきりなしに、猫関係の保護相談が入ってくる事務局です。
「東京駅の駅舎に白い仔猫がいる。保護を急がなきゃ」
「保健所にすぐ電話いれます」
「ビル取り壊し現場に残る1匹は今どうしてる?」
などなど。電話口から漏れ聞こえる声がみなきびきびと明るく、抜群のチームワークとやる気が伝わってきます。

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会は、1年365日フル対応システム。メンバーには、さまざまな職業の人がいますが、急を要する保護の時など、「今から半休とります!」と名乗りを上げる会社員もいて、心強いとのこと。
「飼い主のいない猫はなぜそこにいるのか、どうしたらいい?という問題は、一部のボランティアだけでなく、それぞれの自治体を挙げて、みんなで解決していく問題。殺処分ゼロを維持するのは、それはそれはたいへんだけれど、TNR、社会化させてからの保護譲渡、傷病猫の保護のスキルを磨いてコツコツとやることで、進んでくることができました。千代田に根づくこの「共生」の文化を全国に広げていきたい」と、笑顔の香取さん。

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千代田区では大規模再開発が進み、猫の居場所は狭められていて、車にはねられる猫も多いので、子猫は即保護の対象となるのですが、「連れて行かないで。ここでみんなで可愛がっているのだから」という住民のかたたちを説得するのが、昔からのこの土地柄ならではの悩ましい、最近の課題だとか。

自分の町の猫たちは、町をあげて自分たちみんなで守る。日本津々浦々がそうなっていきますように。


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

佐竹さん。
明けましておめでとうございます。今年も素敵な猫ちゃんのお話しを宜しくお願い致します。

by 山猫 2017-01-10 14:55

マリコさん、おめでとうございます。本年もよろしくお願いします。北国では、姿がみえなくても雪の上に残った足跡でニャンコが通ったことがわかります。ノラなのか飼い猫なのか・・・吹雪のあとだと胸が痛みます。地域の人たちみんなで、不幸なニャンコをなくしていけたらと、いつも思っています。

by ぺったんの母 2017-01-10 16:47

明けましておめでとうございます✨今年も可愛い猫さんの紹介を楽しみにしています。千代田区の殺処分ゼロは素晴らしいですね。そして猫に優しい人がたくさんいて、羨ましいです。恥ずかしながら私の住む地域では、猫はネズミ取りの道具としか思ってない人、(主に老人)がまだ生息しています。猫は生まれたら捨てればいいなどと、本気で考えていて、避妊手術という言葉は知らないようです。この原始人のような人間をどうにかしないといけません。しかし、彼等は現代人の言葉が通じないので本当に困ります。千代田区の人達のような人が少しでも増えて欲しいです。私も微力ながら、猫の為に行動していきたいです。

by ふみちゃん 2017-01-10 18:40

いつも楽しみにしています。今年もよろしくお願いいたします。
千代田区のような取り組みが広がっていくといいなと思いますが地域性もあり簡単ではないですね。
私の住んでいるところもまだまだ遅れています。(猫を家の中に閉じ込めるのはかわいそうだ、猫は野良で生きていける、など) 猫に対する人の考え方を変えるのが一番難しいと実感しています。

by さりゅ 2017-01-11 02:57

>山猫さん

今年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、今年はどんな猫さんと出会えるか、わくわくしています~

by 道ばた猫 2017-01-11 05:33

>ぺったんのお母さま

雪の上に残った足跡・・・・それは、どんな境遇の猫なのか。吹雪の後は、それは胸が痛みますよね。
せめて、冬はお日様がたっぷりと顔を出してくれますよう。

by 道ばた猫 2017-01-11 05:37

>ふみちゃんさん

人はなかなか変えられないから、地道にこちら側の仲間を増やしていくことしかないのでしょうね。
遠回りだけど。それぞれができることを。ことしもよろしく~

by 道ばた猫 2017-01-11 05:43

>さりゅさん

千代田ニャンとなる会の方は、「そんなに日本全国、違う人間性のが住んでいるとは思えない」とおっしゃっていました。土地柄というか、動物観を少しずつ変えていくことが必要なのでしょうね。

by 道ばた猫 2017-01-11 05:47

佐竹さん、今年もどうぞよろしくお願いいたします。佐竹さんのブログ、いつも楽しみにしています。佐竹さんの発信が可哀想な境遇の猫0の道へと導いてくれていると思います。千代田ニャンとなる会のみなさんの活動も素晴らしいですね。本当にありがとうございます、と思います。
私もできることをするようにしています。猫が飼えない団地暮らしなので最寄り駅にある保護猫カフェ(一階がトリミングサロン、二階に保護された(保護団体から来た子等々)猫を譲渡目的に活動されています、トリミングサロンの女性オーナーが一年ほど前に保護猫のため保護猫カフェを始め、トリミングサロンの利益で活動されているということで女性オーナーとスタッフが5人くらいで頑張っておられます。年末年始も全てオープンしていました)物資を持っていったり募金したり保護猫たちとおもちゃで遊んだりしています。少しでも保護猫たちと頑張っているスタッフさんのためになれば……です。
佐竹さん、これからも色々な猫ちゃんやその周りの方々のお話をよろしくお願いいたします。

by とも 2017-01-11 07:18

明けましておめでとうございます。
今年も佐竹さんの記事を毎週楽しみにしております。
殺処分ゼロ、素晴らしいですね。
それが当たり前の世の中になるといいな、、と思います。

by クーママ 2017-01-11 07:38

今年もブログ甲信楽しみにしています。
千代田区取り組みとフットワークの軽さは気持ちいいですね。みんな頑張っていてこその成果ですね。

外国のとある国では、猫は神様、という扱いで家なき猫でも地域の方々が世話をし、のびのび暮らしている世の中もあるようです。
日本の猫たちも、できれば地域でかわいがられ自由にいきられるスタイルも選択肢の中にあるようになればいいのにな・・・と思いました。
全ての猫が犬のように管理化され外で猫を見かけなくなる日がいつか来るのででしょうか・・・・
それはそれでなんだかさみしい気もしますが。

by あずにゃん 2017-01-11 13:16

人間てやつは、どいつもこいつも手前勝手なモンですね。 そこをなんとか巧く利用できぬものか。 ニャー達が一匹でも幸せになりますように。

by 373 2017-01-11 19:28

>ともさん

ともさんのように、保護猫カフェへの支援など、どんな形でもできることを続けるのがが、なにより大切と思います。
本年もどうぞよろしく~

by 道ばた猫 2017-01-13 10:11

>クーママさん

ほんとに、振り返ってみて「猫たちがあんなあつかいをうけていた時代があったんだ」と思える時が来ますように! そうしなければ。 

by 道ばた猫 2017-01-13 10:17

>あずにゃんさん

都会では、もう外猫は無理なのでしょうが、猫の特質は自由気ままなこと。そして、猫たちが子育てなどで見せる情愛の深さを、現代っ子たちが知ることがなるのはとてももったいないと思ってます。うまく猫の自由を守られる地域が残ってほしいな。

by 道ばた猫 2017-01-13 10:23

>373さん

ほんとうに。捨てたりいじめたり、しょうもないニンゲンのやることの後始末をしているのも、ニンゲン。この連鎖を止めなくてはね。

by 道ばた猫 2017-01-13 10:26