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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

ネコノミストの研究室

2017年09月13日

神野さんに聞く!アメリカメリーランド州での動物支援活動(後編)

猫部のみにゃさま、こんにちは。ネコノミストの武井です。

前半に引き続き、アメリカメリーランド州ボルティモアで、動物の保護活動に10年以上携わっている神野あきらさんのインタビューをお送りします。

神野:ボルティモアは、貧困地域も多く、動物の虐待も多いです。貧困地域になると増加する犯罪率と動物の虐待は切っても切れない関係だと思います。貧困地域では、住民の教育レベルも十分ではないことが多く、猫の不妊・去勢手術の話をしても、全く理解できない場合もあります。そういった場合には、まず、ドーナッツとソーダを用意して、住民に集まってもらって、野良猫を増やさないために、不妊・去勢手術が必要なことを説明していくことから始めます。そうすると、「無料なら手術をやってもいい」という人達が現れ、そのうち、地域猫に対してTNRをすることも理解してくれる人が現れ、と徐々に住民と分かり合っていく、という状況です。猫が虐待されたり殺されたりする街には誰も住みたいとは思いませんし、そういう街にしないためにも、不幸な野良猫を減らしていこうよ、と働きかけたりします。

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無料のドーナッツとソーダで住民にTNR活動を説明(写真:神野さんご提供)

武井:神野さんのお話を伺っていると、保護猫・犬活動が、ソーシャルワーカー的なものに聞こえます。

神野:そういう側面は大きいと思います。例えば、TNR活動で印象深い事例として、ある地域に、30年間野良猫に、餌やりをしているおじいさんがいらっしゃいました。今から11年前、その野良猫たちが300匹まで増え、手がつけられなくなった時に、おじいさんから相談がありました。そのため、昼夜を問わず足を運び、野良猫を捕獲しては不妊手術をし、元の場所に戻すTNRの支援を始めました。現在は、餌やりもおじいさんから引き継ぎ、週4回その地域に訪問していますが、野良猫が80匹程度まで減りました。
ただ、注意することはいろいろありまして・・・例えば、特に私はアジア人女性ということで、地域での活動をしていてもどうしても目立ってしまいます。あまりに危険な地域やセンシティブな地域に関しては、地元のアメリカ人の判断に従い、私が前に立たずに、後方支援をすることもあります。
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神野さんがTNR活動を行う貧困地域の一例(写真:神野さんご提供)

武井:人間の暮らしだけで精一杯、というような地域においては、動物に目を向けることも難しいケースもあるでしょうね。動物愛護活動は、行動力、すばやい決断力(そして体力)が必要とされると思いますが、それと同じくらい、細かな配慮、想像力、思いやりなどが必要なんですね。強い精神力もですがね・・・。
少し話は変わりますが、神野さんの活動が変化するひとつのきっかけが東日本大震災だったということですが、どんな活動をなさっていたのですか?

神野:東日本大震災時には、災害時に遭ったペットをどうするのか、どこに非難すればいいのか、迷子のペットをどうやって探せばいいのか、という現場の声と、何とか支援したいという団体側の声をマッチさせる機能がないのではないか、とアメリカにいながら気になっていました。そして必要とされるものが「ないなら作ろう」と思い立ち「被災地動物情報ブログ」 を立ち上げました。このブログでは、いろいろな情報を発信しました。例えば、動物迷子の掲示板を集約したり、SOSの掲示板を載せたり、医療情報、ボランティアの人材募集、物資の募集など、ありとあらゆる、災害時のペットとその飼い主に役立つ情報を集約する作業をしました。
この活動をする中で、日本の動物愛護活動をしている人達とも知り合うことができましたし、日本の動物愛護活動がどのようなものなのかを知ることができました。また、この活動をしている間に、神奈川県の方ともご縁を頂き、「メリーランド神奈川姉妹州委員会・動物福祉コミッティ」の委員長も務めることになりました。
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神野さんの発信してきた被災地動物情報ブログ(https://ameblo.jp/japandisasteranimals)

武井: この被災地動物情報ブログ以外でも、保護活動を積極的に発信されていますよね?(Happy Go Lucky Animal Rescue in America )

神野:もともとSunshine Smileを立ち上げた理由が、動物の保護活動をすればするほど、子供の頃から動物について触れたり、考えたりする機会があることが重要だと痛感するようになったからなのです。
私が研修を受けた、全米人道協会(Humane Society of the United States: HSUS)の教材にも、塗り絵を使って子どもたちにペットに不妊・去勢手術をすることの重要性を伝えるものがあり、それらを持ってHSUSのスタッフが、地元の小学校に出前講義などをしています。私がボランティア活動をしていた、メリーランド州動物虐待防止協会(MDSPCA)でも、同じような小学校訪問授業などをしていました。
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不妊・去勢手術をしないと、猫算的に猫が増えると伝えたHSUSのぬり絵(撮影:武井)

神野:アメリカでは、そういった動物愛護活動がとても盛んに思います。地域の動物愛護団体は、地域の動物愛護イベントの受付を地元の小学生に担当させたり、子供にプラスチックの募金箱を作らせて、街中で寄付を呼びかけるキャンペーンをさせるとか、その他、子供がレモネードを作って50セントで販売して、その売上金をシェルターに寄付するとか、そういったボランティア活動が当たり前に普及しています。
また、アメリカでは様々な愛護団体のアニマルレスキューのテレビ番組が放映され、非常に人気が高いです。その他にも、動物に関するコミュニティレベルでのフリーペーパーの発行も多いですし、カフェには、不要になったペットフードや用品などを寄付するボックスが置いてあります。そういった、動物愛護の活動が日常的に取り組まれているなあ、と感じます。

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ボルティモアの街中のカフェの片隅に置かれたペット用品・フード寄付ボックス(撮影:武井)


武井:神野さんは、日本の動物愛護活動家とも交流があるということですが、その方たちとお話をしてみて、アメリカと日本の動物保護活動、どういったところが大きく違うな、と感じますか?

神野:日本だと「不幸な野良猫を少なくしたい」という同じ目的で活動している団体同士の仲が余りよくないというような話をよく聞きます。ですが、アメリカではあまりそういった話は聞かないですね。アメリカでは、支援が必要なときに、支援者がばばばっと集まり、目的を達成すると、さっと解散、というような雰囲気があります。例えば、これは犬の事例なのですが、アメリカでは多くの州で、危険犬種としていくつかの犬種を指定しています。最近人気のピットブル(アメリカン・ピット・ブル・テリア)に関しては、多くの州で危険犬種とされ、野良のピットブルがシェルターに搬送された段階で殺処分になります。私が住んでいるメリーランド州でもピットブルが危険犬種であることは変わりませんが、保護された犬は、譲渡して飼育することが認められている数少ない州なのです。つまり、他の州で遺棄されたピットブルも、メリーランドのシェルターに運ばれさえすれば、殺されずに新しい飼い主を探してもらえるというわけです。アメリカではレスキュー団体は、犬種ごとに別れています。そのため、ピットブル専門のレスキュー団体が、例えばアラスカ州で野良のピットブルを保護したとすると、愛護団体の人々がバケツリレーのように、彼らが届けられるところまで東へ東へとその犬を運び、最後メリーランド州に届けられ、シェルターで譲渡を待つ、ということが普通に行われます。普段から連携しているというのもありますが、Facebookで呼びかけて、ぱっとボランティアや活動家の手が挙がり、用が済めばまたみな独自の活動をする、という感じです。

武井:面白いですね・・・。ワンコのバケツリレー(笑)。さすがに危険猫種はないでしょうから、レスキューは猫種別というのはないんですよね。

武井:ちなみに、アメリカには本当に沢山の動物愛護のNPOが活動していますが、神野さんが好事例と思う団体はどこですか?

神野:個人的に以下の4つの団体・シェルターに行ってみたいと思っています。
Human Society (カリフォルニア州シリコンバレー):動物シェルターや建物に風水などを取り入れた新しい施設。
② NY州ASPCA(NY州) :ノーキルシェルターを運営。アニマルプラネットに自身の番組を持つほど有名。
Best Friends (ユタ州):ASPCAと同様に有名な動物愛護団体。こちらのシェルターもテレビ番組を持っている他、他州でもシェルター(ボルチモア含む)活動をおこなっています。ユタ州のシェルターは広大な敷地に立地し、世界中から滞在型ボランティアを受け入れており、ボランティアのための宿泊施設などもあるそうです。ちなみに、Best Friends はアメリカ最大のノーキルシェルターでもあり、凶暴な野良犬なども殺さずに生かして飼育しているそうです。犬猫以外の保護活動も盛んにしています。
Farm Sanctuary (NY州、カリフォルニア州):畜産動物のシェルター。

武井:3つ目のBest Friends、私も滞在してみたいです。

武井:いろいろとお話を聞いてまいりましたが、最後に神野さんが動物保護活動を行うにあたって、心がけていることを教えてください。

神野:特別心がけていることはないのですが、せっかくアニマルレスキューを通じて利他愛を学んでいるので、動物を虐待する人や意見が異なる相手であっても、共感と理解と尊重は忘れてはいけないと思いますし、悪口を言ったり、対立したり、批判し合ったりはしたくないという思いはあります。そういった無償の愛のお手本は、シェルターに保護されたたくさんの犬猫たちから学ばせてもらっていると思っています。

武井:ありがとうございました。御参考情報ですが、弊社三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、2017年11月に、神野さんをお呼びして、動物愛護の勉強会・セミナーを開催しようと考えています。また猫部でもお知らせいたしますので、お近くにお住まいの方(弊社オフィスは東京メトロ日比谷線神谷町駅)是非ご参加下さい。

ネコノミストの研究室ブログライター紹介

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北 洋祐

京都大学経済学部卒業。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの研究員として、中小企業政策、スタートアップ企業政策の研究に従事。一匹の野良猫を保護して飼い始めたことをきっかけに猫派となり、それ以来ライフワークとして動物愛護分野の研究にも勤しむ。2016年からは、人と猫の望ましい関係について考え発信する「ネコノミスト」として活動。現在は元野良猫のシンスケと保護団体から譲り受けたゴマの2匹とともに暮らす。好きな猫マンガは伊藤潤二『よん&むー』

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武井 泉

市立高崎経済大、東京大学大学院卒業。独立行政法人の研究所等を経て2007年より三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社。アジア・アフリカの国際協力事業(農村開発、社会保障等)や、ハラール市場についての業績多数。2015年より、ネコの幸せと人との共生を考える「ネコノミスト」としても活動を開始。現在、5歳の2匹の元保護猫と暮らす。これまで一緒に暮らした猫は40匹以上にのぼる。趣味は、園芸と、海外出張の合間のネコ撮影、ネコグッズの収集。

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みにゃさまのコメント

かわいい猫ですね。

by 猫好き 2017-09-13 18:00

神野さんの勉強会とセミナーをぜひ関西でも開催いただきたいです。フェリシモさんがある神戸ではいかがでしょうか。よろしくおねがいします。

by 馬の耳に猫 2017-09-13 21:57