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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

ネコノミストの研究室

2017年05月31日

ペットの家族化と企業の福利厚生

みにゃさま、こんにちは。ネコノミストの武井です。しばらくご無沙汰しておりました。ネコノミスト2名は、年明けから年度末は、本業が「猫の手も借りたい」時期にあたりまして、その間、猫部部長のお許しを頂いて、研究室へのお休みをいただいておりました。
今年度も、猫をめぐる社会的な課題、面白いトピックをまとめていきたいと思いますのでよろしくお願いいたしにゃす。

さて、「猫の手も借りたい」多忙期は、毎晩帰宅が深夜に及び、疲れた体を引きずって自宅に戻るのですが、我が家のこたろうやももにご飯やおやつをあげたり、なでたり話しかけたりすることで、心と頭が落ち着いてきて、だんだんと元気が出てくるのでした。まさに、こたろうとももは、繁忙期の「猫の手」となっているように思います。

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これまでも「猫がオフィスにいてくれたらなあ」と何度も思ったことがありました。海外では、ペット同伴出勤が可能と聞いたことがありましたが、実際に民間企業でペットとのふれあいや、ペットに関する福利厚生に関して、海外と日本でどのような取組みがなされているのか、調べてみました。


■海外における従業員へのペットに関する福利厚生制度

英国のペット保険大手のPetplanが2012年にペットを飼育している人を対象に行った調査によると、新しいペットを飼育する際に、飼い主がそのケアに必要な日数は、犬の場合は6日程度、猫は3日程度必要と回答していることが明らかとなりました。同社はこのペットのための休暇を、育児休暇を意味するpaternity leaveを模して「pup-ternity leave」(子犬休暇)と表現しました。しかし、2012年当時は、ペットの飼育のために休暇を取得すると回答した人は調査対象者の5%にも満たなかったとしています(注1)。

その後、同社が同様の調査を2017年に実施したところ、新しいペットの飼育のために休暇を取得する人は、調査対象者の5%に上ることが明らかとなりました。そしてペットのために休暇を取得することを「paw-ternity leave(pawは、肉球と爪、総じて「4本足動物の手足」を意味)」と呼びました。

paw-ternity leave(ペット休暇)が広まった背景として、子犬や子猫が新しい環境に慣れるためには最初の数日が非常に重要であることや、新しいペットを家族として迎え入れるために、飼い主が休暇を取得することの重要性が高まっていることが指摘されています(注2)。

例えば、英国スコットランドの醸造会社であるBrewDogでは、「世界で一番良い職場」を目指すため、従業員は1週間のペット休暇が取得可能で、本社オフィスには50匹の「オフィスドッグ」が在籍しています(注2)。英国IT企業のBitSol Solutionsでは、新しいペットを家族に迎え入れる際には、1週間の休暇制度が設けられています(注3)。また、ペットフード大手のMars Petcareでも、新規ペット飼育の際の休暇やペット同伴出勤が認められています。Mars本社においても、社内にペットボランティアのプログラムが存在し、社員が出張中にペットのケアをし合う仕組みがあるそうです(注4)。

その他、IT大手のGoogleでは、犬に優しい(dog-friendly)ことで有名であり、犬との同伴出社や、犬好きの従業員のコミュニティDooglersを立ち上げるなどの取り組みがなされています。バイオ企業ベンチャーの大手である米国のGenentechにおいても、ペット飼育の費用やペット保険の費用が支給されたり、gDogsという愛犬家の社内クラブで情報共有がなされているそうです(注5)。ペット保険の費用の負担や、ペットの忌引き休暇は、米国ホテルチェーンのKimpton(注6)、クラウド・IT企業の大手、Salesforceにおいても導入されています(注7)。


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■日本における従業員へのペットに関する福利厚生制度

日本においては、ペットを飼育できるオフィスビルがまだ数少なく、ペット同伴可能な企業の数は限られているようですが、ペットフードやペット関連企業において、ペット休暇やペットの忌引き休暇など、休暇に関する取り組みが徐々に導入されているようです。ペット同伴出勤に関しては、猫ではなく、犬が中心の企業が多いようです。

■企業名
企業概要
◆ペット関連の制度
○制度導入の経緯・結果

■日本ヒルズ・コルゲート株式会社 
小動物臨床栄養学をもとに開発されたドッグフードやキャットフードを販売
◆ペット忌引き休暇(2005年~)
社員が飼っているペットが亡くなった場合に、社員に忌引き休暇を1日与える制度
◆ペット扶養手当フード支給
社員の飼育している犬と猫を対象に、「扶養ペット登録」を設け、扶養手当とペットフードを支給
○人材育成に力を入れ、社内環境を重視している同社では、2000年以降の離職率が非常に低くなっている(注8)

■ユニ・チャーム株式会社
ペットの衛生用品やフード等を販売
◆ペット忌引き休暇(2017年~)
社員が飼育している犬や猫が死亡した場合、1日の特別休暇が取得できる制度
○「共生社会」の実現に向けた取組みの一環で導入されたもので、ペットは家族であると考える社員に配慮(注9)

■有限会社UGペット
ペットフードや用品を主にオンラインで販売
◆ペット同伴出勤、託犬スペース
愛犬を同伴して出勤し託犬スペースで愛犬の様子を見ながら仕事に従事することができる制度
○同社のミッションである「人とペットが幸せに暮らすことが出来る社会の実現」のために導入(注10)

■アマゾン株式会社
ペットフードや用品を含む幅広い商品をオンラインで販売
◆パーソナル休暇(ペット関連の休暇を許可)
「年次有給休暇」に加え、自己または家族(ペットを含む)の看護など、その他自己または家族のために取得できる有給制度(注11)

■アイペット損害保険株式会社
ペット医療保険商品の販売
◆ペット忌引き休暇(2016年~)
同居しているペットが亡くなった際、1頭につき3日間の休暇を取得可能
◆ペット休暇
ペットと同居している従業員が、年間で2日間、ペットと過ごす休暇を取得可能
○同社の従業員のペット飼育率が高いこと、また「働きがいのある環境を整えることは、ペット保険を取り扱う会社として率先して取り組むべきことだとの考え」から制度導入に至る(注12)

■株式会社シロップ
保護犬・保護猫と飼い主をつなぐインターネット関連会社
◆ペット同伴出勤
◆ペット休暇
ペット急病時・死亡時の年3回までの半休制度やリモートワークの許可
◆ペット忌引き休暇
ペットが亡くなった場合、2日間の忌引休暇を付与(注13)
◆提携している動物病院・ドッグサロンを割引料金で利用可能
◆社内開催のペットイベントの無料参加

■ファーレイ株式会社
システム開発等を手掛けるIT企業
◆猫手当ての支給
保護猫を飼育している社員には月5,000円の手当支給
◆ペット同伴出勤
○社内に猫が常駐(注14)

■株式会社エウレカ
恋愛・婚活マッチングサービス企業
◆ペット同伴出勤
◆ペット休暇
年3回までのペット病院通院への半休
◆ペット忌引き休暇
2日間のペットの忌引き休暇
CDO(Chief Dog Officer)という役職の犬も常駐
○あらゆるバックグラウンドを持ったメンバーも気持ちよく働ける環境づくりを目指すため(注15)


現在の日本では、15歳以下の子供の数が約1,500万人に対して、日本で飼育されているペットの数は約2,000万頭(犬猫)と、子供よりもペットの数の方が多くなっています。子供を持たない世帯や単身世帯も増えている中、「ペットの家族化」の傾向が高まり、人間の育児休暇や介護休暇と同等の休暇を、家族であるペットに求める傾向も不思議ではないように思います。

英国のペット関連科学情報ウェブサイトであるPsychologytodayによれば、ペットの飼育者は非飼育者に比べ、自尊心、適合性、社会性、幸福度が高い傾向にあり、血圧とコレステロールが低い傾向にあるとの調査が示されていますので(注16)、「健康経営」が話題となっている日本の企業においても、ペットの飼育者が子供を有する従業員と同様に、休暇が取得しやすい環境になることが望まれます。


(注1)Petplanウェブサイト
(注2)BrewDogsウェブサイト
(注3)BitSolウェブサイト
(注4)Marsウェブサイト
(注5)Genentechウェブサイト
(注6)Kimptonウェブサイト
(注7)Salesforceウェブサイト
(注8)厚生労働省『従業員と企業を活性化する休暇制度』
(注9)ユニ・チャーム株式会社ウェブサイトニュースリリース
(注10)UGペットウェブサイト
(注11)アマゾンウェブサイト
(注12)アイペット損害保険株式会社ウェブサイトプレスリリース
(注13)ペトことウェブサイト
(注14)ファーレイウェブサイト
(注15)エウレカウェブサイト
(注16)Psychologytoday.com
※リンク先はいずれも2017年5月31日アクセス時点


ネコノミストの研究室ブログライター紹介

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北 洋祐

京都大学経済学部卒業。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの研究員として、中小企業政策、スタートアップ企業政策の研究に従事。一匹の野良猫を保護して飼い始めたことをきっかけに猫派となり、それ以来ライフワークとして動物愛護分野の研究にも勤しむ。2016年からは、人と猫の望ましい関係について考え発信する「ネコノミスト」として活動。現在は元野良猫のシンスケと保護団体から譲り受けたゴマの2匹とともに暮らす。好きな猫マンガは伊藤潤二『よん&むー』

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武井 泉

市立高崎経済大、東京大学大学院卒業。独立行政法人の研究所等を経て2007年より三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社。アジア・アフリカの国際協力事業(農村開発、社会保障等)や、ハラール市場についての業績多数。2015年より、ネコの幸せと人との共生を考える「ネコノミスト」としても活動を開始。現在、5歳の2匹の元保護猫と暮らす。これまで一緒に暮らした猫は40匹以上にのぼる。趣味は、園芸と、海外出張の合間のネコ撮影、ネコグッズの収集。

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みにゃさまのコメント

 動物愛護や共生という点ではやはり海外の方がいい取り組みをしていますね。グーグルなどの大企業でそういう取り組みをしているのはいいお手本になりますね。うらやましいかぎりです。
 私の所でも野良猫を保護し(きれいにして)アニマルテラピーとして老人ホームで飼おうという話をしたものの、清潔志向、猫が嫌いな人がいるから、アレルギーがあるから、仕事してるのに猫の世話までしたくない等々様々な反対意見が列挙されたという悲しい?過去があります。
 現在子供より飼育される動物の方が多いとのこと。しかし様々な理由で、家族であったはずの動物たちを簡単に捨てたり保健所に持ち込んだりそんな問題も増えてきたと聞きます。
もっと子供のころから動物愛や慈しむ心をはぐくむ教育がしっかりされる世の中になれば未来も少し明るいのかも・・・と感じます。

by あずにゃん 2017-06-03 12:51